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第14話 剣士、魔剣娘と出会う その4
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アルムの目から見て、フードの人物の剣筋は驚愕に値するものであった。
迷いや、遊びが全くない。
右の剣を捌き、左の剣を逸らす。下段への一振り、そこから身を捻り、縦一文字に振り抜く。更に続くフードの人物の猛攻撃を、アルムは紙一重で捌いていた。
かなりの手練れ、という感想を抱きながら、アルムは両の剣で捌き切る。
「……こいつ」
「どうした? 疲れたか?」
だが、アルムはまだ己の首に届くほどの恐怖を感じない。
気になるのは――相手が持つ二本の剣。何の変哲もないただの数打ちにしか見えないのだが、打ち合うたびに何か違和感を覚える。
「……まだ、まだ!」
軽口を叩かれたフードの人物は軽く跳躍したかと思えば、その体をコマのように回転させ、左右の剣をアルムに叩きつける。
足に力を入れ、踏ん張り、彼は大きくフードの人物を弾き飛ばした。
「さっきも言ったが、今ならまだ見逃してやるぞ」
「……こっちの台詞……!」
更に動きが良くなったのを確認したアルムは、精神を集中させる。
迫る右の剣を弾き、大きく跳躍し、背後から振るわれる左の剣を受け止める。実にアクロバティックな攻撃であった。気を抜けば、こんなに近い距離なのに見失ってしまう。
現在のアルムは防戦一方、といって間違いない状況である。
だが、それで良いのだ。今のアルムに与えられた勝利条件とは、後ろのイーリスの動きを気取られぬことのみ。
「どうしよう……あのフードの人、速くて動きを止められない……」
イーリスのこめかみに一筋の汗が流れる。
拘束魔法の発動準備は既に出来ていた。だが、捉えれないのだ。
アルムへ一直線に向かったと思えば、宙返りをして背後を取ったり、低い体勢から身を捻って剣を振り上げたり。三次元的な動きで次の行動の予想がまるでつかない。
下手に焦って発動したが最後、アルムを拘束してしまい、そこで決着だ。
『焦るなイーリスよ』
「ヴァイさん……!」
ヴァイフリングは静かに、だが確かに言う。
『戦いにおいて、焦りは不要な感情だ。切って捨てろ』
「でも、早くしないとアルムさんが……」
『研ぎ澄ませろ! 貴様の手には眼前の敵を御せる力がある! そして背後には我輩がいる! 見ろ――視ろ!! そうら来るぞ、見逃すな!!』
フードの人物が再び跳躍。体重を乗せた一撃を見舞わんと二刀を振り上げた。
それに対し、アルムは足に力を込め、防御の構えを取る。
「イーリス!」
受け止めた瞬間、アルムは叫び、彼の合図を聞くよりも前に、イーリスは捕縛魔法を発動していた。
「……ッ!」
四肢が拘束され、フードの人物はようやく動きを止める。
「良くやったなイーリス。そしてお前、これでもう暴れられないぞ」
「……ッ! まだ、負けてない」
水流の輪が、徐々に凍っていく。イーリスを見るが、“何もしていない”と首を横に振る。
そこで強烈な違和感を発している数打ち、その内の左手に持っている方の刀身が徐々にひび割れていった。それに呼応するように、右手の数打ちもどんどん崩れていく。
「負ける訳にはいかない……ッ!!」
ガラスが割れるような音と共に、両方の剣がはじけ飛ぶ。
「何かおかしな感じはしていたが……」
アルムは、まず右手の剣を見る。真紅の刀身、切っ先が三日月を模している奇態な剣。
次に左手の剣を見る。紺碧の刀身、切っ先が太陽を模している希体な剣。
二振りから感じ取る強烈な力、アルムはこういった武器には見覚えがある。
「まさか、魔剣とはな。気付かなかった」
左手の紺碧の剣から発せられる冷気で、フードの人物を拘束していた水流の輪が完全に氷、砕け散った。
自由を得たフードの人物は、再び右順手に真紅の剣を、左逆手に紺碧の剣を握り直す。その眼からはまだまだ戦意が消えておらず。
「……『燃える月』、『凍える太陽』。……私に、これを抜かせるなんて」
両方の剣から噴き上がる魔力で、フードがめくれ上がる。
赤茶色のおさげ髪、整った顔、真一文字に引き締められた唇。どこか、静かなところで本でも読んでいそうな雰囲気が感じられる。
「女……?」
女性は仕切り直しとばかりに、『燃える月』を軽く振るうと、辺りの地面から小さな火が立ち上る。
「私は、負けられない……絶対に……!」
女性が再びアルムへと喰いかかろうと姿勢を低くすると、
「ウィスナァ!! ちんたらやってんじゃねえぞ!! さっさとそいつら殺せェ!」
村の方から、怒声が鳴り響く。その声に、“ウィスナ”と呼ばれた女性は肩を震わせる。
声の主は、数十人の人間を引き連れ、アルム達の元へと現れた。
「俺達の追っ手もどんどん減って来たな。今回は二人かよ」
大男だった。狼を思わせる髪型、そして銀髪。手には銀色の戦斧。
名乗りを聞かなくても分かる。この男こそが、今回のターゲット。
「だが相手が悪かったな。このロックウェルが率いる『銀の狼団』に喧嘩を売ってくるだなんてな」
「金が無いお前達に無料で売ってやっているんだ。感謝してくれてもいいんだぞ?」
「ちょ、アルムさん! 挑発は出来れば止めてくださいよ!」
イーリスが後ろで、半泣きになりながら訴えてくるが、聞き流すアルム。
当然、このような挑発をしようものなら、それ相応の反応をされるのは然るべき。
「クソガキが一丁前に物を言いやがる……おい、ウィスナ! テメェ、手抜いてんじゃねえぞ!? お前の大事な大事な父親がどうなっても構わねえってことか、アァ!?」
「……それ、だけは……!」
「だったら殺せ!! 何のためにテメェをここの門番にしていると思ってんだ!!」
「……分かってる」
ウィスナが苦虫を噛み潰したような顔をしながら、両の剣から発する炎と冷気が一段と大きくなった。
「なるほど、どうやらやんごとなき事情があるようだな」
だからと言って、手を抜く理由にはならない。アルムは片手の短剣を鞘に戻し、青い剣一本のみで構え直した。
「だけど、こっちも命が掛かっているんだ。……ウィスナと言ったな。来い、さっきみたいにあしらってやる」
「ッ……! 馬鹿にしないで……!!」
多分の殺意を込め、彼女は再び宙を舞う。
迷いや、遊びが全くない。
右の剣を捌き、左の剣を逸らす。下段への一振り、そこから身を捻り、縦一文字に振り抜く。更に続くフードの人物の猛攻撃を、アルムは紙一重で捌いていた。
かなりの手練れ、という感想を抱きながら、アルムは両の剣で捌き切る。
「……こいつ」
「どうした? 疲れたか?」
だが、アルムはまだ己の首に届くほどの恐怖を感じない。
気になるのは――相手が持つ二本の剣。何の変哲もないただの数打ちにしか見えないのだが、打ち合うたびに何か違和感を覚える。
「……まだ、まだ!」
軽口を叩かれたフードの人物は軽く跳躍したかと思えば、その体をコマのように回転させ、左右の剣をアルムに叩きつける。
足に力を入れ、踏ん張り、彼は大きくフードの人物を弾き飛ばした。
「さっきも言ったが、今ならまだ見逃してやるぞ」
「……こっちの台詞……!」
更に動きが良くなったのを確認したアルムは、精神を集中させる。
迫る右の剣を弾き、大きく跳躍し、背後から振るわれる左の剣を受け止める。実にアクロバティックな攻撃であった。気を抜けば、こんなに近い距離なのに見失ってしまう。
現在のアルムは防戦一方、といって間違いない状況である。
だが、それで良いのだ。今のアルムに与えられた勝利条件とは、後ろのイーリスの動きを気取られぬことのみ。
「どうしよう……あのフードの人、速くて動きを止められない……」
イーリスのこめかみに一筋の汗が流れる。
拘束魔法の発動準備は既に出来ていた。だが、捉えれないのだ。
アルムへ一直線に向かったと思えば、宙返りをして背後を取ったり、低い体勢から身を捻って剣を振り上げたり。三次元的な動きで次の行動の予想がまるでつかない。
下手に焦って発動したが最後、アルムを拘束してしまい、そこで決着だ。
『焦るなイーリスよ』
「ヴァイさん……!」
ヴァイフリングは静かに、だが確かに言う。
『戦いにおいて、焦りは不要な感情だ。切って捨てろ』
「でも、早くしないとアルムさんが……」
『研ぎ澄ませろ! 貴様の手には眼前の敵を御せる力がある! そして背後には我輩がいる! 見ろ――視ろ!! そうら来るぞ、見逃すな!!』
フードの人物が再び跳躍。体重を乗せた一撃を見舞わんと二刀を振り上げた。
それに対し、アルムは足に力を込め、防御の構えを取る。
「イーリス!」
受け止めた瞬間、アルムは叫び、彼の合図を聞くよりも前に、イーリスは捕縛魔法を発動していた。
「……ッ!」
四肢が拘束され、フードの人物はようやく動きを止める。
「良くやったなイーリス。そしてお前、これでもう暴れられないぞ」
「……ッ! まだ、負けてない」
水流の輪が、徐々に凍っていく。イーリスを見るが、“何もしていない”と首を横に振る。
そこで強烈な違和感を発している数打ち、その内の左手に持っている方の刀身が徐々にひび割れていった。それに呼応するように、右手の数打ちもどんどん崩れていく。
「負ける訳にはいかない……ッ!!」
ガラスが割れるような音と共に、両方の剣がはじけ飛ぶ。
「何かおかしな感じはしていたが……」
アルムは、まず右手の剣を見る。真紅の刀身、切っ先が三日月を模している奇態な剣。
次に左手の剣を見る。紺碧の刀身、切っ先が太陽を模している希体な剣。
二振りから感じ取る強烈な力、アルムはこういった武器には見覚えがある。
「まさか、魔剣とはな。気付かなかった」
左手の紺碧の剣から発せられる冷気で、フードの人物を拘束していた水流の輪が完全に氷、砕け散った。
自由を得たフードの人物は、再び右順手に真紅の剣を、左逆手に紺碧の剣を握り直す。その眼からはまだまだ戦意が消えておらず。
「……『燃える月』、『凍える太陽』。……私に、これを抜かせるなんて」
両方の剣から噴き上がる魔力で、フードがめくれ上がる。
赤茶色のおさげ髪、整った顔、真一文字に引き締められた唇。どこか、静かなところで本でも読んでいそうな雰囲気が感じられる。
「女……?」
女性は仕切り直しとばかりに、『燃える月』を軽く振るうと、辺りの地面から小さな火が立ち上る。
「私は、負けられない……絶対に……!」
女性が再びアルムへと喰いかかろうと姿勢を低くすると、
「ウィスナァ!! ちんたらやってんじゃねえぞ!! さっさとそいつら殺せェ!」
村の方から、怒声が鳴り響く。その声に、“ウィスナ”と呼ばれた女性は肩を震わせる。
声の主は、数十人の人間を引き連れ、アルム達の元へと現れた。
「俺達の追っ手もどんどん減って来たな。今回は二人かよ」
大男だった。狼を思わせる髪型、そして銀髪。手には銀色の戦斧。
名乗りを聞かなくても分かる。この男こそが、今回のターゲット。
「だが相手が悪かったな。このロックウェルが率いる『銀の狼団』に喧嘩を売ってくるだなんてな」
「金が無いお前達に無料で売ってやっているんだ。感謝してくれてもいいんだぞ?」
「ちょ、アルムさん! 挑発は出来れば止めてくださいよ!」
イーリスが後ろで、半泣きになりながら訴えてくるが、聞き流すアルム。
当然、このような挑発をしようものなら、それ相応の反応をされるのは然るべき。
「クソガキが一丁前に物を言いやがる……おい、ウィスナ! テメェ、手抜いてんじゃねえぞ!? お前の大事な大事な父親がどうなっても構わねえってことか、アァ!?」
「……それ、だけは……!」
「だったら殺せ!! 何のためにテメェをここの門番にしていると思ってんだ!!」
「……分かってる」
ウィスナが苦虫を噛み潰したような顔をしながら、両の剣から発する炎と冷気が一段と大きくなった。
「なるほど、どうやらやんごとなき事情があるようだな」
だからと言って、手を抜く理由にはならない。アルムは片手の短剣を鞘に戻し、青い剣一本のみで構え直した。
「だけど、こっちも命が掛かっているんだ。……ウィスナと言ったな。来い、さっきみたいにあしらってやる」
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