41 / 41
8-2.
しおりを挟むある日庭で育てていた薔薇を、お母さんが学校に持って行けと言って、リオはいやいや薔薇の花束を抱えて登校したそう。
すると案の定、いじめっ子たちにからかわれて、薔薇を取り上げられ、「男なのに気持ち悪い」と道端に投げつけられたのだ。
そこにたまたま通りかかった私が、そのいじめっ子たちに後ろから飛び蹴りをしたのだとか。
『ふざけんじゃないわよこの悪党ども!薔薇に謝んなさいよ!!』
『そーだそーだ、マキ団長の言う通りだ!!』
『薔薇に土下座しろ!!』
私には取り巻きがいて、私はマキ団長と呼ばれていたらしい。
そういえば昔、私はガキ大将のような存在だった。さすがに中学入って女らしくしようと思ったけれど。
「その時、俺もマキみたいになりたいって思って、でも結局話しかけることができずに転校したんだ。」
リオはお母さんの病気を治すために転校を繰り返しており、治療してくれる入院先が見つかったらしく、わずか2年で同じ小学校を転校した。
ごめん、そこは全く覚えてない。
「マキに憧れて、中学上がって合気道習い始めてさ。3年生の時、たまたま不良の喧嘩を止めたら、皆が俺についてくるようになって。高校生になる頃にはステラってチームが出来てた。」
「凄いね、リオ。」
「でも、そんな時またマキに出会ったんだ。」
私は実家から遠方の高校に入学し、1人暮らしをしていた。そこでヤマトと出会ったのだ。
「マキは1人でつまんなそうに柵から下の川を覗いててさ。俺もすぐに声かければいいのに、上手くかけられなくて。」
しばらく私を見ていたら、向こうから歩いて来たメロウのヤマトが「マキ!」と私を呼びつけた。でも走り寄る私とヤマトがキスしているのを見て、リオの闘争本能に火がついたらしい。
つまりメロウとステラが犬猿の仲だった原因は私にあったというわけだ。
「あのメロウの総長がマキの彼氏だって知って、それから何度も抗争を挑んだ。でもマキはほとんど抗争には現れなかったよな?」
「…うん。」
「だからマキを人質に取ったんだ。少しでも話したかったから。」
レオは、「ごめん」と言って俯いた。
でも人質に取った私は小学生の頃と変わらず相当なじゃじゃ馬で、しかも黒いオーラを纏うリオに平然と悪態をつくものだから心底驚いたのだとか。
「この世界に転生してからも、すぐには話しかけれなかった。もうゾイとシシルは婚約してたし。情けない話だよな…。」
「そんなことない。」
レオは私がダンスの練習や王族のマナーを学園の先生たちから学んでいるのをずっと見ていたらしい。あと、庭園の薔薇を育てていたことも。
「騎士団に入って、シシルが眠らせた森の魔獣を担いで運んだって聞いた時は笑ったよ。あんたが変わってなくて安心した。」
初めて会った時に私のことを怪力女だと言っていたのは、あのことだったのね!
…色々見られているって恥ずかしい。これからは自分の行動に気を付けよう。。
「俺はかっこ悪いし度胸もない男だけど、誰よりもシシルのことが好きだって言える自信はある。」
私を真っ直ぐに見つめるレオ。
馬車が平坦な道を歩き出したのか、少し車輪の音が静かになった。
「レオは、とってもかっこいいわ。それに私が学園を爆破した時だってすぐに助けてくれた。
"騎士団長"っていう立派な肩書があるのに、私をかくまう様に保護してくれたじゃない。私の無実を証明するために動いてくれて、度胸だってある。」
そう、あの時レオは騎士団長という地位があるのに、私を最後まで助けてくれた。
きっと爆破を"不慮の事故"として片づけた承認文書なんて、容易に承諾されるはずがない。レオが頑張ってくれたのだろう。
「…度胸でも何でもないよ、シシル。」
レオの綺麗な瞳が揺らいで、吸い込まれるのではないかと思うほどに見つめ返した。
「好きだよ。シシルのためなら全てを捨てられる。」
その言葉が、何よりも嬉しくて、
私は涙を流し、レオに伝えた。
「ありがとう。私も好きよ。」
おわり
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
お気に入りに登録しました~
SparkNorkx様
大変嬉しいお言葉ありがとうございます~( ノД`)続けて更新できるように頑張ります🙏🥺✨