四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

文字の大きさ
19 / 45

第18話 剣士、孤軍奮闘 その1

しおりを挟む
「……馬車に揺られるっていうのも中々良いな」

 現在、アルムは王都サイファルから離れていた。目的地は、馬車で三時間ほど揺られたところにある『シャルロン遺跡』。
 中々に歴史を重ねている遺跡らしく、学識ある者が調査隊を作り、よく調査に赴いてるらしい。
 戦うことだけが取り柄のアルムが何故、ここに来ているのか。それは、冒険者ギルドの一階である通称“酒場エリア”で耳にした情報にあった。

 ――シャルロン遺跡に翼の生えた人型の化物が出入りしている。

 それを聞いた、そこそこ名のある冒険者達が好奇心で調査に行ったらしい。
 結果は、失敗。帰って来た豪胆な冒険者達の顔が皆、青ざめており、中にはその場で冒険者登録を解除した者もいるときた。

(そこそこ腕のある奴らがそこまで怯えるということは、それだけの恐怖を与えられたということ)

 恐怖、というのは様々な種類がある。
 本能的な恐怖、そして人為的に引き出された悪質な恐怖など。恐らく冒険者達は、凄惨な目にあったのだろう。そうでなければ、稼業から足を洗うなんて決断が即、出来る訳が無いのだ。

(鬼が出るか蛇が出るか)

 一人、言ちるアルム。
 そう、今回は一人でやってきている。何せ、これから調査しようという相手が相手だ。
 最悪、魔族とやり合うことになる。経験不足のイーリスは、まだ連れていけない。
 その代わり、彼女にはウィスナと一緒に大型の魔物の討伐依頼を受けさせた。少しでも彼女の経験値となるように。魔王ヴァイフリングもいるのだ、心配することはないだろう。

「よう、兄ちゃん。着いたよ」

 御者に呼びかけられ、到着を確認したアルムは、少し多めにお礼を払った後、四本の愛剣を装備する。

「じゃあ、俺は行くけど、気を付けろよ? この遺跡、前までは弱っちい魔物しかいなかったらしいのに、近頃ちょっと油断出来ないみたいだぞ」
「ありがとう。留めておく」

 馬車が遠ざかっていくのを見送りながら、アルムは改めて遺跡の入口へ向き直る。

「入り口は……当然一つか」

 ぽっかりとあいた石造りの大口。人が二人並んで入っても余裕があるくらいの大きさだ。
 中に入ろうとすると、勝手に左右の松明に火が灯った。人に反応する魔術的な仕掛けなのだろう、と納得し、彼は両腰の短剣を引き抜いた。
 今回は狭い所での戦闘が想定される。ならば、短剣の選択は間違っていないだろう。
 だが、青い剣や大剣が役立たずという訳ではない。青い剣はいざとなれば短剣よりもリーチがある刺突武器にすればいいし、大剣は盾にすればいい。

「……さすが、調査されているだけあって目印がしっかりしているな」

 通路や壁も石造りであった。転べば痛そうだな、と思いつつ、アルムはどんどん奥へと進んでいく。
 調査隊が残している目印や、如何なる方法かは見当もつかないが壁に貼り付けられている羊皮紙で、道に迷うことはないだろう。
 遺跡にありがちな罠の類も見当たらない。

「……見込み違いだったか?」

 瞬間、アルムは後方へ短剣を振るった。手ごたえあり。
 目の前で崩壊していく骸骨。これがイーリスから聞かされていた『スケルトン』なのかと、思い返しつつ、前に向き直ると、思わず苦笑してしまった。

「魔法で燃やせれば楽なんだろうな」

 前方から歩いてくるスケルトン。その数、三体。各々、剣とでもいうのか、尖った長い骨を握っていた。
 臆せず、駆けるアルム。今更スケルトンで怖がるつもりなど、ない。
 全方向から致命傷確定の攻撃魔法を乱射してきた魔王ガルガディアに比べれば、これくらいで心拍数など上がる訳がない。

「――ッ!」

 息を一吐き、一番近かったスケルトンの首を粉砕。二体目のスケルトンが振るってきた長い骨を受け止めつつ、三体目の両腕を破壊。その後、アルムは二体目の足を払い、態勢を崩した所を一気に砕いた。

「よし、行くか」

 スケルトンとは恨みが骨に宿った魔物と聞く。この程度で完全に処理したとは思っていないアルムは、帰り道に起こるであろう再戦に嫌気がさす。
 この戦闘が引き金にでもなったのだろうか、先ほどよりスケルトンに出くわす機会が多くなった。一体一体は大したことがない。だが、問題はその数。

「……戦闘に慣れていない奴だったら、少し苦しいかもな」

 スケルトンが武器としている、あの尖った長い骨には間違いなく殺傷能力がある。あれで多方向から刺されでもしたら、身体に風穴が沢山出来るのは明白だ。

「ん?」

 左右の分かれ道。辺りを見回しても、特に何か書かれている訳ではない。ここからは少しばかり、気を引き締めなければならない。
 改めて短剣を握り直したアルムは、ひとまず右の道から攻めることにした。


「ぎいいやあああ!! 死ぬ! 死ぬ!! 私、死ぬ!!!」


 遺跡全体を揺らしているのではないかというほどの声量で、女性の声が聞こえた。
 行けば、必ずトラブる。今回の目標は、魔族かもしれない存在の調査。あわよくば魔王ガルガディアについての情報を聞き出す。
 そうだ、自分には目的がある。それをそう簡単に、寄り道するなんてことは許されない。

「頼むから生きてろよ……」

 走りながら、アルムは後味が悪くならないよう、祈りを込めて一言だけ呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...