【完結】伯爵令嬢は悪役令嬢を応援したい!~サファスレート王国の婚約事情~

佐倉えび

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伯爵令嬢は悪役令嬢を応援したい!

アリシア(3)

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 学園内では、アリシアたちが断罪されるのではないかと、まことしやかに囁かれるようになった。高位貴族が揃って断罪される様は、まるで婚約破棄小説のようではないかと噂された。

 そんな居心地の悪い学園生活を一週間ほど過ごしたころ、グラント公爵家からアルフレッドの誕生会への招待状が届いた。ごく身近な人しか参加しないと書かれた招待状を見たアリシアは、とうとうこの時が来たのだと震える手を握りしめた。

 ヴァレンティーナとエミーリアは、招待状が届いたあたりから学園に姿を現さなくなった。手紙を送りたかったけれど、この誕生会で断罪されるのでしょうか?などと書くわけにもいかず、マーガレットと二人で静かに過ごした。
 マーガレットは、ヒースから誕生会ではエスコートできないと言われたらしい。憤慨するでもなく落ち着いた様子で「お兄様にエスコートしていただくわ」と笑っていた。

 リアム様に同じことを言われても、わたしは笑っていられるかしら?

 淑女としての教育ばかり受けても、イレギュラーな事柄には何一つ対処できない。
 貴族的な会話や言い回しに慣れたところで、婚約者の気持ちすらわからない。
 リアムからは迎えに行くという手紙と、琥珀のネックレスが届いていた。
 そのことに安堵する自分が、ひどく恥ずかしかった。


 無情にも訪れてしまった当日、侍女に全身を磨かれ、控えめにと言ったのに、柔らかな春を思わせる淡いイエローのドレスを纏っていた。色こそ控えめといえなくもないが、幾層にも重なった生地が腰からふわりと広がり華やかだ。
 アリシアは思わず首を振っていた。

「大丈夫ですよ! 頂いたネックレスに似合いますから!」
「そうですとも! お嬢様は春の妖精ですから!」
「やめて、妖精だなんて恥ずかしいわ」

 恥ずかしがるアリシアのことなどお構いなしに侍女たちは褒めたたえ、浮かない顔に化粧を施していく。気持ちとは裏腹に仕上がっていく様は、断罪が近付いていることを連想させ、胸が苦しくなった。

 迎えに来たリアムの整った顔を久しぶりに見ると、抱いた不安はますます膨れ上がり、アリシアの気持ちは深く深く沈むのだった。
 行きの馬車の中で、リアムがしきりに装いを褒めてくれたけれど、儀礼的な言葉しか返せず緊張するばかりだった。

 グラント公爵家の邸内に入ってからも、嫌な汗が止まらなかった。身近な人しか呼んでいないのは本当だったようで、見知った顔ばかりだった。それなのに、王宮の夜会よりも緊張していた。

 リアムには何かと声をかけられたけれど、上の空で頷くばかりでろくな会話もできない。
 視界の端で、兄にエスコートされているマーガレットを見てますます気持ちが塞いだ。

「アリシア、大丈夫だから」

 リアムが囁く。
 何が大丈夫なのだろう。
 その綺麗な顔で、貴様との婚約は破棄する!などと言い出すのではないか?

 アリシアが、いっそ早く断罪して欲しいとまで思いはじめたころ、ようやく主役であるアルフレッドが、エミーリアをエスコートしながら現れた。幸せそうな二人の表情に思わず声が漏れてしまった。

「えっ?」

 瞬間、リアムがアリシアの腰を引き寄せた。
 顔を上げると、これでもかというほど優しい顔でアリシアを見ている。

 リアム様、どうしてそんな優しい顔を?

 戸惑っているうちに、アルフレッドが挨拶を始めた。

「私の誕生会にお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。さっそくですが、本日は皆様にご報告がございます。私、アルフレッド・グラントと、かねてより婚約しておりましたエミーリア・マクファーソンは、サファスレート学園の卒業と共に結婚いたします」

 アルフレッドはそう言うと、二人揃って前を向き、綺麗にお辞儀をした。仲睦ましい様子に、周りの拍手が鳴り響く。

 結婚!?
 婚約していたのだから本来なら当たり前のことだけれど、断罪されるものだと思い込んでいたからーー

 アリシアが戸惑っているうちに、リアムがアリシアの前へと躍り出て片膝をつく。
 驚きに目を見開くアリシアの手を取った。

「アリシア……愛している。一生大切にすると誓う。どうか私と結婚して欲しい」

 そう言って、流れるように手の甲にキスされた。

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