ケモホモ短編

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プライベート・ズー

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 この会社に入ってよかったことは、業務内容や給料もさることながら、なんといっても獣人比率が高いということだ。いやむしろ、それを目当てに会社を選んだといっても過言ではない。こんなことを言ったらきっと真剣に仕事に取り組むひとからは非難轟々だろうけど、ぼくにとってのやりがいがソレだったということだ。
 パチン。
 無味乾燥な書類をホッチキスでとめる。本来なら気にもとめないタダの事務作業。それなのに、それなのにちょっとだけワクワクしてしまうのは、それがオオカミを模したモノであるからだろう。ほんわかとデフォルメされたオオカミ型のそれは、紙の束にガブリと噛み付いて小気味良い音を立てた。それだけで思わず笑みが溢れてしまう。もちろん芯を入れるケースだってオオカミだし、定規やペンケースといったちょっとした小物も、文房具屋や通販サイトをあちこち探し回って見つけた珠玉のオオカミグッズなのだ。
 ただ、どうしてか、悲しいかなオオカミの恋人はおろか友人さえぼくにはいない。モノなんかでなく実際に触れられる存在がいるというのに、どうしても当のオオカミを目の前にすると気恥ずかしさものが先行してしまうのだ。それは、オオカミという存在を神聖視するあまりの副作用なのかもしれない。オオカミ以外の獣人にもいくばくかの憧れはあるし、非常に心惹かれるのだけれど。自分でもどうしてこうもオオカミに執着してしまうのかがよくわからない。幼少のころの思い出が関係していたりするのだろうか。
「おっ。キミは……吉川くん、だな。オオカミ好きなのかい?」
 ぐるぐると自問自答を繰り返しているところに名前を呼ばれてギョッとした。顔を上げた先には、ぼくの社員証を覗き込む顔。オオカミ、もとい総務部の大上部長。よりにもよってこんなタイミングで。机の上ではオオカミグッズの博覧会が開催中なのだ。
「えっ、ええと、その、犬とか……好きなんですよね」
 嘘つけ。シベリアンハスキーだとかマラミュートだと言い張れなくもないが、これは誰が見てもオオカミ好きだろう。だけどいい歳をした男がこんな子供っぽいモノを使っているのに恥ずかしさを覚えたし、何よりも当のオオカミの前だぞ。ぼくに人並みの度胸があれば「大好きです!」なんて言って好感度を上げられただろう。オマケに打算的に考えるなら、大上部長とは部署は違うものの彼は所謂お偉いさんってヤツだから仲良くしておいて損はない。オオカミとお近づきになれて、あわよくば会社でのぼくのキャリアパスにも好機をもたらしかねない絶好のタイミング。
「そっ、そうか」
 その千載一遇のチャンスを、今後の人生で二度と巡ってこないかもしれない機会をふいにしようとしている。
「オオカミの、どんなところが好きなんだっ!?」
 その大声に他の課員が訝しげに視線を寄越す。蜘蛛の糸が垂れてきた嬉しさよりも、課長の咳払いに居心地の悪さを覚えてしまう。みんながぼく、いやぼくたちに注目している。納期に追われているいま、悠長におしゃべりしている暇なんてないのだ。けれども、下っ端のぼくならともかくとして、このオオカミを諫める役職はこの場にはいない。
 てか、こんなに食い気味でこられるなんて予想外だった。白けた周りの様子なんて目にも入らないのか、目をキラキラ輝かせて、なんなら尻尾まで振りかねない勢いでぼくが口を開くのを待ちわびている。ううむ、これは困ったぞ。
「あの、すみません、もしよかったらお昼休みとかに……」
「わかった! キミは弁当か? ん、違う? なら、一緒に行こうな! オススメのところ教えてやる!」
 部長になるようなひとって、こういう強引さとかちょっと風変わりなところがないと務まらないのだろうか。

 昼休みのチャイムと共に連れ去られたぼくがたどり着いたのは、普段なら素通りするような、いや、その存在に気づきもしなかった店。
 何度か行ったことのあるカツ丼屋の入っているビルの地下。雑居ビルの中にしては高級そうな面構えをしているしゃぶしゃぶのお店。
「ここのランチは結構リーズナブルでな。それに個室だから静かだし」
 いやいやいや、下手したら一週間分のお昼代だって。財布の中が心許なくなってしまう。どうしよう、一番安いものならなんとかなるか。てか、普段からこんなのを食べられるくらいに貰ってるなんて、羨ましいを通り越してため息が出てしまう。
「お? 心配しなくていいぞ。もちろん私が出すからな」
 心配事を見透かされたみたいで顔から火が出そうだった。そりゃあ、こういう場面ではむしろぼくが「自分の分は自分で出します」なんていうと彼の顔に泥を塗りかねない。ビジネスマナーとしては奢ってもらうのが正解なのだ。だけど、こういうのは慣れない。誘ってきたのは彼の方なのだからこうなって然るべきなのに、誰かに甘えることに罪悪感を覚えてしまう。
「特選和牛のヤツ、二つ。片方はネギ抜きで頼む」
 案内された席でメニュー表の中から一番安いものを探している間にオーダーが通されてしまった。なにも悪いことなんてしていないはずなのに、込み上げてくる後ろめたさ。
「あ、あの、すみません……」
「で。どんなところが好きなんだ!?」
 テーブルに組み込まれたIHヒーターの上で二つの小鍋が加熱されていく。そうだった。わざわざぼくを呼び出してまで問いただしたいこと。オオカミの好きなところ。
「え、ええとですね、なんといっても、かっ、格好よくて」
 おい、なんだそれ。そりゃあとびきり格好いいけどさ。もっとドコがどんな風にってのがあるだろう。こういうときは三段論法とかPREP法だとかを駆使してプレゼンするんだって習っただろう。
「あっ、でも、可愛いところもあって、愛嬌があるんですよね」
 焦れば焦るほどに語彙力が失われていく。オオカミの魅力は、突き詰めていうならば格好よくて可愛い。それは間違いない。だけどさ、もうちょっとあるだろう。なにか自分の体験談に絡めるとか。
「あ、そうだ。先週、オオカミのいる動物園に行ったんですが――」
 そこまでいってから、とんでもない地雷を踏んだことに気がついた。大上部長の求めているものは、オオカミ獣人の好きなトコロなのだ。似て非なるもの。もしぼくが逆の立場で「チンパンジーって可愛いよね」なんていわれたらちょっと気を悪くしてしまうだろう。どっちが優れているとか劣っているということでなく、姿形は似ていてもオオカミとオオカミ獣人は別種の存在なのだ。
「おお! そうか! そっちも好きなのか!」
 ふつふつと湯気を立て始めた小鍋がひっくり返りそうな勢いで前のめりになる。いや、危ないって。毛が湿っちゃうって。ともあれ、機嫌を損ねることはなかったらしいことにホッと胸を撫で下ろす。
「じゃじゃっ、じゃあっ、今度の土曜に動物園、くるかっ!?」
 実際問題、嬉しい誘いではある。うん。嬉しい。憧れのオオカミ獣人と動物園でオオカミを見れるなんて、盆と正月が一緒に来たようだ。だけど、だけどさ、なんでこんなに食い気味にワケ? しかも興奮のあまりちょっと日本語おかしくなっちゃってるし。部署も違うほとんど接点のない自分なんかに何故。別に裏があるとか疑っているわけではないのだが、身に覚えのないところに差し向けられた好意に不安が募る。
「は、はい。よろこんで」
 ただ少なくとも、ここで断るのは得策ではない。社会人として接待することも必要なのだ。
「いよっしゃああ! 絶対だからな、な!」
 大上部長、もうちょっとクールなイメージあったんだけどなあ。

「あの、えーっと。おじゃま、します?」
 待ちに待った土曜日。駅前で待ち合わせて、お互いに約束の時間よりも三十分も早く合流した。それから促されるままにしてたどり着いた先にあったのは、大上の表札がかかったマンションの一室。つまり、大上部長のご自宅。忘れ物でも取りに来たのだろうか、それとも予定よりもまだ時間があるからお茶でもして時間を潰そうという魂胆だろうか。
 芳香剤の中に混じるオオカミの香り。体臭や抜け毛といったものは獣人である以上仕方のないものだとは思うが、床にはホコリひとつ落ちていないし匂いだって全然不快ではない。自分の住んでいる部屋が何個入るんだろうという広々とした空間には、彼以外の痕跡を見つけることはできなかった。そうなんだ、独身だったんだ。男の一人暮らしとは思えない整頓された、モデルルームと見まごう部屋に思わずため息が出てしまう。
「ああ、そこのソファーに座ってていいから」
 そこまで言うなりおもむろにジャケットを脱ぎ始める。なんだ、暑いのか? まあ、全身をおおう毛の量を考えれば、エアコンが動き始めたばかりのこの室内では暑苦しいのかもしれない。
「えっ? あ、あの?」
 ジャケットに続き、極めてシームレスな動きでシャツ、そしてズボンが脱ぎ捨てられる。そんなに暑いのだろうか。正直目のやり場に困る。ちょっとばかし、いや結構、だいぶん、オオカミ獣人を、大上部長を性的な目で見てしまっている節があるから。当の本人からすれば男同士だしなんの気兼ねもないのだろうが、こんなのラッキースケベどころの話じゃない。写真、撮りたいなあ。
「さて、と」
 とうとうパンツ一丁になったオオカミがぼくに向き直る。
「大上動物園へ、ようこそ」
 ゆうに一分間以上はポカンと口を開けた間抜け面を晒していたに違いない。
「あー……こ、こういうのは、イヤか?」
「いえ! 大好きです!」
 据え膳食わぬは男の恥ってね。あまりに突拍子もない展開に、これが夢でないことを祈るばかりだった。

「はじめは餌付け体験コーナーな?」
 袋ごと手渡されたビーフジャーキーを差し出しながら、ぼくの頭は再び疑問符で埋め尽くされていた。
 何か重大な思い違いをしてしまったのだろうか。てっきり、ぼくも大上部長もゲイで、エッチをする口実として動物園だとか持ち出しただけだと思っていた。鋭い犬歯が滑らかに食い込んで乾燥肉を切り裂いていく。いまのところはエッチに持ち込めそうな雰囲気なんて微塵もない。これはこれで楽しいし貴重な体験ではあるのだからそういうコトがなくったって別にいいんだけど。
「おいしいですか?」
 返事とばかりに振られる尻尾。咀嚼する際に僅かに捲れ上がる唇の獰猛さとのギャップ。なんだか本当に動物園に来たような錯覚すら覚えてしまう。自分の手からこうして美味しそうに食べてもらえると、それだけで喜びがさざ波になって押し寄せてくる。手料理を振る舞うときの気持ちはこれを何倍にも濃縮した感じなのだろうか。
「あの」
 そう問いかけると、意識的に行ったのか或いは無意識からか、片耳をピコンと跳ねさせて首を傾げた。
「触れ合い体験も、できたり?」
 叶うなら触れてみたい。この手で頭を撫でてみたいし、抱きついたりお腹の毛を触りたい。いつも檻の向こうから眺めるだけの存在。もちろんそれだけでも時間とお金をかけて足を運ぶだけの価値が動物園にはある。けれど、せっかく大上部長とこうして二人っきりの動物園なのだから、ここでしか体験できないことをしてみたい。
「おっ、おお! いいぞ。ほら、撫でてくれよ」
 ずいと突き出されたオオカミの頭。恐る恐る手を伸ばしてのファーストコンタクト。見た目に反して意外と硬めの毛並み。けれども、悪くない。温かい。ぎこちなく撫でる手のひらに押し付けるように頭を動かしながら、オオカミはうっとりと目を細めた。
「おっ、大上、部長」
 これが動物相手であればこんな感情は微塵も抱かなかっただろう。純粋に格好よくて可愛い、憧れの存在。けれども今目の前にいるのは確かにオオカミには間違いはないのだが、獣人なのだ。
「その、パンツは、なんというか、つまりですね。動物的ではないというか」
 賭けだった。これがそういうプレイ、いやプレイといっても性的な要素は微塵もなくてあくまで動物のオオカミになりきるというモノであったとしても、パンツはちょっと不自然だろう。まあモサモサの毛があるのだから脱いだところでお目当ての場所は見れない可能性が高いが、それでも着衣と全裸とでは天と地ほどの差がある。無論、チラリズムというか、あえて着衣していることでのエロスもあるわけだけれども、いまはともかく脱いでほしい。まあ彼だってより動物に近づけるわけだし、ウィンウィンの関係ってヤツ。
「あー、ごほん。ひとつ確認しておきたいんだが。思い違いがあってはいけないからな」
 それまでの雰囲気とは打って変わって部長らしい空気。会議で発言するときのような口ぶり。これは選択肢を誤ったか、それとも――
「単刀直入にきくが、キミは男が好きなのか?」
 ここまでストレートな質問でははぐらかす余地はない。
「はい。ぼくはオオカミが好きで、部長のようなオオカミの男性も、好きです」
 そんなつもりじゃないと、気持ち悪いと罵られるだろうか。会社の廊下ですれ違うときも気まずい思いをする羽目になるのだろうか。まあ、もともと接点なんて皆無だけどさ。
「じゃあ、え、遠慮は、いらないよな。かっ、狩りごっこ、するかっ」
 いや、その設定まだ続くの。狩りごっこってなにさ、肉食動物なら狩りはするんだろうけど。っていやそうじゃなくて。まあ、世の中にはもっと尖った性癖もあるし、否定したり笑ったりはしないけど。こうなったらもうこの状況に入り込んで楽しんだ者勝ちなのかな。

「がっ、ガオー!」
 ソファーの上で押し倒されながら、ぼくの頭の中ではツッコミの嵐が吹き荒んでいた。まずオオカミはガオーなんて鳴かないし、闇雲に人間を襲ったりもしない。彼らは野蛮なイメージで語られることが多いが、高度な知性を持ち合わせていて慎重で臆病な生き物なのだ。
「う、うわーっ、悪いオオカミに食べられちゃう」
 しかしもって、コレをしているのがオオカミ獣人なのだからあまり責めることもできない。こういうのは雰囲気で楽しむものだし、「オオカミはそんなこと言わない」なんて水を差すのはあまりにも野暮だ。だからぼくも、心を無にして三文芝居に興じることにした。それになんたって、こうして大上部長にのしかかられているだけで心拍数が爆上がりなのだ。
 捕らえた獲物を品定めすべく鼻息を荒くしながら匂いを嗅ぎまわり、襲っているというテイの割には丁寧な手つきでボタンを外していく。大上部長からすれば幾度も経験してきたモノのひとつなのかもしれないけれど、ぼくにとってはこれが初めて誰かと身体を重ねる体験。だからもうちょっと、嘘でもいいからロマンチックな手続きを踏んで欲しかった。スポーツ感覚で気持ちいいコトをするのは、ちょっと悲しい。
「クンクン、ココからおいしそうなニオイがするぞ」
 そんな御託を並べながらも、身体はしっかりと反応してしまっている。夢にみたオオカミ獣人とのエッチ。抱きしめて、手を繋いで、キスをしたい。でも今は捕食される獲物なのだから無抵抗でいることが正解だろう。ずり下ろされたパンツから飛び出たちんぽはすでに先走りで先端がぬるいていた。
「やっ、やめっ、そんなところ」
 段々と芝居と本心の境界が曖昧にふやけてしまう。
「肉汁たっぷりで食べ応えがありそうなソーセージだな」
 舌なめずりをしてから、こぼれかけた粘液を舌で掬い取られた。それだけで電撃が走り身体が跳ねる。半開きになった口から吐かれた生温かい息が陰毛をくすぐった。
「ん? コッチにはミートボールもあるぞ」
 すでに着々と射精へ向けた準備が進められ、キュッと縮んだ陰嚢に冷たい鼻が押し当てられる。精巣を探り当てようとグリグリと動く探知機。本当に性器を食べられて去勢されてしまうのではないかという恐怖。
「食べないでっ! お、お願いだからっ」
 意地悪そうに犬歯を見せつけてオオカミは目を細めた。
「そうか。じゃあソーセージのほうならいいよな?」
 がぷっ
 大きく口が開かれたかと思った次の瞬間、ぼくの大事なトコロは丸呑みにされていた。
「ちがっ! ソーセージじゃないからっ! ちんちんだからぁっ!!」
 ぐぷっ、ぐぶぶっ、じゅっぷ。
 赤ずきんの声がよくきこえるようにとピンと立った三角耳には抗議の声は届かない。
「んむっ、はあっ……エッチな味のソーセージだ」
 ぬぽっ、ぬちゅっ、ちゅりゅっちゅっ。
 とめどなく溢れ出る我慢汁をすすり、もっとよこせと長い舌が裏筋をしつこく舐め上げる。上下に動く口元から時折、ビーフジャーキーを八つ裂きにしたあの白い牙が垣間見えた。そんな背筋の凍る光景ですらも、射精を促進するための起爆剤となって頭の中を掻き回す。
「ホントに食べちまいたいな」
 そう言って、骨を齧る犬のように顔を傾けてあぐあぐと奥歯で甘噛みしてみせた。
「ダメぇ! オオカミさんちんちん噛まないで!」
 恥も外聞も無く、叫び懇願する。そんな様子にひとしきり満足したのか再び口が開かれた。
「じゃあ、丸ごと食べちゃうな」
 じゅぶぶぷっ。
 はちきれんばかりに勃起して己の存在を誇示していたソコは、オオカミの長細いマズルの中に全て仕舞い込まれてしまう。
 ぐぶっ、ぶぷっ、じゅっぷぐっぽ。
「あっ、あ、いっちゃう!」
 ぬぽっ、ぬこっ、ちゅっ、ちゅくっちゅくっ。
「いくっ! オオカミさんにちんちん食べられていっちゃう!」
 びゅるっ! びゅーっ、びゅ! びゅっぴゅ!
「んぐっ、ごくっ……こくっ……ちゅうっ…………」
 悪いオオカミは貪欲なのだ。


 あれから今度は『オオカミ退治ごっこ』とやらをして、大上部長のを、その、つまりタップリとご馳走になった。狩人になったぼくは、もう悪さができないようにとオオカミのちんちんを懲らしめたというわけだ。キャンキャン鳴いちゃう大上部長、可愛かったなあ。
「うーん、ここはこうして……」
 お互いにスッキリしたから一息ついて……というまもなく、行為が終わるなり彼は「ちょっと待っていてくれ」といったっきり机に向かってなにやらペンを動かしていた。急ぎの仕事でも思い出したのだろうか。そりゃあぼくたちは恋人同士でもないのだから甘いピロートークは望めなかっただろうけど、エッチが終わったら用済みだと突きつけられたようで悲しい。邪魔にならないうちにおいとましたほうが賢明だろうか。
「あの、大上部長」
「よしっ! できた!」
 満面の笑顔で手渡されたのは一枚の紙切れ。名刺大の、というより名刺の裏になにやら手書きの文字が踊る。
「これって」
 綺麗な字で書かれた年間パスポートの文字。ご丁寧にも設けられた有効期限欄には無期限の朱書き。
「その、だな。会員番号は1番だ。今日は色々と付き合わせてすまなかった。もしよかったら、私と――」
 ここはぼくだけの、プライベート・ズー。
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