LEAFー愛は信頼の先にー

LEAFの導入

LEAF法が正式に施行された初年度。各自治体では周知活動が始まり、法務省の委託で作られたポータルサイト「LEAF Portal」では、制度の利用手順・FAQ・事例集などが整備された。
制度利用は任意でありながらも、想定以上の反響があった。特に大学生や若い社会人層において、「関係の開始時に合意を記録する」という選択肢が、安心材料として受け入れられたのだ。
ある大学では、LEAFの利用をきっかけにパートナーとの信頼を再確認するきっかけになったという学生の声が紹介された。
「初めは少し戸惑いました。でも、一緒に内容を話し合って、署名したら、逆にお互いをちゃんと尊重しようって意識が高まりました」
一方で、現場では制度の限界や課題も見え始めていた。
・合意書の文面が不十分なケース（曖昧な表現） ・“LEAF使ったんだから大丈夫”という誤解によるトラブル ・逆に“LEAFを使わなかった”ことへの圧力的な空気
特に問題視されたのは、「LEAF未使用＝軽視している」という社会的ラベリングの兆候だった。
そのため厚労省は、制度運用ガイドラインに「LEAFの利用有無により、個人の意思や関係性の尊重度を一律に評価すべきではない」という一文を追加した。
学校現場では、LEAFをテーマにした討論授業が広がった。ある高校の授業では、生徒たちが二つの立場に分かれて議論を交わした。
「記録することが信頼になる」 「信頼があるなら、記録はいらない」
意見は真っ二つだったが、どちらも“他者の選択”に対する敬意を語っていた。
制度の導入が「恋愛の型」を一つに決めることではなく、“尊重する自由”を社会が支えることだと、徐々に理解が広まり始めたのだった。

地上波各局ではLEAFの公共性を啓発するTVCMが流れ、人気俳優やアーティストたちが出演した。
黒江蓮はCM内で端末を手に取りながら、カメラに向かって語る。
「その手を取るとき、ただの“好き”じゃ足りない。 言葉にする勇気が、未来を守る」
一条未紗は、隣で頷きながら合意記録端末を操作し、 「“わたしも同じ気持ち”って、ちゃんと残すの。だから、安心して愛せるの」
ナレーションは語る。
「LEAF——それは、信頼を記録する新しい常識です」
CMのラストでは、出演者全員がカメラ目線で「確認から始まる、やさしい未来へ」と声を揃える。
SNSでは「#LEAFCMで泣いた」「確認ってカッコいい」がトレンド入りし、若年層を中心に共感の声が広がった。
江口と綾音による先進的な手続きは、その後テレビや新聞、SNSなど各種メディアで大々的に取り上げられた。 特に、同意の透明化、弁護士と家族の立会い、診断書の提出といった一連の流れが「かつてない誠意」として称賛を集めた。
ワイドショーでは「新しい恋愛のかたち」として特集が組まれ、 週刊誌は『すべてが記録された夜』『証拠主義ラブロマンス』といった見出しで大きく報道。
その影響を受けて、人気俳優の黒江蓮とモデルの一条未紗がLEAF婚を発表。
黒江と未紗が結婚を準備していた当時、ちょうどLEAFアプリの正式リリースが告知され、運用が開始されたばかりだった。 これにより、二人は交際中から結婚準備に至るすべての場面で、LEAFアプリを活用して合意確認を行う先進的なカップルとして注目を集めた。 事前に医師の診断書を交わし、両家で同意文書を締結したうえでの婚姻届提出と記者会見を行い、 若者世代への啓発となった。
「好きなだけじゃ、守れない。だから、言葉にした」 と黒江は語り、SNS上では“#LEAF婚したい”がトレンド1位を記録。
LEAF制度はこうして、法制度から文化、そして芸能界と大衆心理へと波及し、 人々の恋愛観を静かに、だが確実に変えていった。
江口と綾音による一連の合意記録と誠意の手続きがマスコミに取り上げられたのを契機に、LEAF制度は国会で本格的に審議されるようになり、令和13年に「LEAF法案」が成立した。
この法案には、LEAFアプリの開発および標準化運用が盛り込まれたほか、 LEAFアプリにはチャット機能も搭載され、緊急通報機能も新たに追加された。 この緊急通報ボタンは、合意のやりとり中やその最中に異常や不安を感じた際、 即時に警察・信頼登録先（家族・弁護士）・LEAF安全センターへ通報が届く仕組みで、 GPS・録音・画面ログが即座に自動記録・共有される設計となっている。 この追加機能は、ユーザーの安全を守る最後の盾として機能し、「記録と通報のダブル保障」が整った形となった。
また、合意に至るまでのやりとりを記録とともに残すことができるようになった。 このチャットは端末間の安全な暗号通信で運用され、LEAF合意文書の作成前に、ユーザーが相手と気持ちや条件を丁寧に確認し合える空間として活用されている。 また、やりとりは必要に応じて合意記録に添付でき、誤解や誘導のない経緯の可視化にも役立っている。 すべての国民が人生で初めてLEAFを使用する際には、国家資格である「LEAF立ち会い士」の同席を義務とする条項も追加された。 LEAF立ち会い士は、厚生労働省管轄の専門研修を修了し、心理・法務・倫理に関する知識を有する者として登録される。 初回のLEAF記録では、立ち会い士が事前説明と意思確認を行い、双方が理解した上で記録操作を行う体制が整えられた。 その存在は、特に若年層や制度導入初期において大きな安心感を与えるものとなった。
すべての恋愛的・身体的合意取得に先立ち、以下の措置が法的に義務づけられるようになった：
• 血中アルコール濃度の検査（呼気検査）
• 違法薬物の影響確認のための尿検査
• うそ発見アプリによる感情の安定確認
これにより、LEAFは「合意」のみならず「状態の健全性」までを包括する制度となり、
さらに令和14年の法改正により、LEAFアプリをインストールしていない個人は、以下の施設への入店・入場が制限されるようになった：
• 酒類の提供を伴う飲食店（例：バー、居酒屋、キャバクラ等）
• 個室のあるカラオケやインターネットカフェ
• ホテル、旅館などの宿泊施設（ラブホテル含む）
各施設にはLEAFアプリ認証端末が設置されており、チェックインや入室前にアプリ認証を行うことが義務づけられた。 この制度は、「予期せぬ接触」や「同意なき同行」の未然防止を目的とし、公共の場における信頼の確保に大きく寄与した。
さらに、令和15年の出入国管理法改正により、日本への入国を希望するすべての外国籍旅行者・滞在者に対して、LEAFアプリのインストールと初回アカウント登録が義務づけられた。 空港・港湾の入国ゲートでは、パスポート提示に加えてLEAFアプリの認証画面提示が必要となり、未導入者は専用ブースでサポートを受ける仕組みが整備された。
この制度は、異文化間における恋愛的・接触的誤解を防ぎ、訪日者にも同意文化を共有してもらう「尊重のゲート」として機能している。
さらに厚生労働省は、LEAFアプリの活用促進を目的として、LEAF認証画面を薬局で提示すれば、緊急避妊薬（アフターピル）の処方に対する費用が国から全額補助される制度を導入した。 この制度は、予期せぬ状況下であっても迅速かつ誠実な対応を支えるための一環と位置づけられ、LEAF利用者の安全と安心を多方面から支援している。 より安心かつ誠実な人間関係の前提として社会に深く根づいていった。