【完結】なんちゃって幼妻は夫の溺愛に気付かない?

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)

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番外編

うさぎのムース

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 今日は婦人会で仲良くなったクリスティーヌと、エレオノーラを交えてのタルコット公爵家の私的な茶会の日である。

 キモいマノロ殿下の愛妾にされてたなんて、ほんっと不憫!!――と、マイナが憤るぐらいクリスティーヌと仲良くなれたのは、マイナが母に出された婦人会で披露するお菓子作りをクリスティーヌが褒めてくれたことからだ。

 産後で少々気が抜けていたのがよかったのだろう。
 披露したお菓子はアイシングクッキーだった。
 驚いたことに、この国にはアイシングクッキーなるものがなく……。やってしまった感満載だったが、みんなはマイナの発想の出どころよりもアイシングクッキーの可愛さにメロメロになってくれた。

(っていうかもう、栄養とか無視したし、なんならまたクッキーだったし)

 おからクッキーの次の課題がクリアーできず、産後に無理はするなとレイにも言われて手をぬくことにした。
 可愛いからいいかぐらいの気安さで持っていったら喜ばれた。

 皆に作り方を伝授したけれど、この世界の道具だと細かい作業は難しかったから、ハート型や星型に焼いたクッキーをピンクとか白にしただけ……。
 前世の凝ったアイシングクッキーを知っている身からすると拍子抜けだが、色が可愛いと評判になったから、この世界は可愛いが少々足りないのかもしれない。

 それはさておき。

 その中でもひときわクリスティーヌが喜んでくれて、なおかつプリンアラモードのレシピのお礼まで言われてしまったのだ。

 ぶりざーど宰相とクリスティーヌが結婚するとき、レイに「二人の結婚祝いにレシピを教えてあげたいんだけど、いい?」と聞かれたときは、レシピがお祝いになるのかなぁと思いながら、もちろんと頷いたのだけれど。

 それがどうやらぶりざーど宰相との思い出のデザートになったらしく、マイナは小躍りしてしまった。

「わたくし、恋のキューピッドなのでは?」
「マイナさま、頭わいてますね!」
「頭がわいてるのはヨアンでしょう!? めっちゃ可愛いアキがめっちゃヨアンに似てて、大好きなニコの髪色だったからって!!」
「だって、うちの子が可愛すぎて~」
「確かにアキは可愛いけど、そのだらしない顔をやめないと、また顔が煩いとか言われて部屋から追い出されるわよ!?」
「…………やめます、すぐやめます」

 ニコは子供を産んで、ますます強くなった。
 たぶん、産後の疲れた体と頭で、ヨアンの緩みきった顔を見ると無意識にイライラするのだろう。
 ニコはキリッとしているときのヨアンが好きだからなおさら……。
 まぁそんなイライラも、しばらくすれば落ち着くだろう。

 今日もタルコット公爵家は賑やかである。

 そんなヨアンの顔のことより、可愛いものが好きだという可愛いクリスティーヌに似合うデザートって何だろうと、ここ最近ずっと悩みに悩んでたどり着いたお菓子がコチラ!

(じゃじゃーん……って言いたいけど我慢よ……!!)

 清楚で可憐なクリスティーヌは、今日は淡いピンクのドレスを着てきてくれたから、もうデザートと可愛さが一致しすぎてて怖いぐらいだった。

「マイナ様……これは……」

 可愛さにぷるぷる震え出したクリスティーヌは、デザートのウサギと同じく、白い肌に大きな瞳……ふわっふわの可愛らしい髪……以前よりずっと柔らかい雰囲気になって、とにかくすごく可愛いのだ。

(いい……こういう人妻もいい……ついでに最近めっきり聞けなくなった恋バナが聞きたい……)

 マイナは恋バナに飢えていた。
 あの怖い宰相との恋バナでもいいから聞きたいぐらい飢えている。

「顔の部分は白いムースで、耳の部分はチョコで作って、ムースにさしてみたんです。目と口もチョコなので食べられますよ。ウサギのムースです」

「ウサギのムース……」

「まぁ、本当に可愛らしいですわ……アデリアが大きくなったら喜びそうですわ」

 普段、デザートにそれほど関心を示さないエレオノーラも頬を緩めていた。

 エレオノーラは娘のアデリアの体調が悪く、前回の婦人会を欠席していたので、クリスティーヌと会うのは初めてだ。

(大丈夫だろうと思ったけど、すぐに仲良くなってくれてよかった~!!)

 会うなり二人は旧友のように打ち解けていた。
 なんだか難しい政治経済的な話をしていたが、マイナは綺麗な二人を眺めているだけで幸せだった。

(絶世の美女のエレオノーラさまと、ウサギのように可愛いクリスティーヌさまの組み合わせ……いい……)

 ちなみにウサギの口はイーロと話し合い、色々案は出たものの、最後は某有名うさぎキャラを参考にした。
 あれはすごいビジュアルだったのだなと、作りながら感心してしまった。

「アデリアちゃんのために、レシピを書きましょうか?」
「よろしいのですか?」
「もちろん。クリスティーヌ様もレシピ要りますか?」
「お願いいたします!!」

 食い気味に言われてマイナは口を開けて笑ってしまった。
 まだ二回目の対面だというのに、砕けるのは早すぎだろうか?

「でもこれをロジェ様が食べるところを想像すると……絵面がすごいことになりますね」
「確かに……」

 マイナの発言に、思わずといった感じでエレオノーラが同意している。
 クリスティーヌはもじもじとしており、気恥ずかしそうだった。

「ぶり……いえ、ロジェ様って……お家で笑ったりとかなさるんですか?」

 思わず聞いてしまう。

 マイナには想像がつかないことだったが、クリスティーヌはいっそうもじもじと体を揺らして、頬をピンク色に染めながら曖昧に頷いていた。

(あんまり笑わないのかなぁ……でもやっぱり……クリスティーヌ様はロジェ様のこと、すごく好きっぽいんだよねぇ……)

 思い出されるのは例の王家の別邸でのことである。
 マノロ殿下を迎えにきたロジェを見たクリスティーヌはホッとしたような顔をして、好意を滲ませていたのだ。

(でもあんまりロジェ様とのこと根掘り葉掘り聞いたら、昔の井戸端おばさんたちの婦人会と変わらなくなっちゃうからやめたほうがいいよねー)

 そんな心配をよそに、エレオノーラが議題のように話を持ちかける。

「マイナさまは、『愛しい騎士の貴方へ』という小説はお読みでしょうか?」
「もちろん読んでますわ!!」
「よかった……わたくし、今回の別れのシーンが辛くて辛くて……誰かとこの話をしないとどうにかなりそうでしたの」

 泣きそうな顔をしたエレオノーラが少し俯いた。
 まつ毛が顔に影を作りそうなほどの、美しい俯き加減である。

(まさかバリキャリ風だったエレオノーラさまが、ここまでロマンス小説にハマるなんて!!)

 マイナは歓喜しながら口をひらいた。

「大丈夫ですわ!! かの作者様の小説はすべて拝読しておりますが、いつも、絶対に、ハッピーエンドですから大丈夫です!!」
「……そうでしょうか……わたくし、もう無理なのではと」
「エレオノーラ様、気を確かに!!」

 愛しい騎士の貴方へは既に十巻を超えるロマンス小説で、大ベストセラーとなっている。
 それが先日出た最新刊のあまりの切なさに、産後の脳と体が物凄いダメージをくらった。

 エレオノーラも読んだのであれば、相当なダメージだろう。

 ロマンス小説について語ることはあったが、ここまではっきりとタイトルを出して語ったのは初めてだ。

(よほどショックだったのね……エレオノーラ様も産後のお体なんだわ……)

 産後産後煩いが、体と心の変化が凄いのだから仕方がない。
 全部ホルモンのせいだろう。

「クリスティーヌ様は、ロマンス小説はお読みになりますの?」

 エレオノーラは、ほう、と妙に艶のある溜息を漏らしながらクリスティーヌに聞く。

「えっ……」
「ご存じありませんか? 男女の恋愛模様を描いた娯楽小説ですわ」
「はい、存じておりますが……グートハイル侯爵夫人がお読みになるのですか?」
「ええ……最初は侍女の勧めで。疲れたときに気晴らしに読むと、とても楽しいのですわ……わたくしのことはエレオノーラと呼んでくださいませ。わたくしもクリスティーヌさまとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです、エレオノーラさま。私はロマンス小説を読む機会がなく……何から読んだらいいかもわからないのですが……」

「では、わたくしがいくつかお貸ししますわ!」

 マイナが右手をあげてクリスティーヌに提案すると、クリスティーヌはきょとんとした顔をしたあと、思わずといった雰囲気で頷いていた。

「ニコ、わたくしの蔵書の中から初心者向けの書籍を三冊ほどお持ちして。それと愛しい騎士の貴方への一巻を」
「かしこまりました」

 そそくさと消えたニコを見送り、二人に笑顔を向ける。

「うさぎちゃんの耳が取れてしまうと大変なので、召し上がってくださいな」

 クリスティーヌとロジェの恋バナはまだまだ聞けそうにはないが、ロマンス小説を語り合う仲間が増えたことで、この日の茶会に満足するマイナであった。



****************************************
あとがき欄がないため、こちらで失礼いたします。

オトナのお付き合い~(カヌレ家次男レイモンドがヒーローです)
余命三年ですが~(ロジェがヒーローです)
いつも正しい夫に~(ラッセルがヒーローです。※R18)

など、合わせてお読みいただけましたら幸いです。
幼妻も、また何か小話を思いついたときは更新します。

お読みいただきまして、ありがとうございました。
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