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伯爵令嬢は悪役令嬢を応援したい!
アリシア(4)
しおりを挟む愛!?
愛って??
「アリシア……どうか返事を」
眉を寄せ、懇願するように名を呼ばれる。
琥珀色の瞳が、本当の気持ちだと伝えてくる。
アリシアは動きの悪くなった首を必死に動かし、縦にコクコクと振った。
いつも冷静なリアムの相好が崩れ、気が付けば先ほどのアルフレッドたちのように盛大な拍手がおくられていた。
感極まった様子で立ち上がったリアムがアリシアを抱きしめる。
「……っ、リアムさ……ま……」
マーガレットがこちらを見て、ニヤニヤ笑っている。
皆の前で恥ずかしいと身悶えていると、いつの間にかジークハルトがヒースを伴って会場に乗り込んできて「マリアが入れないのはどういうことだ!?」と叫んでいた。
驚いた人々が一斉に振り返った。
「ご招待しておりませんので」
怒りを露わにするジークハルトに、アルフレッドが言い放った。
「なぜだ!? 私がエスコートすると伝えておいたであろう!?」
「マリア嬢は殿下の正式なお相手ではありませんので」
「なんだと!? たかが誕生会ではないか!!」
「お言葉ですが殿下、本日、私とエミーリアの大事な結婚発表も兼ねておりましたので、ただの誕生会ではありません」
「そんな話は聞いてないぞ!! 断罪はどうした!?」
「何のお話でしょう?」
「貴様っ!!」
アルフレッドに掴みかかる勢いで一歩を踏み出したジークハルトに、その場を一言で制する、覇気のある声が響いた。
「いい加減にしろ」
扉から入ってきたその人は、レオンハルト・ディル・サファスレート第一王子。
そして、そのレオンハルトにエスコートされ、ヴァレンティーナが入ってきた。
「あに……うえ……ヴィー……」
ジークハルトが呟く。隣にいたヒースの驚きようからして、こちらも何も知らなかったようだ。
「そのだらしない口を閉じろ。醜聞を振りまかぬよう最小限で済ませ、という陛下からの恩情だ」
「何のことです?」
「この状況でもわからないのか? 本当に、お前は何をしに学園へ行っていたのだ。このようなことを他国の留学生もいる学園の卒業式でやれば王家の醜聞は免れぬ。無理を言ってこの場を用意させた。幸いここに招かれた者は我が王家に忠誠を誓う者ばかり、その意味ぐらいはわかるか?」
「……っ!!」
レオンハルトの言葉に、ジークハルトが唇を噛む。
「お前はデオギニア帝国への留学が決まった。これは決定事項だ。少なくとも五年、学問に励みながら己を律し、国交のために身を費やし、第二王子の責務を果たせ。当然、そのような期間ご令嬢を待たせることなど不可能。ヴァレンティーナ嬢との婚約は解消とする。ヴァレンティーナ嬢は私と改めて婚約することが決定している」
「なっ!! その女は!!」
「黙れっ!!! これ以上ヴァレンティーナ嬢を侮辱するなら私に切られても文句はないと思え!!」
剣の柄に手を添えて発するレオンハルトの声に、ジークハルトだけでなく、聞いた者すべての肩がすくみあがる。
ジークハルトの隣で蒼白になっていたヒースへとレオンハルトの厳しい眼差しが向いた。
「ヒース」
「はっ!!」
「デオギニアでもジークハルトを支えてやって欲しい。それと同じく……マーガレット嬢との婚約は解消となる」
「……はっ」
咄嗟に騎士の礼をとったヒースは微かに震えていた。一方で、言い終えたレオンハルトの眼差しは柔らかく弧を描いていた。
「さて、待たせたな、入るがよい」
後方の扉が開かれ、レオンハルトの言葉と共に頬に刀傷がある美丈夫が現れた。
「辺境伯のブレイデン・ガルブレイスだ。マーガレット嬢、こちらへ」
アリシアは驚いてマーガレットを見た。いつもの強気な態度は影を潜めている。
レオンハルトの近くまで兄にエスコートされ、ブレイデンが引き継ぐようにマーガレットをエスコートし、レオンハルトたちの斜め後ろに二人で並んだ。
「非公式ゆえ、追って正式な発表はあるが、ブレイデンとマーガレット嬢が婚約する運びとなった。ブレイデンは、ちょっと武骨だが愛いところもあってな、マーガレット嬢が婚約を解消するなら是非にと、辺境からわずか三日で登城したのだ。実に馬が気の毒な話であろう?」
「殿下それはっ……!!」
焦るブレイデンに屈託のない笑みをみせたレオンハルトは優しい声で語った。
「国の為に尽くしてくれたそなたには幸せになって欲しいと願っている。皆もどうか、この忠実な臣下を共に支えて欲しい」
歓声と共に、これまで以上の拍手に包まれた。
アリシアは次々に起こる婚約や結婚の発表に混乱しながらも、マーガレットがしおらしく頬を染めている様子から、ブレイデンこそがマーガレットの憧れの人であったのではないかと、急に思い至ったのだった。
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