燦々と青がいた 〜3人のオメガが幸せな運命と出会うまで〜

鳴き砂

文字の大きさ
53 / 82
第五章

優しい腕の中で 2

しおりを挟む
「て、つめたいね・・・・」

 蜂蜜色の瞳が蕩けかせながら、嘉月は言った。既に前のボタンを全て外しワイシャツを羽織っただけの彼は、自身の中に溜まる熱を冷まそうと青木の手のひらに身体を押し付けていた。そんな痴態に煽られて、深く口付けをすれば、拙く舌が絡め取られた。青木の口の中で小さな舌が懸命にちろちろと動いていた。

「フフッ。可愛い。」

 一度離れて嘉月の頬を撫でると、嘉月はもっとと言うように控え目に口を開き少しだけ舌の先を覗かせた。

「フッ、ん、んっ・・・・」

 彼の確かな期待に応えるため、青木は覗いた舌先を軽く吸い上げて、そのまま温かい口内へと侵入する。裏筋を柔らかく擽れば、あえかな喘ぎを漏らして身体を震わせた。舌を絡めたまま、冷たいと言われた自身の手を、彼の真っ白な肌の上を滑らせる。特に脇腹や内股をゆっくり愛撫すると背をのけざらせる程、嘉月は感じるようだった。

「ハァ、あぁ、も、もう、イっちゃう」

「ん、一度出しておきましょう。」

 まだ一度も触れたことのなかった彼の小さなペニスを、ゆるゆると擦って射精を促す。どうしても、目の前に広がる華奢な躯体は、激しくするとすぐに壊れてしまいそうな儚さがあったので、なるべく優しく丁寧にを心がけた。

「ん、ん、やぁ・・・・もっと、つよく、してぇ・・・・」

 けれどもペニスへの直接的な刺激が弱かった分、内側の熱は余計に溜まってしまったのか、泣きながら腰を揺する彼に心がひりついた。青木には、嘉月を泣かせるほど焦らすつもりはなかったからだ。

「ごめんなさい。」

「ううん、だい、じょぶ、だから・・・・もっとシて?」

 嘉月は顔を真っ赤にさせて微笑んだ。青木が期待に応えるように彼のペニスを握る力を強くして扱けば、嘉月はひときわ大きな声をあげてプシャっと精液をとばして、彼の下腹部を濡らした。確かめるようにそこを撫でれば、薄い色の精液が指に絡んだ。

「やぁ・・・・は、はずかしいからぁ・・・・」

「どうして?・・・・俺も、もうこんなです。」

 硬く上を向いた自身のものを、グッと嘉月の腹に押しつける。ピチャッと少し滲んだ自身の先走りと、嘉月が先ほど吐き出した欲が混ざり合う卑猥な音が聞こえる。荒く呼吸をする彼を落ち着かせたくて、青木は背中に腕を回して嘉月を抱き寄せる。ハアッと深くため息を吐いた彼は、青木の肩口に顔を埋めた。

「それ、好きですよね。」

「へっ?」

「いつも、そうするから。」

「だって、におい、おちつくから・・・・」

 肩に顔を埋める理由が自身の匂い嗅ぐ為のものだとは知らなくて、青木は思わず目を細めて笑ってしまった。彼は相変わらずぐりぐりと顔を押しつけているので、青木の緩みきった顔は見えていないのだろうが、何となく恥ずかしく感じて抱きしめる力を強くした。

◇◇◇

 暫く背中を撫でていると、嘉月の呼吸が少しだけ穏やかになった。それでも青木のワイシャツを強く握り締めて、時折激しく押し寄せてくるヒートの波を耐えていた。

「落ちついた?」

「うん」

「後ろ、触ってもいいですか?」

「うん」

 このままではつらいだろうから、切なそうにヒクつく後孔に薬指を一本挿入する。しかし、中はあまり潤ってはいなかった。それもそうだろう。青木は原因となったあの男を思い浮かべて腹が立ってきたので、頭の中から無理矢理追い出した。それからベッド脇のチェストの中に入っているローションを取り出す。

「・・・・ごめんね、あんまりぬれなくって」

「あなたが、謝ることなんて何一つありませんから。だから、安心して俺に委ねて。」

「そうだね・・・・ありがとう。」

 ゆっくりと、小さな身体を再び押し倒して言えば、安心しきった顔でふにゃりと嘉月は笑った。その笑顔を合図に、青木はローションを満遍なく指に絡めて、嘉月の中へと慎重に指を挿入し直した。

「んぅ、ん、あ、あ、ぁあ、ん・・・・」

 入り口の所を浅く摩っただけでも、ヒートの身体は敏感に反応して青木の指を深く深く受け入れようと収縮する。その動きに合わせて、奥に指を挿し込むと少しだけ手触りの違う部分に辿り着いた。そこを入念に撫でると、嘉月の嬌声はより大きくなった。

「アッ、いやぁ・・・・いや、フッ、ん、んんっ」

「気持ち良くないですか?」

 いやいやと首を振る嘉月に、意地悪をして訊ねれる。

「ん、ううん、ううん・・・・きもちぃ、きもちいよぉ・・・・」

 普段より格段に素直になっている彼は、すぐにその快楽を認めた。

「あと一回、出しましょう。まだ、身体、落ち着かないでしょう?」

「うん、わかったぁ、あぁ、アッ、イく、イっちゃう・・・・」

 その時、一瞬だけ怯えたように揺らいだ嘉月の瞳を、青木は見逃せるはずもなかった。彼を左腕で抱っこして耳元で囁く。

 あなたは、もう一人ではないから。一人きりで暗闇にいるような人ではないから。

「怖かったら、掴まって。俺は、ここにいます。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

忘れられない君の香

秋月真鳥
BL
 バルテル侯爵家の後継者アレクシスは、オメガなのに成人男性の平均身長より頭一つ大きくて筋骨隆々としてごつくて厳つくてでかい。  両親は政略結婚で、アレクシスは愛というものを信じていない。  母が亡くなり、父が借金を作って出奔した後、アレクシスは借金を返すために大金持ちのハインケス子爵家の三男、ヴォルフラムと契約結婚をする。  アレクシスには十一年前に一度だけ出会った初恋の少女がいたのだが、ヴォルフラムは初恋の少女と同じ香りを漂わせていて、契約、政略結婚なのにアレクシスに誠実に優しくしてくる。  最初は頑なだったアレクシスもヴォルフラムの優しさに心溶かされて……。  政略結婚から始まるオメガバース。  受けがでかくてごついです! ※ムーンライトノベルズ様、エブリスタ様にも掲載しています。

白銀の城の俺と僕

片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

処理中です...