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「お嬢様!!頑張って!!」
「んー!!」
「もうすぐですよ!!頭が見えてます!!」
どこぞの出産シーンのような掛け声だが、私が今必死にしているのは釣りである。いつものように釣りに来た私はかれこれ二週間あまり手酷い洗礼を魚から受けていた。餌だけ取られるのだ、毎日。
「あともうちょっと!!」
「んー!!!」
そんな私にもついに記念すべき一匹目を釣り上げられる日がやって来た!!しかも割と大きい!!
「よいしょーっ!!!」
ぱしゃん!と姿を現した魚が陸に上げられてびちびちと跳ねている。
「やったー!!釣れた!!釣れたわ!!」
「やりましたね!!お嬢様!!大物です!!」
モニカが針から外した魚は私の顔より大きかった。
モニカは手慣れた様子で保管用の網にすぐさまそれを入れる。
「凄いです!あれはアジーですよ!!」
「焼いたら美味しいやつね!!」
「早速今夜、焼いてもらいましょう!!」
私達は大興奮で、ぴょんぴょんと跳ね回っていた。
「釣れましたか?」
ふいに声を掛けられ、ぎょっとしてそちらを見るとリーン様がニコニコと笑いながら立っていた。
「リーン様!!釣れました!!」
「大きなアジーでしたよ!!」
モニカは自分の事のように嬉しそうにリーン様に言っている。私は飛び跳ねていた所を見られていたのかと少し恥ずかしかった。うっかり忘れがちだけど、一応私は侯爵令嬢なのである。見た目が地味だからみんな気にしてないかもだけどね!
「本当だ、大きなアジーですね。塩焼きがおすすめです」
「はい!そうします!」
「もう一匹くらい釣りましょう」
「はい!」
リーン様の言葉に嬉しくなって、また海に針を投げ入れる。モニカはあれからめちゃくちゃ上達して、一人で何匹も釣れるようになっていた。
「モニカさん、次はあっち方向に投げて下さい」
「はい!師匠!!」
「運が良ければサーバが釣れるかもしれませんよ」
「頑張りますっ!」
リーン様は的確にアドバイスをしてくれる。ただ、彼が釣り場に来ると何故かギャラリーが出来てしまうのだ。まぁ、イケメンだし独身だから…当然と言えば当然か。
「リーン様はモテモテですねぇ」
「え!?そんな事は…」
「いやいや、あの集団リーン様待ちでしょ?」
「お客様かな…」
「ある意味そうかも」
ふふふ、と笑っているとリーン様はちらりと視線を泳がせて、にやりと笑った。
「ティアラ様だって…あの集団、ティアラ様親衛隊でしょう」
「え?」
ふとリーン様の目線を追うと、何やら男性の集団がいた。手には何かを持っている。何だあれは。
「…釣竿…?」
「…ですね。最近街で噂が広がってて。謎の美女が釣りしてるって。一緒に釣りしてお近付きにってね」
「謎のって…みんな私の事知ってるじゃない」
「噂ってそんなもんですよ」
「あぁまぁ…」
そうよね、噂ってね。みんな好き勝手言うものね。私だってリュダールに幼馴染だから仕方なく婚約して貰ってるとか言われてたもんね。腹立つ。
「でもティアラ様だってわかった所で減りませんよ、むしろ増えるかも」
「え?ないでしょ。私よ?妹ならまだしも」
「あぁ、自覚ないんですね」
「自覚?」
「はい、ティアラ様は美人で人気が高いって事」
「は?」
私はぽかんとしてしまった。美人ですって…?私が?アリーシャの引き立て役の私が?
「リーン様はお優しいですね…」
「あ、だめだこれ」
優しさに感動してしまう。あまりにも可哀想に見えたのかしら、私。慣れっこだから、気にしないけど。でも、人の優しさに触れるのは良いものね、ほっこりするわ!!
「リーン様、お嬢様は自己肯定が果てしなく苦手です。褒め言葉すら、気を使ってくれていると思ってますから」
「あー…、何となくわかった気がするね…テオが心配するはずだ」
「でしょう?危なっかしいでしょう?」
「はぁ、まぁ…ね」
モニカとリーン様がぼそぼそと喋っているわね…絶対私の事だわ…リーン様の眉がしゅんと下がっているもの。モニカにもっと褒めてやってくれとお願いされているのかも。リーン様、ごめんなさいね…!
「そこがお嬢様の可愛い所です」
「それはわかる」
「自分ではまったく自覚がないのがまたツボというか…トラップというか」
「ハマったら抜け出せないと…」
「まぁ、そんな所です。お気を付け下さい」
何かしら、二人ともこちらをちらちら見ながらまだ何かを言っているわ。悪口かしら…魚が一匹釣れたくらいで調子に乗るなと言いたいのかしら。
「お嬢様、私達はお嬢様の悪口は言ってませんよ」
「えっ…モニカはいつの間にか人の心が読めるように…?」
「お嬢様は顔に出やすいので」
「…まぁ…」
ぺたぺたと顔を触ったら、リーン様が盛大に吹き出して笑った。
「んー!!」
「もうすぐですよ!!頭が見えてます!!」
どこぞの出産シーンのような掛け声だが、私が今必死にしているのは釣りである。いつものように釣りに来た私はかれこれ二週間あまり手酷い洗礼を魚から受けていた。餌だけ取られるのだ、毎日。
「あともうちょっと!!」
「んー!!!」
そんな私にもついに記念すべき一匹目を釣り上げられる日がやって来た!!しかも割と大きい!!
「よいしょーっ!!!」
ぱしゃん!と姿を現した魚が陸に上げられてびちびちと跳ねている。
「やったー!!釣れた!!釣れたわ!!」
「やりましたね!!お嬢様!!大物です!!」
モニカが針から外した魚は私の顔より大きかった。
モニカは手慣れた様子で保管用の網にすぐさまそれを入れる。
「凄いです!あれはアジーですよ!!」
「焼いたら美味しいやつね!!」
「早速今夜、焼いてもらいましょう!!」
私達は大興奮で、ぴょんぴょんと跳ね回っていた。
「釣れましたか?」
ふいに声を掛けられ、ぎょっとしてそちらを見るとリーン様がニコニコと笑いながら立っていた。
「リーン様!!釣れました!!」
「大きなアジーでしたよ!!」
モニカは自分の事のように嬉しそうにリーン様に言っている。私は飛び跳ねていた所を見られていたのかと少し恥ずかしかった。うっかり忘れがちだけど、一応私は侯爵令嬢なのである。見た目が地味だからみんな気にしてないかもだけどね!
「本当だ、大きなアジーですね。塩焼きがおすすめです」
「はい!そうします!」
「もう一匹くらい釣りましょう」
「はい!」
リーン様の言葉に嬉しくなって、また海に針を投げ入れる。モニカはあれからめちゃくちゃ上達して、一人で何匹も釣れるようになっていた。
「モニカさん、次はあっち方向に投げて下さい」
「はい!師匠!!」
「運が良ければサーバが釣れるかもしれませんよ」
「頑張りますっ!」
リーン様は的確にアドバイスをしてくれる。ただ、彼が釣り場に来ると何故かギャラリーが出来てしまうのだ。まぁ、イケメンだし独身だから…当然と言えば当然か。
「リーン様はモテモテですねぇ」
「え!?そんな事は…」
「いやいや、あの集団リーン様待ちでしょ?」
「お客様かな…」
「ある意味そうかも」
ふふふ、と笑っているとリーン様はちらりと視線を泳がせて、にやりと笑った。
「ティアラ様だって…あの集団、ティアラ様親衛隊でしょう」
「え?」
ふとリーン様の目線を追うと、何やら男性の集団がいた。手には何かを持っている。何だあれは。
「…釣竿…?」
「…ですね。最近街で噂が広がってて。謎の美女が釣りしてるって。一緒に釣りしてお近付きにってね」
「謎のって…みんな私の事知ってるじゃない」
「噂ってそんなもんですよ」
「あぁまぁ…」
そうよね、噂ってね。みんな好き勝手言うものね。私だってリュダールに幼馴染だから仕方なく婚約して貰ってるとか言われてたもんね。腹立つ。
「でもティアラ様だってわかった所で減りませんよ、むしろ増えるかも」
「え?ないでしょ。私よ?妹ならまだしも」
「あぁ、自覚ないんですね」
「自覚?」
「はい、ティアラ様は美人で人気が高いって事」
「は?」
私はぽかんとしてしまった。美人ですって…?私が?アリーシャの引き立て役の私が?
「リーン様はお優しいですね…」
「あ、だめだこれ」
優しさに感動してしまう。あまりにも可哀想に見えたのかしら、私。慣れっこだから、気にしないけど。でも、人の優しさに触れるのは良いものね、ほっこりするわ!!
「リーン様、お嬢様は自己肯定が果てしなく苦手です。褒め言葉すら、気を使ってくれていると思ってますから」
「あー…、何となくわかった気がするね…テオが心配するはずだ」
「でしょう?危なっかしいでしょう?」
「はぁ、まぁ…ね」
モニカとリーン様がぼそぼそと喋っているわね…絶対私の事だわ…リーン様の眉がしゅんと下がっているもの。モニカにもっと褒めてやってくれとお願いされているのかも。リーン様、ごめんなさいね…!
「そこがお嬢様の可愛い所です」
「それはわかる」
「自分ではまったく自覚がないのがまたツボというか…トラップというか」
「ハマったら抜け出せないと…」
「まぁ、そんな所です。お気を付け下さい」
何かしら、二人ともこちらをちらちら見ながらまだ何かを言っているわ。悪口かしら…魚が一匹釣れたくらいで調子に乗るなと言いたいのかしら。
「お嬢様、私達はお嬢様の悪口は言ってませんよ」
「えっ…モニカはいつの間にか人の心が読めるように…?」
「お嬢様は顔に出やすいので」
「…まぁ…」
ぺたぺたと顔を触ったら、リーン様が盛大に吹き出して笑った。
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