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その他
伝説のあんぽんたん、大学に立つ!
しおりを挟む午前9時、大学の校長室のドアが、まるで道場破りのように勢いよく開け放たれた。
「どーも!おはようございます!!」
仁王立ちで叫んだ俺の姿に、重厚な椅子に座っていた校長がピクリと眉を動かす。隣では、胃を押さえた同僚の『本気真面目(まじ まじめ)』先生が、今にも倒れそうだ。
「君が、あの伝説のSE(システムエンジニア)になりたいという…」
校長の言葉に、俺はビシッと敬礼してみせた。
「はい!俺の名前は、機械馬鹿彦(きかいばかひこ)!こっちが本気真面目(ほんき まじめ)さんです!」
「ちょっと!私の名前は『まじ』です!あと、あなたも本当の名前を!」
本気(まじ)先生が必死にツッコむが、俺は気にしない。
「いいのいいの~、細かいことは!」
「本当のお名前は?」
校長の静かな問いに、俺は小声で本名を告げた。そして、すぐに人差し指を口に当てる。
「今、俺が各方面で話題になってるんで、できれば『機械先生』と呼んでほしいです。じゃないと、ファンが押し寄せて大学がパンクします」
「…承知した。では機械先生、アルバイトは何を?」
「探偵、確定申告のデータ入力、パソコンの補助など!あらゆる現場を潜り抜けてきました!」
俺が胸を張ると、校長は「おぉ!」と感心したように頷いた。
「素晴らしい経験だ。では、機械先生と本気(まじ)先生は、2年1級を担当してください」
「ほーい、了解っす!」
「しっかりしてくださいよ、機械先生…」
「任せてくださいって!」
俺は本気(まじ)先生の心配を背中で受け流し、軽快なステップで教室へ向かった。
午前9時30分。2年1組の教室のドアをスパーンと開ける。
「どーもみなさん、俺が噂の機械馬鹿彦です!よろしくぅ!!」
一瞬の静寂の後、教室は爆笑の渦に包まれた。
「ぶっハハハ!何その名前!」
「やべーやつ来たぞ!」
「機械先生!!」
本気(まじ)先生が顔を真っ赤にして叫ぶ。俺は教卓をバンッと叩いた。
「お前ら、そんなんで俺をなめてたら、一生システムエンジニアにはなれねーぞ!」
最前列の生徒が、鼻で笑う。
「はぁ?なんだよあいつ、馬鹿教師かよ」
「お前らには才能がある!それは俺が見ればわかる!だからこそ、その才能をドブに捨てるな!俺についてきて、最高のシステムエンジニアになれ!!」
「「「えぇ!?」」」
教室がどよめいたその時、本気(まじ)先生が俺の肩を掴んだ。
「ちょっと機械先生!あなたは生徒と一緒に勉強する立場で、先生というような存在ではありません!」
「えぇ?まじ??笑笑」
「「「恥ずかしすぎだろ!笑笑」」」
生徒たちの笑い声が突き刺さる。だが、俺はここで終わる男じゃない。
「じゃあ、いま俺がここで宣言する!俺は今日からお前らの担任になって、全員を一流のシステムエンジニアに育て上げてやる!!」
「「「えぇ~!!」」」
「もうーー!」
本気(まじ)先生の悲鳴が響き渡る中、始業のチャイムが鳴り響いた。
休み時間。教室は俺の話題で持ちきりだ。
生徒A「なんかめっちゃやべーの来たぞ」
生徒B「俺達どうなっちまうんだよ…」
隅の方で、一際目つきの悪いグループが俺を睨んでいた。
生徒C「あいつ、マジでころすぞ」
生徒D「絶対、再起不能にしてやる…」
「お前ら、なんか俺に言ったか?」
俺がにこやかに話しかけると、リーダー格の生徒Dが立ち上がった。
「てめぇ、まじで覚えとけよ」
「そんなに俺のこと恨むなって!最終的にはお前らがどうしたいか、お前ら自身で決めるんだからさ」
「くそっ…人生で一番むかつく野郎だ…」
「そういう衝撃的な出会いがないと、人生成功しないぞ!」
「まじで死ねーー!!」
生徒Dが怒りに任せて殴りかかってきた。その瞬間、俺は腹を押さえて叫んだ。
「あ、ちょっとトイレー!」
俺がひょいと身をかがめると、生徒Dの拳は空を切り、勢い余って壁に激突した。
「ぐわぁっ!」
「あーあ、大丈夫か?ちゃんとストレッチしてから殴らないと」
「はぁ…なんだあいつ…まじで許さねえ…」
うずくまる生徒Dを横目に、俺はトイレへと急いだ。
トイレに入った瞬間、ツンとした匂いが鼻を突いた。
「ん?なんか焦げ臭いなぁ」
個室の方を見ると、ドアの隙間からうっすらと煙が立ち上っている。火事だ!
けたたましく火災報知器が鳴り響き、トイレはあっという間に野次馬で溢れかえった。駆けつけた校長が、煙の出ている個室と俺の顔を交互に見る。
「機械先生、トイレで何があったんですか?」
「わかんねっす!急に焦げ臭いと思ったら、もう燃えてました!」
「…機械先生の仕業では?」
「いやいやいや!そんなわけないじゃないですか~!」
「では、どうやって燃えたと?」
「そう言われましても~」
俺が頭をかいていると、生徒たちのひそひそ声が聞こえてきた。
生徒A「絶対あいつしかいねーだろ」
生徒B「休み時間に暴言吐かれて、むしゃくしゃして燃やしたんじゃねーの?」
まずい。完全に俺が犯人扱いだ。このままでは伝説のSEになる前に、ただの放火犯になってしまう。
その時、俺の脳内に閃きが走った!
「わかりました!校長!この謎、俺が解き明かしてみせます!」
「「「はぁ!?」」」
その場にいた全員の声がハモった。
「ここは探偵学校ではないんだぞ!…だが、機械先生は探偵のアルバイトをしていたんでしたな?」
校長の目がキラリと光る。
「はい!ですので、自信があります!」
「よろしい。では、機械先生がこの謎を見事解き明かした暁には、君を2年1組の正式な担任として認めましょう」
「マジすか!?わかりました!絶対にこの事件、この機械馬鹿彦が解決させてみせます!!」
こうして、俺のあんぽんたんな大学生活は、いきなりハードモードの謎解きミステリーから幕を開けたのだった。
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