笑顔になる方法

生徒

文字の大きさ
1 / 2
始まり

プロローグ

しおりを挟む
 友達って、恋人って、いったい何なんだろうか。
 これまでに、友達って言える人がいない私からすれば、何が何だかよくわからない。よく私のクラスメイトには、「友達の基準ちょっと高くない?」、とか言われる。ただ、ここで「君は私の友達?」って聞いてしまうと嫌われてしまうかもと思ってしまう。だから、あまりそういうのは変えれない。
 変わっているとか、そんなふうに思うかもしれない。けれど私にとっては、これが普通なのだ。むしろ、これを否定されてしまうと、私は私じゃなくなってしまう気がする。


 残暑も懐かしく感じるほど涼しくなった晴れた秋のある日。まだ、葉は若く強い緑を残しているものと、歳をとって綺麗になった赤い葉もあるような日。私は、少し肌寒くなり、私は長袖のシャツの中に手を引っ込めて、その上から服をこすり合わせて暖を取っていた。
 休み時間に入った教室は、まだ夏の余韻を忘れられないのか、涼しくなって嬉しいのか分からないが、楽しく、激しく熱に包まれていた。
 夏の記憶を呼び覚まされそうになり、私は若干錆びついて動きにくくなった引き戸に手をかけて、外へ避難する。
 廊下は教室の慌ただしい喧騒とは違い、肌寒く同じ学校の中とは思えないものだった。教室から出てきた私は何もすることはないのだが、仕方ないのでいつもの場所、この棟とは違う、棟にある理科準備室へと向かった。
 理科準備室には私の恩師がよくいる。名前は、山田 真一といったはずだ。山田先生としか言わないので、自信はないけれど。彼には私自身とても感謝している。今私は高校二年生なのだけれど、去年の冬に授業で薬品を使う授業があった。その時にある男子が故意なのか、いじりなのか分からないけれど、私の指に塩酸をかけられたことがあった。その時は、すぐに水で洗い流すことができたから、指の皮が少し溶けるくらいの軽傷で済んだ。このことがあってから私は彼と頻繁に合うようになった。
 私はいつもに比べて妙に暗い廊下を一歩ずつ進んでいく。人が全くいない廊下に私の足音がパンパンと響く。
理科実験室の前に着く。深呼吸をして教室の中に入ろうとすると、教室の中から、二、三人くらいで会話している声が聞こえた。私は少し扉を開けて、ぼんやりと教室全体を見回した。中には、山田先生と、同学年の男子と女子の二人が喋っていた。私は声の弾み方から、まだ終わりそうにないと悟り、回れ右して、教室から離れようとした。
 「おーい、そこの君、多分香美さんだよね。入ってきなよ」
 山田先生に、私を引き留められた。こうなっては仕方ないので、教室のドアを恐る恐る開けて右足を踏み入れる。薬品特有のにおいが充満した部屋の中に入る。嗅ぎなれた部屋のはずなのに、今日はなんか少し変な感じがした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

処理中です...