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第18話 剣士、孤軍奮闘 その1
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「……馬車に揺られるっていうのも中々良いな」
現在、アルムは王都サイファルから離れていた。目的地は、馬車で三時間ほど揺られたところにある『シャルロン遺跡』。
中々に歴史を重ねている遺跡らしく、学識ある者が調査隊を作り、よく調査に赴いてるらしい。
戦うことだけが取り柄のアルムが何故、ここに来ているのか。それは、冒険者ギルドの一階である通称“酒場エリア”で耳にした情報にあった。
――シャルロン遺跡に翼の生えた人型の化物が出入りしている。
それを聞いた、そこそこ名のある冒険者達が好奇心で調査に行ったらしい。
結果は、失敗。帰って来た豪胆な冒険者達の顔が皆、青ざめており、中にはその場で冒険者登録を解除した者もいるときた。
(そこそこ腕のある奴らがそこまで怯えるということは、それだけの恐怖を与えられたということ)
恐怖、というのは様々な種類がある。
本能的な恐怖、そして人為的に引き出された悪質な恐怖など。恐らく冒険者達は、凄惨な目にあったのだろう。そうでなければ、稼業から足を洗うなんて決断が即、出来る訳が無いのだ。
(鬼が出るか蛇が出るか)
一人、言ちるアルム。
そう、今回は一人でやってきている。何せ、これから調査しようという相手が相手だ。
最悪、魔族とやり合うことになる。経験不足のイーリスは、まだ連れていけない。
その代わり、彼女にはウィスナと一緒に大型の魔物の討伐依頼を受けさせた。少しでも彼女の経験値となるように。魔王ヴァイフリングもいるのだ、心配することはないだろう。
「よう、兄ちゃん。着いたよ」
御者に呼びかけられ、到着を確認したアルムは、少し多めにお礼を払った後、四本の愛剣を装備する。
「じゃあ、俺は行くけど、気を付けろよ? この遺跡、前までは弱っちい魔物しかいなかったらしいのに、近頃ちょっと油断出来ないみたいだぞ」
「ありがとう。留めておく」
馬車が遠ざかっていくのを見送りながら、アルムは改めて遺跡の入口へ向き直る。
「入り口は……当然一つか」
ぽっかりとあいた石造りの大口。人が二人並んで入っても余裕があるくらいの大きさだ。
中に入ろうとすると、勝手に左右の松明に火が灯った。人に反応する魔術的な仕掛けなのだろう、と納得し、彼は両腰の短剣を引き抜いた。
今回は狭い所での戦闘が想定される。ならば、短剣の選択は間違っていないだろう。
だが、青い剣や大剣が役立たずという訳ではない。青い剣はいざとなれば短剣よりもリーチがある刺突武器にすればいいし、大剣は盾にすればいい。
「……さすが、調査されているだけあって目印がしっかりしているな」
通路や壁も石造りであった。転べば痛そうだな、と思いつつ、アルムはどんどん奥へと進んでいく。
調査隊が残している目印や、如何なる方法かは見当もつかないが壁に貼り付けられている羊皮紙で、道に迷うことはないだろう。
遺跡にありがちな罠の類も見当たらない。
「……見込み違いだったか?」
瞬間、アルムは後方へ短剣を振るった。手ごたえあり。
目の前で崩壊していく骸骨。これがイーリスから聞かされていた『スケルトン』なのかと、思い返しつつ、前に向き直ると、思わず苦笑してしまった。
「魔法で燃やせれば楽なんだろうな」
前方から歩いてくるスケルトン。その数、三体。各々、剣とでもいうのか、尖った長い骨を握っていた。
臆せず、駆けるアルム。今更スケルトンで怖がるつもりなど、ない。
全方向から致命傷確定の攻撃魔法を乱射してきた魔王ガルガディアに比べれば、これくらいで心拍数など上がる訳がない。
「――ッ!」
息を一吐き、一番近かったスケルトンの首を粉砕。二体目のスケルトンが振るってきた長い骨を受け止めつつ、三体目の両腕を破壊。その後、アルムは二体目の足を払い、態勢を崩した所を一気に砕いた。
「よし、行くか」
スケルトンとは恨みが骨に宿った魔物と聞く。この程度で完全に処理したとは思っていないアルムは、帰り道に起こるであろう再戦に嫌気がさす。
この戦闘が引き金にでもなったのだろうか、先ほどよりスケルトンに出くわす機会が多くなった。一体一体は大したことがない。だが、問題はその数。
「……戦闘に慣れていない奴だったら、少し苦しいかもな」
スケルトンが武器としている、あの尖った長い骨には間違いなく殺傷能力がある。あれで多方向から刺されでもしたら、身体に風穴が沢山出来るのは明白だ。
「ん?」
左右の分かれ道。辺りを見回しても、特に何か書かれている訳ではない。ここからは少しばかり、気を引き締めなければならない。
改めて短剣を握り直したアルムは、ひとまず右の道から攻めることにした。
「ぎいいやあああ!! 死ぬ! 死ぬ!! 私、死ぬ!!!」
遺跡全体を揺らしているのではないかというほどの声量で、女性の声が聞こえた。
行けば、必ずトラブる。今回の目標は、魔族かもしれない存在の調査。あわよくば魔王ガルガディアについての情報を聞き出す。
そうだ、自分には目的がある。それをそう簡単に、寄り道するなんてことは許されない。
「頼むから生きてろよ……」
左の道を走りながら、アルムは後味が悪くならないよう、祈りを込めて一言だけ呟いた。
現在、アルムは王都サイファルから離れていた。目的地は、馬車で三時間ほど揺られたところにある『シャルロン遺跡』。
中々に歴史を重ねている遺跡らしく、学識ある者が調査隊を作り、よく調査に赴いてるらしい。
戦うことだけが取り柄のアルムが何故、ここに来ているのか。それは、冒険者ギルドの一階である通称“酒場エリア”で耳にした情報にあった。
――シャルロン遺跡に翼の生えた人型の化物が出入りしている。
それを聞いた、そこそこ名のある冒険者達が好奇心で調査に行ったらしい。
結果は、失敗。帰って来た豪胆な冒険者達の顔が皆、青ざめており、中にはその場で冒険者登録を解除した者もいるときた。
(そこそこ腕のある奴らがそこまで怯えるということは、それだけの恐怖を与えられたということ)
恐怖、というのは様々な種類がある。
本能的な恐怖、そして人為的に引き出された悪質な恐怖など。恐らく冒険者達は、凄惨な目にあったのだろう。そうでなければ、稼業から足を洗うなんて決断が即、出来る訳が無いのだ。
(鬼が出るか蛇が出るか)
一人、言ちるアルム。
そう、今回は一人でやってきている。何せ、これから調査しようという相手が相手だ。
最悪、魔族とやり合うことになる。経験不足のイーリスは、まだ連れていけない。
その代わり、彼女にはウィスナと一緒に大型の魔物の討伐依頼を受けさせた。少しでも彼女の経験値となるように。魔王ヴァイフリングもいるのだ、心配することはないだろう。
「よう、兄ちゃん。着いたよ」
御者に呼びかけられ、到着を確認したアルムは、少し多めにお礼を払った後、四本の愛剣を装備する。
「じゃあ、俺は行くけど、気を付けろよ? この遺跡、前までは弱っちい魔物しかいなかったらしいのに、近頃ちょっと油断出来ないみたいだぞ」
「ありがとう。留めておく」
馬車が遠ざかっていくのを見送りながら、アルムは改めて遺跡の入口へ向き直る。
「入り口は……当然一つか」
ぽっかりとあいた石造りの大口。人が二人並んで入っても余裕があるくらいの大きさだ。
中に入ろうとすると、勝手に左右の松明に火が灯った。人に反応する魔術的な仕掛けなのだろう、と納得し、彼は両腰の短剣を引き抜いた。
今回は狭い所での戦闘が想定される。ならば、短剣の選択は間違っていないだろう。
だが、青い剣や大剣が役立たずという訳ではない。青い剣はいざとなれば短剣よりもリーチがある刺突武器にすればいいし、大剣は盾にすればいい。
「……さすが、調査されているだけあって目印がしっかりしているな」
通路や壁も石造りであった。転べば痛そうだな、と思いつつ、アルムはどんどん奥へと進んでいく。
調査隊が残している目印や、如何なる方法かは見当もつかないが壁に貼り付けられている羊皮紙で、道に迷うことはないだろう。
遺跡にありがちな罠の類も見当たらない。
「……見込み違いだったか?」
瞬間、アルムは後方へ短剣を振るった。手ごたえあり。
目の前で崩壊していく骸骨。これがイーリスから聞かされていた『スケルトン』なのかと、思い返しつつ、前に向き直ると、思わず苦笑してしまった。
「魔法で燃やせれば楽なんだろうな」
前方から歩いてくるスケルトン。その数、三体。各々、剣とでもいうのか、尖った長い骨を握っていた。
臆せず、駆けるアルム。今更スケルトンで怖がるつもりなど、ない。
全方向から致命傷確定の攻撃魔法を乱射してきた魔王ガルガディアに比べれば、これくらいで心拍数など上がる訳がない。
「――ッ!」
息を一吐き、一番近かったスケルトンの首を粉砕。二体目のスケルトンが振るってきた長い骨を受け止めつつ、三体目の両腕を破壊。その後、アルムは二体目の足を払い、態勢を崩した所を一気に砕いた。
「よし、行くか」
スケルトンとは恨みが骨に宿った魔物と聞く。この程度で完全に処理したとは思っていないアルムは、帰り道に起こるであろう再戦に嫌気がさす。
この戦闘が引き金にでもなったのだろうか、先ほどよりスケルトンに出くわす機会が多くなった。一体一体は大したことがない。だが、問題はその数。
「……戦闘に慣れていない奴だったら、少し苦しいかもな」
スケルトンが武器としている、あの尖った長い骨には間違いなく殺傷能力がある。あれで多方向から刺されでもしたら、身体に風穴が沢山出来るのは明白だ。
「ん?」
左右の分かれ道。辺りを見回しても、特に何か書かれている訳ではない。ここからは少しばかり、気を引き締めなければならない。
改めて短剣を握り直したアルムは、ひとまず右の道から攻めることにした。
「ぎいいやあああ!! 死ぬ! 死ぬ!! 私、死ぬ!!!」
遺跡全体を揺らしているのではないかというほどの声量で、女性の声が聞こえた。
行けば、必ずトラブる。今回の目標は、魔族かもしれない存在の調査。あわよくば魔王ガルガディアについての情報を聞き出す。
そうだ、自分には目的がある。それをそう簡単に、寄り道するなんてことは許されない。
「頼むから生きてろよ……」
左の道を走りながら、アルムは後味が悪くならないよう、祈りを込めて一言だけ呟いた。
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