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始まり
プロローグ
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友達って、恋人って、いったい何なんだろうか。
これまでに、友達って言える人がいない私からすれば、何が何だかよくわからない。よく私のクラスメイトには、「友達の基準ちょっと高くない?」、とか言われる。ただ、ここで「君は私の友達?」って聞いてしまうと嫌われてしまうかもと思ってしまう。だから、あまりそういうのは変えれない。
変わっているとか、そんなふうに思うかもしれない。けれど私にとっては、これが普通なのだ。むしろ、これを否定されてしまうと、私は私じゃなくなってしまう気がする。
残暑も懐かしく感じるほど涼しくなった晴れた秋のある日。まだ、葉は若く強い緑を残しているものと、歳をとって綺麗になった赤い葉もあるような日。私は、少し肌寒くなり、私は長袖のシャツの中に手を引っ込めて、その上から服をこすり合わせて暖を取っていた。
休み時間に入った教室は、まだ夏の余韻を忘れられないのか、涼しくなって嬉しいのか分からないが、楽しく、激しく熱に包まれていた。
夏の記憶を呼び覚まされそうになり、私は若干錆びついて動きにくくなった引き戸に手をかけて、外へ避難する。
廊下は教室の慌ただしい喧騒とは違い、肌寒く同じ学校の中とは思えないものだった。教室から出てきた私は何もすることはないのだが、仕方ないのでいつもの場所、この棟とは違う、棟にある理科準備室へと向かった。
理科準備室には私の恩師がよくいる。名前は、山田 真一といったはずだ。山田先生としか言わないので、自信はないけれど。彼には私自身とても感謝している。今私は高校二年生なのだけれど、去年の冬に授業で薬品を使う授業があった。その時にある男子が故意なのか、いじりなのか分からないけれど、私の指に塩酸をかけられたことがあった。その時は、すぐに水で洗い流すことができたから、指の皮が少し溶けるくらいの軽傷で済んだ。このことがあってから私は彼と頻繁に合うようになった。
私はいつもに比べて妙に暗い廊下を一歩ずつ進んでいく。人が全くいない廊下に私の足音がパンパンと響く。
理科実験室の前に着く。深呼吸をして教室の中に入ろうとすると、教室の中から、二、三人くらいで会話している声が聞こえた。私は少し扉を開けて、ぼんやりと教室全体を見回した。中には、山田先生と、同学年の男子と女子の二人が喋っていた。私は声の弾み方から、まだ終わりそうにないと悟り、回れ右して、教室から離れようとした。
「おーい、そこの君、多分香美さんだよね。入ってきなよ」
山田先生に、私を引き留められた。こうなっては仕方ないので、教室のドアを恐る恐る開けて右足を踏み入れる。薬品特有のにおいが充満した部屋の中に入る。嗅ぎなれた部屋のはずなのに、今日はなんか少し変な感じがした。
これまでに、友達って言える人がいない私からすれば、何が何だかよくわからない。よく私のクラスメイトには、「友達の基準ちょっと高くない?」、とか言われる。ただ、ここで「君は私の友達?」って聞いてしまうと嫌われてしまうかもと思ってしまう。だから、あまりそういうのは変えれない。
変わっているとか、そんなふうに思うかもしれない。けれど私にとっては、これが普通なのだ。むしろ、これを否定されてしまうと、私は私じゃなくなってしまう気がする。
残暑も懐かしく感じるほど涼しくなった晴れた秋のある日。まだ、葉は若く強い緑を残しているものと、歳をとって綺麗になった赤い葉もあるような日。私は、少し肌寒くなり、私は長袖のシャツの中に手を引っ込めて、その上から服をこすり合わせて暖を取っていた。
休み時間に入った教室は、まだ夏の余韻を忘れられないのか、涼しくなって嬉しいのか分からないが、楽しく、激しく熱に包まれていた。
夏の記憶を呼び覚まされそうになり、私は若干錆びついて動きにくくなった引き戸に手をかけて、外へ避難する。
廊下は教室の慌ただしい喧騒とは違い、肌寒く同じ学校の中とは思えないものだった。教室から出てきた私は何もすることはないのだが、仕方ないのでいつもの場所、この棟とは違う、棟にある理科準備室へと向かった。
理科準備室には私の恩師がよくいる。名前は、山田 真一といったはずだ。山田先生としか言わないので、自信はないけれど。彼には私自身とても感謝している。今私は高校二年生なのだけれど、去年の冬に授業で薬品を使う授業があった。その時にある男子が故意なのか、いじりなのか分からないけれど、私の指に塩酸をかけられたことがあった。その時は、すぐに水で洗い流すことができたから、指の皮が少し溶けるくらいの軽傷で済んだ。このことがあってから私は彼と頻繁に合うようになった。
私はいつもに比べて妙に暗い廊下を一歩ずつ進んでいく。人が全くいない廊下に私の足音がパンパンと響く。
理科実験室の前に着く。深呼吸をして教室の中に入ろうとすると、教室の中から、二、三人くらいで会話している声が聞こえた。私は少し扉を開けて、ぼんやりと教室全体を見回した。中には、山田先生と、同学年の男子と女子の二人が喋っていた。私は声の弾み方から、まだ終わりそうにないと悟り、回れ右して、教室から離れようとした。
「おーい、そこの君、多分香美さんだよね。入ってきなよ」
山田先生に、私を引き留められた。こうなっては仕方ないので、教室のドアを恐る恐る開けて右足を踏み入れる。薬品特有のにおいが充満した部屋の中に入る。嗅ぎなれた部屋のはずなのに、今日はなんか少し変な感じがした。
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