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横鷹ホーム 不渡り発生
しおりを挟む瀬良が斉藤木材の敷地内で、相談役とばったり出くわしてから二週間たった時だった、
「瀬良君、いまキミはどこにいるのかね?」
新庄支店の融資課の次長の副島からの音声通知だった。
「あ、副島次長お疲れ様です。今から昼食を外でとって、それから銀行に戻るつもりです」
時間はちょうど昼時の十二時 五分だった。
「メシ食っている場合じゃないぞ!すぐに戻って来てくれるか。そしてその足で斉藤木材に行ってもらうことになる。超急ぎだ!!」
「なにか・・・?」
副島は、瀬良の言葉が終わらない内に大きな声で返答した
「横鷹ホームが不渡りを出したんだよ!!」
横鷹ホームが資金不足で第一回目の不渡りをだした・・・そのことが、横鷹が取引する大分市のR銀行から支店に伝えられたのだった。
そう言えば瀬良も思い出した。つい四日前のことだったが、
「ユニットバスや、システムキッチンなどを納入してくれている住宅設備会社に対して、横鷹ホームがこれまでの現金払いから三か月手形に変えとほしいと打診した」
との話を・・・大分方面からの情報だった。横鷹が資金繰りに窮しているあかしだった。
クルマを支店の方に走らせてから五分たった頃、瀬良のスマホに、今度は大分支店から着信があった。
ブルートゥースで繋がった。
「あ、もしもし、瀬良です」
それは融資課の課長からだった。
「いよいよまずいことになったな。二回目の不渡りも時間の問題だろう。それはこちらの予想ではあさってとも言われている」そして
「横鷹は、起業してまだ長くない会社だからなぁ・・・・。だから自己資本が少ない、そして、追加で担保提供できる資産もない。またこうなった以上、誰も横鷹ホームの資金調達の保証に立たないだろう。あちらさんの取引のR銀行も、もう資金支援(追加融資)を拒否するだろうよ」
「(明後日には二回目の不渡りを出して、横鷹は倒産か・・・)」
心でつぶやいた。
その数分後に瀬良は支店に着いた。
駐車場に車を止めるや、融資課の副島次長のもとに走った。
そして次長の席の横に自分が座る場所を取った。
「ウチが、斉藤木材からの依頼を受けて割引いた横鷹ホームの手形が、先ほど不渡りになった。今日の分だけで四千二百万円分だ」
「でかい額ですね」
「そうだ。で、こういう状況の時に、次は何をすべきだ瀬良君?!」
「買戻しさせるのですね、即刻、斉藤に、全額を」
「そうだその通り。ぼやぼやしていられない、すぐに斉藤木材に行って、現金(小切手)で回収してくれ。不渡りになった手形は、後で手形交換所経由でウチに帰ってくる・・そう斉藤には言っておくように」
危機感からか、副島の口調もてんぱっていた。
斉藤木材のみならず、通常、この手の会社は、資金繰りのうえでどうしてもキャッシュ(支払用の現金)が必要である。
斉藤は今は、特にこのキャッシュが必要だった。
このために、横鷹ホームが斉藤木材に対して振り出す6か月手形を、斉藤は瀬良の銀行で、ほぼすべてを手形割引(手形期日以前に、利息前払いで現金化、そして手形をその時点で銀行預けとする)していた。
会長に電話を入れた。在席だった。十五分後のアポがとれた。
割引に出した手形が不渡りになった場合は、手形のもとの債権者(この場合は斉藤木材)が現金でその分を即刻買い戻さなければならない。そうでないと、斉藤側が今度は西都銀行から取引停止を受けてしまい、ひいては「倒産」となる・・・・。
しかし、四千二百万円と言う現金が
「(斉藤木材には今時点で有るのか・・・?!)」
「(それにしても額が大きい。斉藤木材は宮崎総合銀行とも取引があるが、そこが直ちにその額を融資してくれるのだろうか・・・おそらく無理だ)」
色々と思いを巡らせた。額から汗が噴き出すのを感じた。
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