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 そうして迎えた面会の日。

 コレッティ子爵家に怒号が飛び交った。
 アルヤがゴットロープに置き去りにされたことは二人とも承知していたが、それだけではない。

 アルヤ自身が結婚を諦めて修道院に入る覚悟までしているとは知らなかったようで、アルヤの祖父と父が大喧嘩をはじめてしまったのだ。

 アルヤに作家の才能があることなどを交えながら二人を説得し、最後は穏便に話を終えて退席したが、かなり骨が折れた。
 血気盛んな家柄だと実感したのはこのときだった。

 アルヤの祖父は「アルヤが死にかけたと伝え、こちらに有利な形で婚約を解消する」と言っていた。
 最初は祖父だけでなく父親まで破棄を叫んでいたが、それを止めたのはカールだった。

「彼が逆上して、アルヤさんが傷つけられるのが怖いんです」

 そう言いながら、コレッティ子爵たちの気持ちが婚約解消に傾くよう誘導した。
 プライドの高いゴットロープには『俺から振ってやった』という、くだらない優越感を与えておいたほうがいい。

 二人は最終的には落ち着きを取り戻し、すぐにベルツ子爵家に手紙を送り、祖父同士の話し合いがもたれたようだった。
 カールに届いた手紙には、アルヤが置き去りにされ命の危険すらあったことを抗議したとあり、解消で手を打つが、ゴットロープが子爵位を継ぐようなことになったら、そのときは縁を切らせてもらうと伝えたようだ。

 幸い、ゴットロープの弟はかなりの秀才で素行もいいらしい。
 対して素行の悪いゴットロープへの不信感はベルツ子爵家内でも高まっていたらしい。

 ベルツ子爵家とコレッティ子爵家は同じ子爵家だからといって、貴族社会への影響力はまるで違う。
 派閥問題を起こしてしまったとはいえ、クリスティーヌは宰相の妻になった。
 そのクリスティーヌが「お祖父様」と呼ぶほど慕っているコレッティ子爵家のほうが、今では格上といえるだろう。

 今を時めくコレッティ子爵家から嫡男が婚約破棄などされては、爵位を継ぐ予定の次男の顔にも泥を塗りかねない。
 ベルツ子爵家は、婚約解消で留めてくれたコレッティ子爵家に相当な借りができた。

(アルヤさんあっての子爵位だったってことに、ゴットロープが気付くのが遅ければ遅いほどいい)

 カールはヨアンが流してくれたゴットロープの噂を教えてもらいながら、ほくそ笑んだ。

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