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激変(1)
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「矢部専務、いったいどういう事なのかね!」
静まり返る会議室に鳴り響いたのは社長の熊田の声だった。
横鷹ホームが斉藤木材と取引を初めて三年たとうかと言う時である。それまでは、横鷹は社長や矢部専務の営業戦略にのっとり、建売住宅販売が軌道に乗り、ますます横鷹は年間売上高を増やしていった。
しかし、ここで大きな問題が発生していた。その事で熊田社長は激怒していた。
建売住宅を作るためには、その前に土地の調達がいる。それも十個前後の邸宅が美しい一団のミニタウンを形成できるまとまった広い土地が。
そんな土地がなければもちろん戸建て住宅を「欲しい」と思っている人がいても、提供できない話である。
そこで、矢部達は、住井林業でも行っていたスキームを取り入れた。
具体的には、
・広い土地を地主から横鷹ホームが買いたたくように購入する
・そこを土地の広さに応じて、きれいな長方形の五~十五区画に分ける
・分けた区画に横鷹が建売住宅を建設する
・それを営業マンが、全エネルギーを注入して完売する。もちろん区割りした土地の単価は、購入時が坪当たり10万円のものを、建売段階では5万円増しで販売した。
土地と建物の両方で利益を生み出しながら、そんなビジネスを猛スピードで回転させていた。
肝心の、その最初の広い土地の調達の担当責任者が矢部専務だった。
「訴訟をすると言ってきているぞ。この二つの案件とも!」
「まことに!すいません!」
内容はこうだった。
矢部はここ二年ほど、実は、十分に広い優良な土地を調達するのに苦労していた。
建売はまずは立地が問題となる。
変な郊外の土地では、建てても売れないことが多々ある。あまりにも買い手がつかない物件だと、経営会議の場で営業サイドの責任者が騒ぎ出す。
「完売できない主な理由は、『ここじゃあ、色々と不便だ!買うのやめた!』というお客さんの声が実に多いからだ!」そして
「そもそもの土地の選択を間違っているから、営業サイドがいくら頑張っても、どうにも売りさばくことができないっ!」
と。
そうしたなか、矢部はあせっていた。
その時に、大分市の郊外に、十二区画の宅地が取れそうな赤堀町の土地の紹介を、地場の不動産屋から受けた。
一方で、小高い丘の中腹の土地だったが、市街地にアクセスが良い十五区画が調達できそうな原島地区の土地があった。
ベテラン矢部にしてみれば、この二つの地区ともに、短期間での完売が見込めた。
よって購入した。
そしてこの二つの地域の住宅は、矢部が予想したとおり、スムーズに完売した・・・。
会議室では空気が張り詰めていた。
「なんだね、この『赤堀町』のクレームは!三世帯もギャンギャン言ってきているじゃないか!」
熊田は手持ち資料をバンと机に叩きつけた。
水をはったように室内はシーンとなった。
「家を購入した後に、お客様が家庭菜園をするために土地を掘っていたら『壊れた注射器』や、『点滴用のビニールホース』、それに『医療器具の包装ビニール袋』が出てきただと!」
「は、はい・・・」
「医療廃棄物が土地から出てきたという理由は何だ!」
静まり返る会議室に鳴り響いたのは社長の熊田の声だった。
横鷹ホームが斉藤木材と取引を初めて三年たとうかと言う時である。それまでは、横鷹は社長や矢部専務の営業戦略にのっとり、建売住宅販売が軌道に乗り、ますます横鷹は年間売上高を増やしていった。
しかし、ここで大きな問題が発生していた。その事で熊田社長は激怒していた。
建売住宅を作るためには、その前に土地の調達がいる。それも十個前後の邸宅が美しい一団のミニタウンを形成できるまとまった広い土地が。
そんな土地がなければもちろん戸建て住宅を「欲しい」と思っている人がいても、提供できない話である。
そこで、矢部達は、住井林業でも行っていたスキームを取り入れた。
具体的には、
・広い土地を地主から横鷹ホームが買いたたくように購入する
・そこを土地の広さに応じて、きれいな長方形の五~十五区画に分ける
・分けた区画に横鷹が建売住宅を建設する
・それを営業マンが、全エネルギーを注入して完売する。もちろん区割りした土地の単価は、購入時が坪当たり10万円のものを、建売段階では5万円増しで販売した。
土地と建物の両方で利益を生み出しながら、そんなビジネスを猛スピードで回転させていた。
肝心の、その最初の広い土地の調達の担当責任者が矢部専務だった。
「訴訟をすると言ってきているぞ。この二つの案件とも!」
「まことに!すいません!」
内容はこうだった。
矢部はここ二年ほど、実は、十分に広い優良な土地を調達するのに苦労していた。
建売はまずは立地が問題となる。
変な郊外の土地では、建てても売れないことが多々ある。あまりにも買い手がつかない物件だと、経営会議の場で営業サイドの責任者が騒ぎ出す。
「完売できない主な理由は、『ここじゃあ、色々と不便だ!買うのやめた!』というお客さんの声が実に多いからだ!」そして
「そもそもの土地の選択を間違っているから、営業サイドがいくら頑張っても、どうにも売りさばくことができないっ!」
と。
そうしたなか、矢部はあせっていた。
その時に、大分市の郊外に、十二区画の宅地が取れそうな赤堀町の土地の紹介を、地場の不動産屋から受けた。
一方で、小高い丘の中腹の土地だったが、市街地にアクセスが良い十五区画が調達できそうな原島地区の土地があった。
ベテラン矢部にしてみれば、この二つの地区ともに、短期間での完売が見込めた。
よって購入した。
そしてこの二つの地域の住宅は、矢部が予想したとおり、スムーズに完売した・・・。
会議室では空気が張り詰めていた。
「なんだね、この『赤堀町』のクレームは!三世帯もギャンギャン言ってきているじゃないか!」
熊田は手持ち資料をバンと机に叩きつけた。
水をはったように室内はシーンとなった。
「家を購入した後に、お客様が家庭菜園をするために土地を掘っていたら『壊れた注射器』や、『点滴用のビニールホース』、それに『医療器具の包装ビニール袋』が出てきただと!」
「は、はい・・・」
「医療廃棄物が土地から出てきたという理由は何だ!」
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