ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん

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斥候せっこうを放つ。」
 
モンソニー王子の思惑を探るため、リヨさんが騎士団から2名、彼らの後を追わせる。
 
そして私たちはあえて鉢合わせないよう、モンソニー王子一行とは違う道から行くことにした。

(ま、まさか。モンソニー王子がハーレムパーティー?を組んでたなんて……。) 

そもそも“パーティー”ってなに?

騎士団の皆は口々に『ハーレムパーティー』だと言っているのを聞いて、チームみたいなものだと悟る。『ハーレム』だから『パーティー』というわけでもないらしい。

  
この国で女性の騎士や魔道士というのは非常に珍しく、ハーレムパーティーが組めるのは、よほどの好条件を提示できる王族だから成し得る技なのだそう。

第1部隊の不穏な空気に呑まれながらも、スキュラさんが騎士団宿舎で働く女性ダンピールについて教えてくれた。

「食堂を統括しているのは、騎士団を引退した女性のダンピールで、御年90才になります。」

「90才?!」

「その他パートで手伝いに来ている方もいますが、40代から60代の方が多いですね。掃除係もそんな感じです。」

「じゃあ、騎士団に入隊している女性は?」  

「第4部隊が女性の隊長ですよ。だから女性隊員は第4部隊にしかおりません。といっても合わせて4名しかおりませんが。」

しかもその4名の女性は、男性ダンピールよりも身体が大きかったり、強い女性ばかりだそう。

モンソニー王子が率いていたような、防具らしからぬ、ビキニアーマーが似合う女性はいないのだそう。 

「そもそも人間は働いてないんですね。」

「人間の男性は数名おりますよ? 皆武器や武具作りの鍛冶師ばかりですが。ですが人間の女性はいませんね。働いたとしても半日と持たないと思います。」

「たった半日ですか……。」

「全身の血を飲み干された例もありますからね。なんせ戦闘後は気が昂ぶっているため、理性が利かなくなるんですよ。」

柔和に笑うスキュラさんを見て、「ははは、」と乾いた笑いで返す。

そういえば、監視小屋でダンさんが言っていたことを思い出す。

『スキュラは吸血種の幻獣だ。ひとたび血を飲めばその味を覚え、執着し、終いにはその血を飲み干してしまう。』と。

スキュラさんもダンピール同様、吸血種だということを忘れてはいけない。

でもスキュラさんはとても紳士的で、いつも私のことを最優先に気にかけてくれている。

「あ、あのスキュラさん。」

「なんです?」

こっそり耳打ちしようと背伸びをする。すると背の高いスキュラさんが屈んでくれた。ピンと立った耳がなんとも愛らしい。

「その、もし私の血が飲みたくなったらいつでも言ってくださいね。私、スキュラさんになら飲み干されても構いませんし。」

「ヌ?!」

スキュラさんの白目が一瞬黒目になる。羽も広げかけたところで、瞬時に閉じた。
 
「お? おやおや困りましね。なんと愛らしい告白でしょう。ですが願わくば、普段のお姿のハル様から囁かれたかったですね。」

「こ、告白だなんて、そんなっ」

「ですがハル様、どうか今の言葉は二度と吸血種に言わないと誓って下さい。あなたの血は冗談抜きで飲み干してしまいたいと思うほど魅惑的なのですから。」      
 
急に真顔になったスキュラさんが、重い声を鼓膜に響かせる。

ゾクリとした眼光に、自分の思考の奥深くを覗かれている気がして、足が自然と後退する。

でも後ろからリヨさんに背中を強く叩かれて、前に転びそうになった。

「り、リヨさん?!」

「そろそろスモークゲイルの住処だよ? 幻獣にうつつ抜かしてると一瞬で殺られちゃうにょ~ン?」

「別に、そんなつもりじゃ、」

「ハルりーぬぅ、一つ忠告!」

リヨさんに肩を組まれて、おもむろに頬を寄せられる。

距離感に少しだけドキッとするも、神妙そうに囁かれた。  

「人間に忌み嫌われてきた幻獣に、突然『血を飲み干されてもいい』なんて言ったらヤバいくらい付き纏われるからお口チャック!」

「え? でもスキュラさんはいつも私に優しいですし。」

「じゃあなんでスキュラはダンにあれだけ忠義を尽くしていると思う? ダンに助けられて、人生そのものをダンに捧げてんだゼ? ヤバくね?」

た、確かに。そうだ。スキュラさんは騎士団の隊員でもなく、恩義があってダンさん個人に仕えている。

でもきっとスキュラさんは、それまで相当酷い境遇にあったということなのではないだろうか。

私は幻獣ほど虐げられてはいないものの、この国でダンさんに救われて、ミレーヌさんに救われて新たな人生を歩んでいる。

スキュラさんが人生を捧げたくなる気持ちだって、わからなくもない。 

「私、ダンさんやスキュラさん、ミレーヌさんには返しきれない恩を感じていますけど、リヨさんにだって感謝しています。」   

「俺?」

「はい。私に魔物の殺し方を教えてくれました。この国で生き延びる術を教えてくれましたから。」

「ウソン。マジで?」
 
リヨさんが照れくさそうに自分のお尻をポリポリと掻いた。 

「私は役に立てるならなんだってしたいと、本気で思っています!」

真っ直ぐにそう伝えると、リヨさんがふっと笑った。 
     
「大丈夫、そのつもりだから。」

 

リヨさんが、腰の刀を抜いて、ヒューゴさんのいる先頭に行く。
 
そろそろ竜崖山の山頂に着く頃だ。     

 
  
山頂に着いたのは、それから程なくしてのことだった。

朝からここまで何時間登ってきただろう? 太陽は真上から少しずれている。さすがに脚が疲れた。

騎士団がこれから討伐することが信じられない。いつもこんなに体力を消耗する仕事をしているなんて。

でも今日彼らを支えるのは私の役目だ。私がしっかりしないと。

山頂から崖の下が谷底のようになっており、谷底がスモークゲイルの住処になっているらしい。 

覗こうとしても、岩場が多くてとても覗けそうにない。 
  
 
「ハル、スモークゲイルのスモークに巻き込まれれば視界が遮られる。離れた場所にいろ。」

「あっ、まっ!」 

ダンさんに再び小脇に抱えられて、大きな木の下まで運ばれる。             

まるで手慣れた運送業の配達員と、運ばれ慣れている荷物のような状態の私。

当たり前のように運ばれている途中、魔物のいななきのような声が辺りに響き渡る。

キュオォォォォォォォォォォォ

甲高く、神聖な鳴き声。

今までどの記憶を辿っても聞き覚えがない。余韻まで清らかで、思わず聞き惚れてしまいそうになる。

キュオォォォォォォォォォォォ
  キュォォォォォォォォォ

数頭が共鳴するように鳴き始める。  
 
耳のいいヒューゴさんとコウモリのスキュラさんは、高音に耐えきれないのか耳を塞いでいる。

「モンソニーと斥候が見当たんねえな。」

辺りを見渡すリヨさんがヒューゴさんと目配せすると、ヒューゴさんが首を横に振った。

どうやらスモークゲイルの鳴き声のせいで、他の足取りが聞き取れないようだ。
   

   
ダンさんがゆっくりと木の陰に私を下ろすと、すぐにその場から離れようとする。

でも私はダンさんの隊服の裾をつかんだ。

「……なんだ?」

「そ、その。リヨさんからスモークゲイルは気性の荒い魔物だって聞いています。1頭でもダンピール数人で相手しないと倒せないって。」

「特にこの時期は産卵期だからな。だったらなんだ?」

「それに、モンソニー王子のこともあります! もし攻撃なんてされたら、」

「攻撃? もしモンソニーが我々騎士団に攻撃しようもんなら、種別争いになりかねない。あやつもそこまで阿呆ではないだろう。」

ダンピール騎士団は、王族直下にあたるエリシア王国の立派な兵士だ。モンソニー王子だって分は弁えているだろう。

でももし本当に、ミレーヌさんを殺すことを目当てに来ているのだとしたら?

他の仲間を連れて来ているということは、王子は手を出さなくとも、彼女たちに攻撃させる可能性があるということだ。
 
「そうだとしても、私がここに来たのは、ダンさんたちの魔力増強と治癒が目的です。」       

「知っている。勿体ぶらずにさっさと言え!」

「だだだだだからダンさん! 私と、キスしていってください!」

「ブフゥッーーな、きっ貴様、なにを言って!」

吹き出したダンさんが、咄嗟に腕で顔を隠す。

正直、マグボトルで関節キスしても、きっと私の体液はそこまで摂取できないと思う。

それにダンさんとはすでにキスをしているのだ。今更関節キスだなんて、煩わしいことをする方が白々しい気もする。

「あのっ、本当に、心配なんです! ここまで来るだけでも大変な道のりだったのに!」

「わ、わかったから! 分かった分かったよし! 貴様とき、キスしよう……。」

ダンさんが深呼吸をして呼吸を整える。  

何度も「え? キスっていっても唾液まで舐め取らないと意味ないよな?」と自身に問いかけている。

ダンさんが瞑想して2分ほど経った。ようやく心の準備が整ったらしいダンさんに、手で顎を掴まれる。

ほぼ同じ目線でダンさんの顔が間近に迫って、私の顔は今にも沸騰寸前だった。

「くッ、なんで今日に限ってこの顔なんだ!」

ダンさんが顔を背けて叫ぶ。

その間にも私は、間に割って入ったリヨさんに両頰を掴まれて、思いっきりキスをされた。

半開きの唇で少し角度を変えて。ブチューっと吸い付かれる。舌を入れられて口内を舐め取られ、そしてパッと離された。

「なに男とのキス一つで躊躇ってんだよ? この純朴むっつり右手と左手が白濁の恋人マンめ。」
「なっっ、貴!!」

するとヒューゴさんに肩を叩かれて、後ろを向く。ヒューゴさんにもしれっとキスをされた。

ワタワタする私を余所に、舌で唇を舐められて、「やばい。リヨ隊長のすぐ後にしてしまった。」と若干青ざめた顔をしていた。

そしてリヨさんとヒューゴさんが、飛ぶように崖を下りていく。

取り残されたダンさんは、「糞!」と悪態を吐くと、私の胸ぐらを掴んで喰らいつくようなキスをした。

私の唾液を舐め取ろうと必死に舌を吸われたと思えば、あっという間に突き放すようにして離される。

「ふう。男の唇の一つや二つ、朝飯前だ!」
  
そう言って剣を抜き、崖を下りていった。

「なぜダン様といい、この騎士団の輩はスマートに振る舞えないのか。」

はあ~、と大きく息を吐くスキュラさんは、今回私の護衛役ということになっている。
 

崖の下からはすでにスモークのような霧が舞っている。

この視界が悪い中で一体どうやって戦うのだろう?

「ハル様、崖から離れて。」

崖の下から光が漏れ始める。

あちこちで光っているようで、スキュラさんに腕で前を遮られるようにして岩場から離された。

チュドーーンドォォォォォン
   
あちこちで爆発音が聞こえてくる。あまりの数の多さに、私は腰を抜かしてしまった。

「い、いきなり爆弾ですか?!」

「ええ、スモークを晴らすには爆発させるのが最善ですからね。」 

「例えば、風魔法とかないんですか?」

「風属性の者も何名かいますよ? ですがただ霧を晴らすだけではスモークゲイルに勘付かれてしまいます。それならいっそ最初から攻撃してしまおうという魂胆なのです。」   
  
そんな滅茶苦茶な、と思っている間にも、崖の下からは灰色の煙がモクモクと上がっている。

騎士団のイメージはもっと、練りに練られた戦略の上で、隊長号令の元、徐々に攻撃をするものだと思っていた。

先手必死、一撃必殺。きっとこれがダンピール騎士団らしい戦い方なのだろう。

 
「……まずいですね。まさかこの私が待ち伏せされていたことに気付けないとは。」

「え?」

突然スキュラさんが私を抱き上げて、横へと大きく飛び跳ねる。

すると木の陰から、ドロドロとした黒紫色の光る玉が飛んできた。

今私たちがいた場所に玉がべシャリと打ち付けられると、蒸発するように紫の煙が浮かび上がる。

抱っこされたまま、何事かと目を見張る。

「コウモリの幻獣だなあんて。まさか生きてる間に拝めるなんて思いもしなかったですわ。」

木の陰から出てきたのは、モンソニー王子と一緒にいた……!

ええと……あれ? なんだろう、この生き物? 爬虫類の一種??

「す、スキュラさん。わたし、大変爬虫類が苦手なんですがっ、あの方は一体なんの生き物なのでしょう?!」

「あれは恐らく、ウツボの幻獣にございます。」

「ウツボ?! ウツボってあの、うなぎみたいな?!」

そっか、ウツボだったら爬虫類じゃない?

今そこに立っているウツボ……、いえ女性の幻獣は、斑点模様にツルツル頭、口が草食動物のように前に出ていて、目がクリクリとしている。

でも下半身はスキュラさんと同じ、二足歩行で、服はなんとも可愛らしいガーリー系のチェックのワンピースを着ている。

それなのに顔ウツボ、頭ツルツルって……非常に可愛らしい格好なのに勿体ない気がしてならない。

「リヨ様が言っていたように彼女は恐らくテイマー、いえ、あれは闇テイマーですね。今のは毒蛇を使った攻撃。」

「毒蛇?!」

「あの光る玉、あれに殺した魔物や動物の魂を込めて攻撃するのですよ。」

「魂?!」
 
『闇テイマー』という言葉に馴染みがないせいか、すぐに理解ができない。つまり、死んだ魔物や動物の特性を、ウツボさんが利用するということだろうか?

「あの毒玉に当たれば身体の一部が壊死します。このまま空に逃げましょう!」

スキュラさんに抱っこされたまま、高速で空へと昇っていく。

でも私たちを追いかけるようにして毒玉が空に向かって飛んでくる。

スキュラさんは颯爽と避けたものの、避けた先を狙うかのように毒玉が次々と飛んでくる。

「ウツボだって空を飛べますのよ!」

無数の牙を見せるウツボさんが私たちに迫りくる。いつの間にか背中には、鳥のような羽が生えている。

「グリフォンの翼か!」

「そうよ! グリフォンの魂もいただいてますの!」 
   
黄土色の大きな羽を広げて、私たちに向かって突風を送り込む。

スキュラさんが盾になって私を抱きしめてくれた。  

「ウツボさんはなぜ私たちに攻撃を?!」
「さあ? 今回の討伐を失敗に終わらせうようとしているとか、でしょうか?」
「なんのために?!」
「わかりません。ですが今は逃げるのが賢明です。」

そうはいっても、私を抱いたままでは、スキュラさんが全速力を出せるわけがない。どう頑張ったって私が邪魔になっている。

「スキュラさん! 私を降ろしてください!」

「それは無理ですね。万が一あなたが彼女の手に渡れば、この先辺境地は益々不利になる一方ですから。」

「それはそうですけど!」

再び後ろから突風が迫り、スキュラさんが身を挺して私を守ってくれる。 
 
私を守るので精一杯なのか、攻撃を出している暇がないらしい。

「ハル様、少々気分が悪くなるやもしれません。吐きたくなったら好きなだけ下に向かって吐いていただいてけっこうですから!」
「ええっッ」
 
ウツボさんの攻撃を避けるように飛んでいたスキュラさんが、大きく旋回を始める。

月光の夜想撃ルミナスノクターン――――』」    
    
閃光を放つ大きな太い1本の矢を、なぜか私の前に放った。後ろから追いかけているのになぜだろう?

「気が動転しているとはいえ攻撃方向間違えすぎじゃありませんこと?!」

ウツボさんが、毒玉だけではなく別の茶色い玉を投げてくる。

数メートル隣で爆発して、肝を冷やす。気持ち悪くなっている暇はなさそうだ。   
  
乱れるようなウツボさんの攻撃に、スキュラさんが圧倒されていく。ただ避けるのに必死にみえて、宣言通り旋回は続けていた。

そしてその直後、スキュラさんが放った太い矢がウツボさんの後ろを追いかけているのが見えた。

(もしかしてあの矢、ウツボさんを追いかけているんじゃ!)

ウツボさんは私たちに攻撃をすることに必死で、後ろから迫りくる矢に気づいていない。

「そろそろ終わりにいたしましょうか?! コウモリ風情が!」

ウツボさんの声が空全体に響いた瞬間、スキュラさんの矢がウツボさんの羽を貫いた。

「なァっ――きゃァアアアアア――――」
  
ウツボさんが崖の下へ真っ逆さまに落ちていく。  
 
下はスモークと爆弾の閃光まみれになっていて、騎士団やスモークゲイルの姿は見えない。

「――ウツボさんっ!!」

私が下に向かって手を伸ばそうとするも、すぐにスキュラさんに拘束されるように抱きしめられた。

「ハル様。闇テイマーを助けようなど絶対に思わないことです。ハル様など一瞬で魂を抜き取られてしまいますよ!」

そうだけど、戦闘中の巣穴に落ちるなんて、もうウツボさんは生きては戻れないかもしれない。    
   
福井で食べたウツボの蒲焼きが、とても美味しかったことを思い出す。

しかも高タンパクで鉄分も豊富、おまけにコラーゲンも多く含まれているのだ。

(ウツボさん、もし死んじゃったらヒューゴさんに食べられちゃうんじゃ……)

あれだけ攻撃を受けたというのに、ウツボさんの心配をする私も私だ。

スキュラさんは身を挺して守ってくれたというのに。 



「ごめんなさいスキュラさん。お怪我はしていませんか?」

「……っ……」

真上を見上げるスキュラさんの白目が、大きく見開いている。    
 
どうしたのかと私も見上げれば、私たちの真上には、羽が4つに分かれた白銀の翼竜が飛んでいた。

首が長く、角も4つ額から生えている。
    
恐怖を感じるよりも、その神秘的な姿に息を呑む。
 
「凄い。もしかしてあれが、スモークゲイル……?」
「スモークゲイルの子供のようですね。」
「あの大きさで子供?!」 

私が見惚れていれば、スモークゲイルの縦長の黒目が私の姿を捉える。なぜだかその瞳に魅入られた。

「ハル様!! しっかり捕まっ――」 
 
スモークゲイルが口から大量のスモークを吐かれる。

すると一瞬にして辺り一面、濃厚な煙に包まれる。

キュオォォォォォォォォォォォ

スモークゲイルの鳴き声が間近で響いて、スキュラさんが耳をペタリと畳んだ。

「スキュラさんっ?!」

しかしその隙を狙ったかのように、スモークゲイルがスキュラさんの背中に体当たりをしたのだ。 

「ぐぁッッ」 
  
その拍子に手を離され、私も体当たりを受けた勢いで掴んでいた手を離してしまう。    
 
「――――あっ」

そして私は崖の下の谷底へ、真っ逆さまに落ちていった。


 
 


        
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