32 / 49
32 百聞は一見
しおりを挟む
「また明日、藤乃さん」
「はい、また明日、慧先輩」
この挨拶ができなくなるなんて、やっぱり、嫌だ。
いつもの挨拶を交わし、私は図書室を出る。
婚約破棄を選ぼうと決めた心は、妙にすっきりとしていた。もっと辛かったり、重かったり、迷ったりすると思っていた。
こんなに心が楽なのだから、やっぱりこれが、正解なんだ。
軽い心が、自分の選択が正しいことを、裏付けてくれる。
人気のない廊下を進む足音は、今日も柔らかく、温かい。
「……お兄様?」
「藤乃? いいよ、入って」
ひと足先に夏休みに入った兄は、最近は、よく家にいる。帰宅してすぐ、兄の部屋をノックすると、内側から扉が開く。
「どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
扉を開けてくれたのは、兄の従者である。私とシノのように、懇意にしている従者は、兄にもいる。
兄は勉強していたようで、机に開かれた参考書の表紙を、ぱたりと閉じた。
兄に向かい合うようにして腰掛けると、目の前に、紅茶が用意される。
「突然押しかけてごめんなさい」
「何、言ってるの。いつ来てもいいんだよ。……それで、どうしたの?」
兄は、紅茶のカップを皿から持ち上げる。
カチ、という淡い音。陶器と陶器の擦れる音は、密やかで、涼やかだ。
「お兄様に言われた、2択のことなの」
兄はそのまま、カップを皿に戻す。
紅茶は、柑橘の香りがする甘いものだった。ひと口含んで唇を湿らせ、それから、兄を見る。
「……私、海斗さんとの婚約は、このまま、破棄したいと思って」
「……ふうん。どうして?」
兄は、頬杖をつき、薄く微笑む。
「気付いたの。私は、海斗さんのことを好きなのではなくて、お父様に見限られるのが怖いだけだ、って。そのために、好きでもない人と婚約して、慧先輩にも会えなくなるくらいなら……」
この機会に、破棄してもらった方が良い。
それが、私の選択だった。
「良いきっかけだ、ってことかな」
「ええ。ただ、やっぱり、お父様は怖いけど……」
海斗に、婚約破棄を申し渡された。
そう真実を告げた時、父はどんな顔をして、どんなことを言うのか。
それを想像すると、このまま何も言わずにおきたい気持ちも芽生えてくる。
「お父様は、藤乃には厳しいからね」
「……お兄様には、違うの?」
兄は、首を縦に振る。父似の癖毛が、くるんと揺れる。
「僕は、自由にやらせてもらっているから……藤乃は、小さい頃から婚約者をあてがわれて、習い事も交友関係も決められて、窮屈そうだなって思っていたよ」
「……そうだったの?」
「そうだよ。藤乃も幸せそうだったから、特に疑問を抱いてこなかったんだよ」
兄に、そんな風に思われていたなんて。
驚いて、すぐには言葉が出なくて。間を持たせるため、私は、紅茶を飲んだ。
なんだか、変に喉が渇いてきた。動揺すると、喉が渇くのだろうか。
「……いいと思う。藤乃がそう決めたなら、僕は応援するよ」
「ありがとう」
「それに、海斗のあの様子と、慧くんといるときの楽しそうな藤乃を見ていたら、その方がいいと思っていたんだよね。正直」
兄は言いながら、ふっ、と軽く笑う。
「そう思っていたなら、教えてくれたら良かったのに」
「どうするのが自分のためになるか、考えて、自分で選ぶことが大切なんだよ。僕が言って、そうしたところで、藤乃のためにはならないから」
「……たしかに」
自分で考えて、選ぶまで、これだけの時間がかかった。私にとっては、難しい選択肢であり、兄のアドバイスがあったら、きっとそれに従っていた。
今回私は、自分で考えて、婚約破棄を選んだ。だから心がこんなにすっきりして、納得している。
もし兄に言われて決めていたら、自分の気持ちは整理できず、本当に良いのか迷っていたかもしれない。
「お父様は、今夜も少し早いみたいだよ」
「……!」
兄を見ると、彼は薄く微笑んだまま、頷く。
父は帰りが遅い。会って話せる機会など、早々ない。
善は急げ。
決めたのなら、早く言えと、そういうことなのだ。
「海斗さんに言われたことを、そのまま伝えれば良いのよね」
「そうだよ。事実を伝えれば、お父様でも、きっとわかってくれるから」
夕食に呼ばれ、私と兄は、父への報告の仕方を相談しながら廊下を歩いた。
「本当に、わかってくれるのかしら……」
海斗のことを、父は気に入っている。不安になる私を、兄は「大丈夫だよ」と励ましてくれた。
もっと廊下が長ければいいのに、こういうときばかりは、すぐに目的地に着いてしまう。
兄が扉に手をかけ、先に中に入った。
「おかえり、お父様」
「ああ、桂一。ただいま」
私も、その後に続く。
「お父様、おかえりなさい」
「何だ、ふたりで来たのか」
「やっぱり、4人揃った食卓って、幸せね」
喜んでいるのは、母である。
目の前には、トマトの冷製スープが運ばれてくる。鮮やかな赤と、オリーブの香りに、夏を感じる。
「さあ、いただきましょう」
笑顔の母の号令で、夕食が始まった。
「夏休みは何か予定はあるのか、桂一は」
「大学の友人と会う予定はあるよ。あとは勉強かな」
「そうか、熱心なことだ」
父が目を細めると、目尻に優しげな皺が浮かぶ。
「僕が学生の頃は、いろいろなアルバイトをしたものだ」
「そうなの? 僕もしてみたいと思ってるんだよね」
「大いにやりなさい。桂一はこの家を継ぐのだから、様々な経験を積んで、多面的に物を見られるようにならないとな」
ステーキに、ワイン。父の好きな組み合わせだ。厚い肉は美味しいけれど、なかなか、食べ切るのには苦労する。
もちろん、私はワインは飲まない。代わりに、冷たい水を、ひと口飲んだ。
「学生時代は、いろいろなアルバイトをしていた、と言っていたものね」
母の言葉に、父は頷く。
「ああ。懐かしいな。家庭教師はもちろん、寿司職人の手伝いをしたり、新聞記者の真似事をしたり、ね」
「へえ。面白そうだね」
「だろう? 時代が変わったから、また面白いアルバイトもあるだろう。いろいろな経験を積みなさい、桂一は」
父はまた、ワインを飲んだ。頬が薄らと赤くなる、上機嫌の父。父はいつも、昔話を楽しそうにする。
「ああ、懐かしい。千堂と一緒にアルバイトをしたこともあったよ。試験監督だったかな。あいつ、歩き回っているのに、半分眠っててさ……」
母が口元を押さえ、ふふ、と控えめな笑いを漏らした。
千堂とは、海斗の父のことだ。私の父は、海斗の父と、昔から仲が良い。
兄の方に目をやると、視線が合った。兄は頷いて、父の方に視線を向ける。
言うなら、このタイミングなのかも。
兄の合図をそう捉え、私は口を開いた。
「お父様、その」
「ああ、藤乃のアルバイトについては、僕たちだけじゃなくて、千堂とも相談しないといけないね」
言おうとした言葉は、父に遮られる。
父は腕を組み、うんうん、と嬉しそうに頷く。
「千堂家が許すなら、僕は藤乃も、いろいろな世界を知るといいと思うよ」
私は、下唇を軽く噛んだ。
こんな風に言われると、私は、それ以上言いにくくなる。
兄を見た。
眉尻を下げた兄は、私と目を合わせ、頷く。
言わなきゃ。
私は、水をもうひと口飲む。飲み込んで、口を開いた。
「その、海斗さんのことで、報告があるの」
「報告……? なんだい、嬉しい報告かな。いやあ、プロポーズにはまだ早いよ。気が早いなあ、海斗くんは」
気が早いのは、父のほうだ。
父は残りのワインをひと口で飲み干し、「めでたいからもう一杯」と頼む。
「そうなの? 藤乃ちゃん」
「違うわ」
母が聞いてくれたおかげで、続きを話すきっかけを得る。
「この間、海斗さんに言われたの。私との婚約は、破棄したい、って」
「ん?」
新しくワインを注がれたグラスを、くるくる回していた父の手が、止まる。
嬉しそうに細めていた目を、軽く見開く。
「海斗さんには、他に思いを寄せる方がいるみたい」
「藤乃ちゃん、それって、どういう……」
「私は海斗さんに、そう言われたの」
言った。
言ってしまった。
気づけば椅子から軽く腰が浮いていて、私は椅子に座り直す。
喉が渇くのは、気持ちが揺れているからだろうか。また、水を口に含んだ。
「なんだって? 海斗くんが……」
「他に好きな人がいるから、私との婚約は破棄したいって」
父は、グラスをテーブルに置く。
はあ、と深いため息。
私は、腹部がすっと冷たくなるのを感じた。
怖い。
なんと言われるのか。
兄を見ると、また目を合わせてくれる。真剣な眼差し。私は、テーブルの下で両手を握りしめた。
「……やめてくれよ、藤乃、訳のわからない冗談は」
暫しの沈黙の後、低く掠れた声で、父はそう言った。
「冗談じゃないわ」
「うーん……もし婚約を破棄するなら、千堂が僕に言うはずだよ。そうだ、何も言われていないし……海斗くんほどの優秀な子が、そんなこと、突然言い出す訳ないだろう。はは、肝が冷えたよ。本当、冗談にならない冗談だね」
父は、だんだんと饒舌になる。最後には、私の言ったことが、笑い飛ばされた。
「だから、冗談じゃ……」
「しつこいよ、藤乃。海斗くんのどこが、気に入らないんだい?」
その鋭い目が、私を射抜く。
どこが気に入らないって、私を気にもかけてくれないところだ。相手にされたことなんて、ほとんどなかった。なのに今は、早苗を気にかけ、愛情を注いでいる。
それが、気に入らないと言えば、気に入らない。
しかしそんなことを言っても、信じてもらえないだろう。父の目つきは、そう思わせるには充分だった。
「お父様、藤乃の言っていることは本当だよ。……僕も見た。海斗が、他の女の子と睦まじくしているのを」
言葉が出なくなった私に、兄がそう助け舟を出してくれた。
父の視線が、兄に向く。重苦しくなった肩が、少し楽になる。
「桂一まで……ああ、ふたりで僕を騙そうとしているんだね。だから、さっきふたりで来たんだろう。全く、仲が良くて困った兄妹だよ」
兄が言っても、信じてもらえないなんて。
私と兄は、目配せをする。
「僕たちは、お父様に嘘なんてつかないよ」
「桂一は、藤乃の言う、婚約破棄の話は海斗くんから聞いたのか?」
「……彼からは、聞いていないけど」
兄の声のトーンが、やや落ちる。父は、「ほらな」と言ってワインを半分ほど飲んだ。
「海斗くんぐらいの年頃の青年なら、女友達のひとりやふたりいるだろう。そのくらいのことに目くじらを立てて、どうするんだ」
「あなたも、そうだったの?」
「ん? 学生の頃はね。君と出会ってからは、君一筋だよ」
口を挟んだ母にそう甘い言葉を囁く父。ずいぶん、お酒が回っているようだ。
こんなに酔った父に、何を言っても無駄かもしれない。
「……それに。もし万が一、婚約破棄をしたいなんて海斗くんが言うとしたら、そう言わせる理由が藤乃にあるんだろう」
「あなた、飲みすぎじゃない? 言い過ぎよ」
「うん? そうかな」
母が嗜めてくれたものの、父は首を傾げ、またワインを口にする。
こうなる気がしていた。
私は、肩を落とす。
だから父に言うのが嫌だったのだ。
婚約破棄を言い出したのは海斗なのに、私が悪いことになる。
非があるのは、早苗にうつつを抜かしている、海斗なのに。
あるいは、彼を好きでもないのに海斗のルートに入り続けている、早苗なのに。
「……ごめん。思った以上に、手強かったね、お父様は」
「ううん、お兄様、ありがとう。ひとりじゃ絶対、言えなかったわ」
「だけど、信じてももらえなかったよ」
食事を終え、兄とふたりで廊下を歩きながら、反省を交わす。
「わかってくれると思ったんだけどな……」
「……」
「……藤乃は、そう思ってなかった?」
私は、頷く。
父のこの反応は、さほど意外ではなかった。
藤の花言葉は、歓迎。
私が歓迎されたのは、女の子だから、海斗との婚約ができるから。
海斗との婚約がなくなった私は、父に歓迎もされないのだ。
「そっか……」
兄はそう言ったきり、口を閉じる。
絨毯の上を歩く、微かな足音。
父が事実を認めてくれなくても、海斗に婚約破棄を申し渡されていることには、変わりがない。
私が、そのまま婚約を破棄してしまいたいことにも、変わりはない。
「このままだと、どうなるのかしら」
「そうだね、向こうの家から何も言って来ていないのが不思議だけど……何も知らないか、海斗くんの申し出を、拒否しているか。このまま放っておいたら、そのままになるかもね」
放置していたら、婚約はそのままになる。
少し前の私なら、それを喜んでいた。
「……嫌だわ、そんなの」
今の私は、もう、婚約は破棄すると決めたのだ。それこそが、自分のためになると、確信している。
「だよね。……それにしても、厄介だな。あんなに海斗のことを、信頼しているなんて……」
「私のことは信じてくれないのに」
「信じていないわけでもないと思うけど……人間、目で見ていないものは、信じられないのかなあ」
兄が呟く。
「僕も、あの水族館の日、海斗たちに会っていなかったら、ここまで言わなかったかもしれない」
「……そっか」
私たちの足取りは、扉の前で止まる。私の部屋だ。
私は、兄を見上げる。兄の、悲痛な面持ち。彼は、こんな表情も様になる。
「お兄様、協力してくれてありがとう」
「藤乃はどうするの? これから……」
「進む方向は、変わらないわ」
好きでもない海斗との婚約は、このまま破棄する。それが、私の決めた方向。
「お父様も、自分の目で見たら、信じてくれるかしら」
「……きっと」
兄は、自信なさげに応える。
うまくいくかわからない。けれど、言っても駄目なら、他に方法は思いつかない。
「私、ちょっと考えてみる」
まだその具体的なイメージは湧かないけれど、目指すべきゴールはわかった。
「また相談して」
「もちろん。ありがとう、お兄様」
「こちらこそ……ごめんね、藤乃」
「謝らないで」
就寝の挨拶を交わし、私は兄と別れて自室に入る。
海斗と早苗の親しい様子を、父が目の当たりにしたら。
そうしたら、私の話を信じてくれて、婚約破棄が実現する、かもしれない。
問題は、どこで見せるか、だ。
そう都合よく、父の目の前で、ふたりが睦まじく振る舞うなんてことが。
「……! イベント、だわ」
ひらめいて、思わず口に出る。
「お嬢様? 今、何か……」
「いえ、何でもないわ、シノ。ごめんなさい」
早苗は、どう行動しても、海斗とのイベントが起きてしまうと言っていた。
海斗と早苗のイベントを、起こせばいいのだ。
父の、目の前で。
私が上手く立ち回れば、それはきっと、実現できる。
「お嬢様、何だか今日は、……エネルギーに溢れていますね」
「そうかしら」
「ええ。リラックスできるハーブティーを、お淹れしました」
「ありがとう、シノ」
シノが淹れてくれた紅茶を、口に運ぶ。夏の草のような、爽やかで落ち着く香り。
早苗は海斗のルートから樹のルートに入りたがっているけれど、申し訳ないが、それは叶えてあげられない。
むしろ、彼女の思惑を崩し、海斗とのイベントを発生させ続けるのだ。きっとどこかで、父に見せられるタイミングが、来るはずである。
落ち着くはずのハーブティーを飲んでも、私の思考は、めまぐるしく回転し続けていた。
「はい、また明日、慧先輩」
この挨拶ができなくなるなんて、やっぱり、嫌だ。
いつもの挨拶を交わし、私は図書室を出る。
婚約破棄を選ぼうと決めた心は、妙にすっきりとしていた。もっと辛かったり、重かったり、迷ったりすると思っていた。
こんなに心が楽なのだから、やっぱりこれが、正解なんだ。
軽い心が、自分の選択が正しいことを、裏付けてくれる。
人気のない廊下を進む足音は、今日も柔らかく、温かい。
「……お兄様?」
「藤乃? いいよ、入って」
ひと足先に夏休みに入った兄は、最近は、よく家にいる。帰宅してすぐ、兄の部屋をノックすると、内側から扉が開く。
「どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
扉を開けてくれたのは、兄の従者である。私とシノのように、懇意にしている従者は、兄にもいる。
兄は勉強していたようで、机に開かれた参考書の表紙を、ぱたりと閉じた。
兄に向かい合うようにして腰掛けると、目の前に、紅茶が用意される。
「突然押しかけてごめんなさい」
「何、言ってるの。いつ来てもいいんだよ。……それで、どうしたの?」
兄は、紅茶のカップを皿から持ち上げる。
カチ、という淡い音。陶器と陶器の擦れる音は、密やかで、涼やかだ。
「お兄様に言われた、2択のことなの」
兄はそのまま、カップを皿に戻す。
紅茶は、柑橘の香りがする甘いものだった。ひと口含んで唇を湿らせ、それから、兄を見る。
「……私、海斗さんとの婚約は、このまま、破棄したいと思って」
「……ふうん。どうして?」
兄は、頬杖をつき、薄く微笑む。
「気付いたの。私は、海斗さんのことを好きなのではなくて、お父様に見限られるのが怖いだけだ、って。そのために、好きでもない人と婚約して、慧先輩にも会えなくなるくらいなら……」
この機会に、破棄してもらった方が良い。
それが、私の選択だった。
「良いきっかけだ、ってことかな」
「ええ。ただ、やっぱり、お父様は怖いけど……」
海斗に、婚約破棄を申し渡された。
そう真実を告げた時、父はどんな顔をして、どんなことを言うのか。
それを想像すると、このまま何も言わずにおきたい気持ちも芽生えてくる。
「お父様は、藤乃には厳しいからね」
「……お兄様には、違うの?」
兄は、首を縦に振る。父似の癖毛が、くるんと揺れる。
「僕は、自由にやらせてもらっているから……藤乃は、小さい頃から婚約者をあてがわれて、習い事も交友関係も決められて、窮屈そうだなって思っていたよ」
「……そうだったの?」
「そうだよ。藤乃も幸せそうだったから、特に疑問を抱いてこなかったんだよ」
兄に、そんな風に思われていたなんて。
驚いて、すぐには言葉が出なくて。間を持たせるため、私は、紅茶を飲んだ。
なんだか、変に喉が渇いてきた。動揺すると、喉が渇くのだろうか。
「……いいと思う。藤乃がそう決めたなら、僕は応援するよ」
「ありがとう」
「それに、海斗のあの様子と、慧くんといるときの楽しそうな藤乃を見ていたら、その方がいいと思っていたんだよね。正直」
兄は言いながら、ふっ、と軽く笑う。
「そう思っていたなら、教えてくれたら良かったのに」
「どうするのが自分のためになるか、考えて、自分で選ぶことが大切なんだよ。僕が言って、そうしたところで、藤乃のためにはならないから」
「……たしかに」
自分で考えて、選ぶまで、これだけの時間がかかった。私にとっては、難しい選択肢であり、兄のアドバイスがあったら、きっとそれに従っていた。
今回私は、自分で考えて、婚約破棄を選んだ。だから心がこんなにすっきりして、納得している。
もし兄に言われて決めていたら、自分の気持ちは整理できず、本当に良いのか迷っていたかもしれない。
「お父様は、今夜も少し早いみたいだよ」
「……!」
兄を見ると、彼は薄く微笑んだまま、頷く。
父は帰りが遅い。会って話せる機会など、早々ない。
善は急げ。
決めたのなら、早く言えと、そういうことなのだ。
「海斗さんに言われたことを、そのまま伝えれば良いのよね」
「そうだよ。事実を伝えれば、お父様でも、きっとわかってくれるから」
夕食に呼ばれ、私と兄は、父への報告の仕方を相談しながら廊下を歩いた。
「本当に、わかってくれるのかしら……」
海斗のことを、父は気に入っている。不安になる私を、兄は「大丈夫だよ」と励ましてくれた。
もっと廊下が長ければいいのに、こういうときばかりは、すぐに目的地に着いてしまう。
兄が扉に手をかけ、先に中に入った。
「おかえり、お父様」
「ああ、桂一。ただいま」
私も、その後に続く。
「お父様、おかえりなさい」
「何だ、ふたりで来たのか」
「やっぱり、4人揃った食卓って、幸せね」
喜んでいるのは、母である。
目の前には、トマトの冷製スープが運ばれてくる。鮮やかな赤と、オリーブの香りに、夏を感じる。
「さあ、いただきましょう」
笑顔の母の号令で、夕食が始まった。
「夏休みは何か予定はあるのか、桂一は」
「大学の友人と会う予定はあるよ。あとは勉強かな」
「そうか、熱心なことだ」
父が目を細めると、目尻に優しげな皺が浮かぶ。
「僕が学生の頃は、いろいろなアルバイトをしたものだ」
「そうなの? 僕もしてみたいと思ってるんだよね」
「大いにやりなさい。桂一はこの家を継ぐのだから、様々な経験を積んで、多面的に物を見られるようにならないとな」
ステーキに、ワイン。父の好きな組み合わせだ。厚い肉は美味しいけれど、なかなか、食べ切るのには苦労する。
もちろん、私はワインは飲まない。代わりに、冷たい水を、ひと口飲んだ。
「学生時代は、いろいろなアルバイトをしていた、と言っていたものね」
母の言葉に、父は頷く。
「ああ。懐かしいな。家庭教師はもちろん、寿司職人の手伝いをしたり、新聞記者の真似事をしたり、ね」
「へえ。面白そうだね」
「だろう? 時代が変わったから、また面白いアルバイトもあるだろう。いろいろな経験を積みなさい、桂一は」
父はまた、ワインを飲んだ。頬が薄らと赤くなる、上機嫌の父。父はいつも、昔話を楽しそうにする。
「ああ、懐かしい。千堂と一緒にアルバイトをしたこともあったよ。試験監督だったかな。あいつ、歩き回っているのに、半分眠っててさ……」
母が口元を押さえ、ふふ、と控えめな笑いを漏らした。
千堂とは、海斗の父のことだ。私の父は、海斗の父と、昔から仲が良い。
兄の方に目をやると、視線が合った。兄は頷いて、父の方に視線を向ける。
言うなら、このタイミングなのかも。
兄の合図をそう捉え、私は口を開いた。
「お父様、その」
「ああ、藤乃のアルバイトについては、僕たちだけじゃなくて、千堂とも相談しないといけないね」
言おうとした言葉は、父に遮られる。
父は腕を組み、うんうん、と嬉しそうに頷く。
「千堂家が許すなら、僕は藤乃も、いろいろな世界を知るといいと思うよ」
私は、下唇を軽く噛んだ。
こんな風に言われると、私は、それ以上言いにくくなる。
兄を見た。
眉尻を下げた兄は、私と目を合わせ、頷く。
言わなきゃ。
私は、水をもうひと口飲む。飲み込んで、口を開いた。
「その、海斗さんのことで、報告があるの」
「報告……? なんだい、嬉しい報告かな。いやあ、プロポーズにはまだ早いよ。気が早いなあ、海斗くんは」
気が早いのは、父のほうだ。
父は残りのワインをひと口で飲み干し、「めでたいからもう一杯」と頼む。
「そうなの? 藤乃ちゃん」
「違うわ」
母が聞いてくれたおかげで、続きを話すきっかけを得る。
「この間、海斗さんに言われたの。私との婚約は、破棄したい、って」
「ん?」
新しくワインを注がれたグラスを、くるくる回していた父の手が、止まる。
嬉しそうに細めていた目を、軽く見開く。
「海斗さんには、他に思いを寄せる方がいるみたい」
「藤乃ちゃん、それって、どういう……」
「私は海斗さんに、そう言われたの」
言った。
言ってしまった。
気づけば椅子から軽く腰が浮いていて、私は椅子に座り直す。
喉が渇くのは、気持ちが揺れているからだろうか。また、水を口に含んだ。
「なんだって? 海斗くんが……」
「他に好きな人がいるから、私との婚約は破棄したいって」
父は、グラスをテーブルに置く。
はあ、と深いため息。
私は、腹部がすっと冷たくなるのを感じた。
怖い。
なんと言われるのか。
兄を見ると、また目を合わせてくれる。真剣な眼差し。私は、テーブルの下で両手を握りしめた。
「……やめてくれよ、藤乃、訳のわからない冗談は」
暫しの沈黙の後、低く掠れた声で、父はそう言った。
「冗談じゃないわ」
「うーん……もし婚約を破棄するなら、千堂が僕に言うはずだよ。そうだ、何も言われていないし……海斗くんほどの優秀な子が、そんなこと、突然言い出す訳ないだろう。はは、肝が冷えたよ。本当、冗談にならない冗談だね」
父は、だんだんと饒舌になる。最後には、私の言ったことが、笑い飛ばされた。
「だから、冗談じゃ……」
「しつこいよ、藤乃。海斗くんのどこが、気に入らないんだい?」
その鋭い目が、私を射抜く。
どこが気に入らないって、私を気にもかけてくれないところだ。相手にされたことなんて、ほとんどなかった。なのに今は、早苗を気にかけ、愛情を注いでいる。
それが、気に入らないと言えば、気に入らない。
しかしそんなことを言っても、信じてもらえないだろう。父の目つきは、そう思わせるには充分だった。
「お父様、藤乃の言っていることは本当だよ。……僕も見た。海斗が、他の女の子と睦まじくしているのを」
言葉が出なくなった私に、兄がそう助け舟を出してくれた。
父の視線が、兄に向く。重苦しくなった肩が、少し楽になる。
「桂一まで……ああ、ふたりで僕を騙そうとしているんだね。だから、さっきふたりで来たんだろう。全く、仲が良くて困った兄妹だよ」
兄が言っても、信じてもらえないなんて。
私と兄は、目配せをする。
「僕たちは、お父様に嘘なんてつかないよ」
「桂一は、藤乃の言う、婚約破棄の話は海斗くんから聞いたのか?」
「……彼からは、聞いていないけど」
兄の声のトーンが、やや落ちる。父は、「ほらな」と言ってワインを半分ほど飲んだ。
「海斗くんぐらいの年頃の青年なら、女友達のひとりやふたりいるだろう。そのくらいのことに目くじらを立てて、どうするんだ」
「あなたも、そうだったの?」
「ん? 学生の頃はね。君と出会ってからは、君一筋だよ」
口を挟んだ母にそう甘い言葉を囁く父。ずいぶん、お酒が回っているようだ。
こんなに酔った父に、何を言っても無駄かもしれない。
「……それに。もし万が一、婚約破棄をしたいなんて海斗くんが言うとしたら、そう言わせる理由が藤乃にあるんだろう」
「あなた、飲みすぎじゃない? 言い過ぎよ」
「うん? そうかな」
母が嗜めてくれたものの、父は首を傾げ、またワインを口にする。
こうなる気がしていた。
私は、肩を落とす。
だから父に言うのが嫌だったのだ。
婚約破棄を言い出したのは海斗なのに、私が悪いことになる。
非があるのは、早苗にうつつを抜かしている、海斗なのに。
あるいは、彼を好きでもないのに海斗のルートに入り続けている、早苗なのに。
「……ごめん。思った以上に、手強かったね、お父様は」
「ううん、お兄様、ありがとう。ひとりじゃ絶対、言えなかったわ」
「だけど、信じてももらえなかったよ」
食事を終え、兄とふたりで廊下を歩きながら、反省を交わす。
「わかってくれると思ったんだけどな……」
「……」
「……藤乃は、そう思ってなかった?」
私は、頷く。
父のこの反応は、さほど意外ではなかった。
藤の花言葉は、歓迎。
私が歓迎されたのは、女の子だから、海斗との婚約ができるから。
海斗との婚約がなくなった私は、父に歓迎もされないのだ。
「そっか……」
兄はそう言ったきり、口を閉じる。
絨毯の上を歩く、微かな足音。
父が事実を認めてくれなくても、海斗に婚約破棄を申し渡されていることには、変わりがない。
私が、そのまま婚約を破棄してしまいたいことにも、変わりはない。
「このままだと、どうなるのかしら」
「そうだね、向こうの家から何も言って来ていないのが不思議だけど……何も知らないか、海斗くんの申し出を、拒否しているか。このまま放っておいたら、そのままになるかもね」
放置していたら、婚約はそのままになる。
少し前の私なら、それを喜んでいた。
「……嫌だわ、そんなの」
今の私は、もう、婚約は破棄すると決めたのだ。それこそが、自分のためになると、確信している。
「だよね。……それにしても、厄介だな。あんなに海斗のことを、信頼しているなんて……」
「私のことは信じてくれないのに」
「信じていないわけでもないと思うけど……人間、目で見ていないものは、信じられないのかなあ」
兄が呟く。
「僕も、あの水族館の日、海斗たちに会っていなかったら、ここまで言わなかったかもしれない」
「……そっか」
私たちの足取りは、扉の前で止まる。私の部屋だ。
私は、兄を見上げる。兄の、悲痛な面持ち。彼は、こんな表情も様になる。
「お兄様、協力してくれてありがとう」
「藤乃はどうするの? これから……」
「進む方向は、変わらないわ」
好きでもない海斗との婚約は、このまま破棄する。それが、私の決めた方向。
「お父様も、自分の目で見たら、信じてくれるかしら」
「……きっと」
兄は、自信なさげに応える。
うまくいくかわからない。けれど、言っても駄目なら、他に方法は思いつかない。
「私、ちょっと考えてみる」
まだその具体的なイメージは湧かないけれど、目指すべきゴールはわかった。
「また相談して」
「もちろん。ありがとう、お兄様」
「こちらこそ……ごめんね、藤乃」
「謝らないで」
就寝の挨拶を交わし、私は兄と別れて自室に入る。
海斗と早苗の親しい様子を、父が目の当たりにしたら。
そうしたら、私の話を信じてくれて、婚約破棄が実現する、かもしれない。
問題は、どこで見せるか、だ。
そう都合よく、父の目の前で、ふたりが睦まじく振る舞うなんてことが。
「……! イベント、だわ」
ひらめいて、思わず口に出る。
「お嬢様? 今、何か……」
「いえ、何でもないわ、シノ。ごめんなさい」
早苗は、どう行動しても、海斗とのイベントが起きてしまうと言っていた。
海斗と早苗のイベントを、起こせばいいのだ。
父の、目の前で。
私が上手く立ち回れば、それはきっと、実現できる。
「お嬢様、何だか今日は、……エネルギーに溢れていますね」
「そうかしら」
「ええ。リラックスできるハーブティーを、お淹れしました」
「ありがとう、シノ」
シノが淹れてくれた紅茶を、口に運ぶ。夏の草のような、爽やかで落ち着く香り。
早苗は海斗のルートから樹のルートに入りたがっているけれど、申し訳ないが、それは叶えてあげられない。
むしろ、彼女の思惑を崩し、海斗とのイベントを発生させ続けるのだ。きっとどこかで、父に見せられるタイミングが、来るはずである。
落ち着くはずのハーブティーを飲んでも、私の思考は、めまぐるしく回転し続けていた。
11
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
死にたがりの黒豹王子は、婚約破棄されて捨てられた令嬢を妻にしたい 【ネコ科王子の手なずけ方】
鷹凪きら
恋愛
婚約破棄されてやっと自由になれたのに、今度は王子の婚約者!?
幼馴染の侯爵から地味で華がない顔だと罵られ、伯爵令嬢スーリアは捨てられる。
彼女にとって、それは好機だった。
「お父さま、お母さま、わたし庭師になります!」
幼いころからの夢を叶え、理想の職場で、理想のスローライフを送り始めたスーリアだったが、ひとりの騎士の青年と知り合う。
身分を隠し平民として働くスーリアのもとに、彼はなぜか頻繁に会いにやってきた。
いつの間にか抱いていた恋心に翻弄されるなか、参加した夜会で出くわしてしまう。
この国の第二王子としてその場にいた、騎士の青年と――
※シリーズものですが、主人公が変わっているので単体で読めます。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
『婚約破棄された瞬間、前世の記憶が戻ってここが「推し」のいる世界だと気づきました。恋愛はもう結構ですので、推しに全力で貢ぎます。
放浪人
恋愛
「エリザベート、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで突きつけられた婚約破棄。その瞬間、公爵令嬢エリザベートは前世の記憶を取り戻した。 ここは前世で廃課金するほど愛したソシャゲの世界。 そして、会場の隅で誰にも相手にされず佇む第三王子レオンハルトは、不遇な設定のせいで装備が買えず、序盤で死亡確定の「最愛の推し」だった!?
「恋愛? 復縁? そんなものはどうでもいいですわ。私がしたいのは、推しの生存ルートを確保するための『推し活(物理)』だけ!」
エリザベートは元婚約者から慰謝料を容赦なく毟り取り、現代知識でコスメ事業を立ち上げ、莫大な富を築く。 全ては、薄幸の推しに国宝級の最強装備を貢ぐため!
「殿下、新しい聖剣です。使い捨ててください」 「待て、これは国家予算レベルだぞ!?」
自称・ATMの悪役令嬢×不遇の隠れ最強王子。 圧倒的な「財力」と「愛」で死亡フラグをねじ伏せ、無能な元婚約者たちをざまぁしながら国を救う、爽快異世界マネー・ラブファンタジー!
「貴方の命も人生も、私が全て買い取らせていただきます!」
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした
Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。
同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。
さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、
婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった……
とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。
それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、
婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく……
※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』
に出てくる主人公の友人の話です。
そちらを読んでいなくても問題ありません。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる