戦闘員の日常

和平 心受

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インターミッション2

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「という訳で次のお仕事ミッションが決まった」

 時計が廻り、基地の中央休憩室。全天周モニタとなった室内に情報の羅列が泳ぐ。

 戻った揚羽、フレイとサクラが集まり、次なる作戦の概要は明かされた。

「BKZTUと名乗る連中からの依頼で、今回はとある会社ビルを襲撃する」

「BKZTU?」

 アルファベット読みされる名称に、揚羽が問い直す。

「うん、何でもブラック企業を絶対潰す団体、を略したそうだ」

「語呂悪ぅ」

 個人的には非常に好感の抱ける団体ではあるが、しかし悪の組織の暴力に頼るようではロクなものではない。
 己を使い潰した企業に恨みを抱くのは同情しないでもないが、故にこそ変革の為にその労力は費やされるべきで、一時の恨みで一企業を潰した所で、意図が伝わらなければ何百何千と存在する労働者を虫か何かと使役する企業への打撃とはなり得ない。また、声明を出したとしても、それをした時点で彼らの正当性は失われるのだ。

 まぁ何にせよ未だ資金難の我が組織であり、その決定である。オレ個人の見解など求められてはいないだろうし、そもそも俺たちは論議を語る存在ではない。

 各人の胸元に窓が開かれ、詳細が提示される。

「対象はこのビル。生憎と依頼者は目標を正確に設定してこず、ただ潰してくれとの事だ」

「なんだそりゃ。というかどうすれば一企業を潰せるんだ?」

 標的となるのは東京外側に位置する商社で、ビルは高さにして凡そ十階。約三千名の社員を抱える規模である。だがそれは総社員数で、本社ビルに詰めるのが何名程になるのかまでは記載されていない。

「うん、ただ、最重要標的に指定されているのが一名居てね」

 フレイの手振りに画面が切り替わり、一人の男の情報が表示される。

 第三営業部部長と書かれた強面の男であった。

「完全に私怨ですね」

「陰湿だなぁ」

「ともあれ、ある程度の破壊とこの男の抹殺がクリアラインと言った所かな」

 あくまで予測ではあるが、その認識は図らずも共通のものであった。
 察するに依頼団体の誰かの元上司。それも精神的ストレスの元凶と言った所であろうか。
 
「フレイ様、この男は悪い男ですか?」

「さて。どうだろうね」

 しかし考えてみればサクラは処置以降の精神年齢の低下が見て取れるように思う。中学生程の年齢ともなればもう少し生意気なものだと、遠い過去の記憶を照らしても考える。語彙から感じ取れる知性にしろ、母親にへばりつくフレイへの態度にしても、それはまるで小学生低学年程ではないか。

 これも、記憶を失った事への弊害か。はたまた脳にダメージが残ったせいなのか。
 いずれにせよ、彼女が此処に居て良いものか、考えてしまうのだ。

「決行は二日後。予定は?」

「ありません」

 実際には既にアルバイトの予定を入れてはいたが、確かキャンセルは効いた筈だ。俺は即断し答える。

「ですが魔物はどうします?」

 尋ねる。魔物とは怪人を以前そう呼んでいた名残だ。人には程遠い暴力性だけの獣を、あるいは魔物、あるいはバケモノと呼称していた。
 実際の所、未だに怪人は人には程遠く、せいぜいその基礎に人間の成体が使用されている程度にしか関係性はない。

「何とか出来上がったのが居てね。それを投入する。
 まだまだ完成には遠い、可能な限りトライ&エラーを繰り返していかないとね」

「随伴は?」

 俺は戦闘員の頭数に関してそのように尋ねた。

 本来のスタイルで言うと怪物の起動実験に置ける項目に活動可能時間があり、時間稼ぎ的な意味合いも込めて随伴の戦闘員は多めに手配していたのが実際である。ただ大きな問題として日本支部自体に人が居らず、その人員はアンダーグラウンドな求人サイトを経由した違法性の高い人材派遣によって頭数を揃えるのが慣例化していた。

 しかしそれも細かなトラブルや組織の隠匿性が為に制約も多く、最近では一時休載しフレイの力に寄る動員や、揚羽と俺のみというケースが殆どである。

「そろそろ募集を再会しようかとは思っているが、今回は間に合わないね。私が見繕うよ」

 フレイの横に立ち、サクラは画面をジっと覗き続けている。
 それに気づいたフレイが一声かけ、画面は全て閉ざされる。次いで足元に周辺マップが示され、作戦会議が始まった。



 

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