四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第19話 剣士、孤軍奮闘 その2

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 アルムが疾走している一方、イーリスとウィスナの引き受けた依頼である『ブレードマンティス討伐』は佳境に差し掛かっていた。
 イーリスが後衛、ウィスナが二振りの魔剣を開帳してからの前衛。ひたすらウィスナがかく乱し、イーリスがサポートする布陣である。

「ウィスナさん! 三つ数えたら下がってください!」
「了、解」

 左右から襲い掛かるブレードマンティスの大鎌を大きく弾き、ウィスナは下がった。すると、魔物の足元から一際大きな水柱が立ち、その態勢を崩させた。

「『アクア・ウォール』……大きさを重視して、一本だけですが」
「……十分」

 身を捩じり、宙を舞うウィスナ。両の刀身からはそれぞれ炎と冷気が吹き荒れる。それが推進力となり、独楽のように回転した彼女は、がら空きのブレードマンティスの胴体へ刃を叩きつけた。
 炎の刃がズタズタに引き裂き、氷の息吹が強制的に固め、自然治癒を不可能とする。
 掴み取ったチャンスを、最大限のリターンとした二人の、文句の無い勝利であった。

「イーリス、良い魔法だった」
「ウィスナさんもばっちり決めてくれて助かりました! ありがとうございます!」
『うむ! 良き働きだったぞ魔剣使いよ! 我輩が褒めてやろう!』
「……ッ!? 誰? どこ?」

 謎の声の主を探すウィスナは、次の瞬間、イーリスから“にょきっと”現れた魔王ヴァイフリングを見て絶句する羽目となった。
 しばらく無言でいた彼女を見かねたヴァイフリングが、とうとう待ちきれず名乗った。おまけとして、紫色の少し長い髪をかき上げて。

『――我が名はヴァイフリング! 七つの極魔きょくまの担い手にして、全てのことわりへの反逆者なり!』

 半信半疑の眼差しを向けるウィスナ。その一方で、ヴァイフリングは予想通りとばかりに高笑いをあげ始めた。


 ◆ ◆ ◆


 アルムは女の絶叫がした左の道をひたすら走っていた。声の響き方からして、まだまだ遠くにいることだけは分かる。


「『アース・ブレード』! 『アース・ブレード』! あああああ! 私このままだと死ぬー!」


 非常に重々しい戦闘音だけは濃密に聞こえる。そろそろ近くまで来たのだろうか。アルムは両腰の短剣を引き抜いた。
 あと少し、あと少し……そして、光が見えた。

「なんだこれは……」

 広い場所に出た。すぐに前方を見ると、そこには一人と一体が今、まさに命のやり取りをしているところであった。

「……スケルトンとは違うようだな」

 ソレを一言で表すとすれば、巨大な骸骨の騎士である。
 先ほどのスケルトンたちのようなちゃっちいモノではない。円形の盾、そして直剣を持ったまさに“騎士”と呼んで差し支えの無いその風貌。
 対峙するのは、何やら背に見慣れない紋章の入った黒マントを纏う女性であった。

「死ぬー! 『パワーシールド』!」

 ツインテールに結っている藍色の長髪を振り乱しながら、女性は前方に魔法陣を展開し、骸骨騎士の剣を阻止する。かなりの強度らしい。ヒビすら入っているようには見えない。
 短剣を納め、大剣に切り替えるなり、アルムは骸骨騎士へと跳躍する。

「ォォォ!」

 無警戒の横っ腹ならぬ横っ骨へ、大剣を振るう。強烈な手ごたえ。身体を破壊されたことで、態勢を崩した骸骨騎士を背に、アルムは少女の元まで駆け寄る。

「助太刀だ。協力してさっさと倒すぞ」
「…………ょ」
「何か言ったか? 話なら後だ。まずはあのデカブツを沈めてから……」

 女性は、キッとアルムを睨みつけ、そしてのたまった。


「誰も助けてだなんて言ってないわ! 余計な事しないでよっ!」


「……ほう」
「あんな奴、私一人でもどうにかしてみせるわ! 引っ込んでなさいっ!」

 一発ぶん殴ってやれば、大人しくなるか? そんな物騒な考えを巡らせつつ、アルムは再び起き上がる気配を見せる骸骨騎士へと注意を向ける。

「ねえ、聞いてんの!? というか、私が誰か分かってそんなこと言ってんの!?」
「初対面のお前の事なんて知るものか。……それよりも。何だあの骸骨騎士は? 見る見るうちに身体を修復しているように見えるが」

 確実に身体を砕いたはずだったのだ。だが、既に骸骨騎士の身体は
 高い修復速度。これでアルムは納得いった。
 『アース・ブレード』という明らかな攻撃魔法を連続して放っていても全くの無傷に見えたのは、そういうことだったのだ。

「私だって分からないわよ! いくら『アース・ブレード』を打ち込んでも、ああやって回復するし……逃げようと思ってもあいつ、案外足早くて逃がしてくれないしで……」
「そうみたい、だな……ッ!」

 話の最中に飛び掛かってくる骸骨騎士。盾を前面に押し出し、剣を突き出してくる恰好。
 対抗すべく、アルムも跳躍。盾を一度蹴り、身を捻る。ウィスナがやっていた三次元殺法。
 そのままの勢いで、彼は大剣を構え、縦に回転した。

「頭なら、どうだ……!」

 回転斬りは脳天を的確に捉え、大きな亀裂を入れる。だが、着地したころにはその亀裂も塞がっていた。

「そういうことか」

 この類の敵との戦闘経験は豊富である。何せ、魔王ガルガディアの幹部達は皆、完膚なきまでにきっちり潰さないとすぐに傷が癒えるような手合いばかりだったのだ。

 ――そして、この敵は恐らくあの戦法を取れば良い。

「そこのマント、やっぱり手伝ってくれ」
「私の獲物に手を出さないでよっ! 一人でやれなかったら、私は――」
「言ってる場合か! ……ああ、それともあの骸骨騎士を潰せる力量じゃないってことか? だったら悪かった、俺一人でやる!」
「ふざけないで頂戴!! さくっと潰してやるに決まってんでしょ!」

 してくれたことに、内心口角を吊り上げたアルムは、改めて彼女の隣へと位置取りをする。
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