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「全く知らない」
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会長の厳しい叱責を受けて、社長ら三人は高速道路を飛ばしていた。
クルマの中から、社長の純一は何度も横鷹ホームの本社に電話を入れたが、社長、専務、それに資材仕入部長の今田は不在だった。
だが、押しかけるしかなかった。
横鷹ホーム本店の駐車場にクルマを停めた後、三人は建物に飛び込んだ。やはり、社長ら幹部は不在で、帰社の予定も分からない状況だった。おそらく金策に走っているものと思われた。
とりあえず、そこにいる横鷹の社員を捕まえた。三か所に資材ヤードがあるらしかった。
但し、どこの資材置き場にどのようなものが保管されているかまでは「分からない」と言った。
純一社長は、自分が持ってきたこの近辺の地図を取り出し、ボールペンで横鷹の社員が言う三か所の資材置き場に印をつけた。
「とにかく、行きましょう」
一緒に来ていた営業の丸田の言葉を受けて、三人は駐車場に戻り再びクルマを走らせた。
一つ目は本社から6キロ離れた、神社横の目立たない場所にあった。
そこには、昔は小さな工場だった様な建物があった。入り口の鍵を開錠する番号は先の社員から教えてもらっていた。
‘ガラッ’
松田が重い大きなドアをスライドさせた。そこは家の基礎部分の部材であるセメントや鉄筋が置いてあった。どう見ても木材置き場ではなかった。
「次だ!」
二つ目はさらに南に下って3キロ車を走らせた。そこは塀でぐるりと取り囲まれていた。
鍵の番号を回して三人は中に入った。瓦や玄関先の工事に使うカラーレンガや敷石が野積みの状態で置いてあった。
その敷地の一画にあった中規模の建物の中には、建築現場に取り付けに行く寸前のサッシ枠や玄関ドアが所狭しと置かれていた。
「やばいんじゃないか?ウチの木材はどこだ・・」
そう言いつつ、三つ目にやっとたどり着いた。
「ありましたね、よかった!」と松田。
社長の純一も「これでほっとしたなあ、あはは・・・」
斉藤木材が納入した材木がそこには積み上げられていた。それは、木材に斉藤木材のしるしであるマルに「斉」の字で確認できた。
「いいや、違う。・・・・量が・・少ない・・・」
「ん!?」社長と松田は丸田を見た。
眉間にしわを寄せた丸田がボソッと言った
「こんなもんじゃありませんよ。会長が言うここ二カ月に収めた五千万円分の木材の量は・・・」
丸田は急いで横鷹ホームの仕入部に電話を入れた。係長をつかまえることができた。
「はい、はい、あ、そうですか」そして
「ここから道路ぞいに・・・えっ、どれくらい・・・ああ200m行った所にもストックヤードがある?!ああ、そうですか。ありがとうございます」
もう時計は六時を回っていた。あたりは薄暗くなりかけていた。
そこは、昔は剣道場ではなかったかと思われる古い建物だった。
すりガラスで中は見えない。
木材の切り端が建物の周辺に積んであった。ドアを開けたが・・・カラだった。斉藤が納品したであろう木材は消えてなくなっていた・・・・。
「やられたー!」
松田は床に膝をガクリと落とし、のどもとからシボり出すようなそんな言葉をはいた。
・・後の祭りだった。
斉藤純一たち三人は、そうはしていられず、急ぎ横鷹ホームの本社に取って返した。
このままで斉藤木材本社に帰れるわけがない。
「なにか情報を取るんだ。何でもいいこの際!」
そう言った純一の声は震えていた。
松田が横鷹に音声通話を入れた。しかし、既に留守電に切り替わっていた。全員が帰宅後で、誰も社屋にはいない可能性がある。
横鷹本社の駐車場に車を滑り込ませた。社屋は、すでに電気が消されており真っ暗だった。
「ん・・・・・・こ、 困った」
車内に松田の声が小さく響いた。松田は本社に帰った時の会長の叱責を恐れていた。
彼は、なにか情報を持って帰らなければ「(戻るに戻れない・・)」と逃げ道を模索していた。
‘カツン、カツン’
その時に鉄製の外階段を下りてくる靴音がした。
「誰かまだいたぞ」
純一には見知らぬ顔だった。但し、純一の横に座っていた営業部長の丸田は
「今田部長の部下じゃないかな。あの人が今田さんの机の前に立って何かの図面の説明をしているのを見かけたことがある。名前は確か・・・室田さんだ!」
それを聞いた純一が
「とにかく引き留めよう」と。
その声を受けて丸田と松田が急ぎクルマのドアを開けて、その人物に近づいた。
「遅くにすいません。室田さんですよね」
室田はその日は最後まで残業して、裏扉に鍵をかけてウラの非常階段から下に降りて来ていた。
「そう言われましてもねぇ。私は設計課の人間なんで・・、建築資材の置き場所や配送先については全く知りませんよ」
そう室田は応えた。
しかし三人は食い下がった。このままでは帰れない。
室田は「(めんどくさいな)」と言う顔をしながらも、仲が良い資材仕入部の年下の社員に電話を入れた。
七~八分ほど時間が過ぎた。その間、室田は「あそう。ふーん。で?」と先方と話をし、そして音声通話を切った。
室田が電話を切ったあとに話しをしてくれた事に、三人は愕然とした。
松田がかすれたような声で言った、
「横鷹ホームでは普通は使わない・・大きなトラック三台が、木材保管庫の建物に横付けされていたのを見たって!?」そして
「それが、おととい・・だったのですか!で、そのナンバーは・・・・」
その回答を聞いて、三人は、
「えっ、き、京都ナンバー!」 お互いの顔を見合った。
そのトラックが、何の目的でそこに止められていたのか、そしてそのあと何処へ向かったのか、横鷹のその二人は
「全く知らない」
だった・・。
クルマの中から、社長の純一は何度も横鷹ホームの本社に電話を入れたが、社長、専務、それに資材仕入部長の今田は不在だった。
だが、押しかけるしかなかった。
横鷹ホーム本店の駐車場にクルマを停めた後、三人は建物に飛び込んだ。やはり、社長ら幹部は不在で、帰社の予定も分からない状況だった。おそらく金策に走っているものと思われた。
とりあえず、そこにいる横鷹の社員を捕まえた。三か所に資材ヤードがあるらしかった。
但し、どこの資材置き場にどのようなものが保管されているかまでは「分からない」と言った。
純一社長は、自分が持ってきたこの近辺の地図を取り出し、ボールペンで横鷹の社員が言う三か所の資材置き場に印をつけた。
「とにかく、行きましょう」
一緒に来ていた営業の丸田の言葉を受けて、三人は駐車場に戻り再びクルマを走らせた。
一つ目は本社から6キロ離れた、神社横の目立たない場所にあった。
そこには、昔は小さな工場だった様な建物があった。入り口の鍵を開錠する番号は先の社員から教えてもらっていた。
‘ガラッ’
松田が重い大きなドアをスライドさせた。そこは家の基礎部分の部材であるセメントや鉄筋が置いてあった。どう見ても木材置き場ではなかった。
「次だ!」
二つ目はさらに南に下って3キロ車を走らせた。そこは塀でぐるりと取り囲まれていた。
鍵の番号を回して三人は中に入った。瓦や玄関先の工事に使うカラーレンガや敷石が野積みの状態で置いてあった。
その敷地の一画にあった中規模の建物の中には、建築現場に取り付けに行く寸前のサッシ枠や玄関ドアが所狭しと置かれていた。
「やばいんじゃないか?ウチの木材はどこだ・・」
そう言いつつ、三つ目にやっとたどり着いた。
「ありましたね、よかった!」と松田。
社長の純一も「これでほっとしたなあ、あはは・・・」
斉藤木材が納入した材木がそこには積み上げられていた。それは、木材に斉藤木材のしるしであるマルに「斉」の字で確認できた。
「いいや、違う。・・・・量が・・少ない・・・」
「ん!?」社長と松田は丸田を見た。
眉間にしわを寄せた丸田がボソッと言った
「こんなもんじゃありませんよ。会長が言うここ二カ月に収めた五千万円分の木材の量は・・・」
丸田は急いで横鷹ホームの仕入部に電話を入れた。係長をつかまえることができた。
「はい、はい、あ、そうですか」そして
「ここから道路ぞいに・・・えっ、どれくらい・・・ああ200m行った所にもストックヤードがある?!ああ、そうですか。ありがとうございます」
もう時計は六時を回っていた。あたりは薄暗くなりかけていた。
そこは、昔は剣道場ではなかったかと思われる古い建物だった。
すりガラスで中は見えない。
木材の切り端が建物の周辺に積んであった。ドアを開けたが・・・カラだった。斉藤が納品したであろう木材は消えてなくなっていた・・・・。
「やられたー!」
松田は床に膝をガクリと落とし、のどもとからシボり出すようなそんな言葉をはいた。
・・後の祭りだった。
斉藤純一たち三人は、そうはしていられず、急ぎ横鷹ホームの本社に取って返した。
このままで斉藤木材本社に帰れるわけがない。
「なにか情報を取るんだ。何でもいいこの際!」
そう言った純一の声は震えていた。
松田が横鷹に音声通話を入れた。しかし、既に留守電に切り替わっていた。全員が帰宅後で、誰も社屋にはいない可能性がある。
横鷹本社の駐車場に車を滑り込ませた。社屋は、すでに電気が消されており真っ暗だった。
「ん・・・・・・こ、 困った」
車内に松田の声が小さく響いた。松田は本社に帰った時の会長の叱責を恐れていた。
彼は、なにか情報を持って帰らなければ「(戻るに戻れない・・)」と逃げ道を模索していた。
‘カツン、カツン’
その時に鉄製の外階段を下りてくる靴音がした。
「誰かまだいたぞ」
純一には見知らぬ顔だった。但し、純一の横に座っていた営業部長の丸田は
「今田部長の部下じゃないかな。あの人が今田さんの机の前に立って何かの図面の説明をしているのを見かけたことがある。名前は確か・・・室田さんだ!」
それを聞いた純一が
「とにかく引き留めよう」と。
その声を受けて丸田と松田が急ぎクルマのドアを開けて、その人物に近づいた。
「遅くにすいません。室田さんですよね」
室田はその日は最後まで残業して、裏扉に鍵をかけてウラの非常階段から下に降りて来ていた。
「そう言われましてもねぇ。私は設計課の人間なんで・・、建築資材の置き場所や配送先については全く知りませんよ」
そう室田は応えた。
しかし三人は食い下がった。このままでは帰れない。
室田は「(めんどくさいな)」と言う顔をしながらも、仲が良い資材仕入部の年下の社員に電話を入れた。
七~八分ほど時間が過ぎた。その間、室田は「あそう。ふーん。で?」と先方と話をし、そして音声通話を切った。
室田が電話を切ったあとに話しをしてくれた事に、三人は愕然とした。
松田がかすれたような声で言った、
「横鷹ホームでは普通は使わない・・大きなトラック三台が、木材保管庫の建物に横付けされていたのを見たって!?」そして
「それが、おととい・・だったのですか!で、そのナンバーは・・・・」
その回答を聞いて、三人は、
「えっ、き、京都ナンバー!」 お互いの顔を見合った。
そのトラックが、何の目的でそこに止められていたのか、そしてそのあと何処へ向かったのか、横鷹のその二人は
「全く知らない」
だった・・。
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