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第21話 剣士、再び遺跡へ その1
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「あの骸骨の騎士を打ち倒されましたか……」
アルム達が去った後の広場に、一人だけ立っている存在がいた。
鳥の頭以外は礼服を纏った人間のように見える。だが、その纏う雰囲気は明らかに常人のソレではなく。
「危なかった、というのが本音ですね。よもや隠していた通路を見つけられるとは思いませんでした」
『シャルロン遺跡』とは実に都合のいい隠れ家なのだ。なるべく離れたくはない。だからこそ、何重にも視覚に訴えかける隠蔽魔法を掛けているのだ。
だというのに、
「あの人間の女性、中々に目ざとい。まさか私が仕掛けた隠蔽魔法全てを解除して突き進んでくるとは」
故に、仕掛けた。このシャルロン遺跡で過去に死に、彷徨っていた騎士の魂を強制的に特別製のスケルトンに定着させたのだ。
途中までは良かった。あの調子ならば、始末出来ていた。
「あの四本剣の剣士、彼が介入してきてから全て崩れてしまった」
隠れて戦いぶりを見ていた。凄まじいの一言に尽きる。終始圧倒していたのに加え、まだ全力でないように見えた。その辺りの人間ならば、まず勝てないように、能力に多少の補正を加えてやったというのに、だ。
「……邪魔ですね。私の経験上、ああいった輩は必ずまたここへ来ます。そうなれば、隠していたアレが見つかってしまう」
鳥の頭を持つ存在は、おもむろに手近な瓦礫へ手を翳し、握りつぶす動作をした。それだけで、瓦礫は爆ぜる。破片すら残っていない。
「次ここへ足を運んだら、殺しましょう。必ず殺す。この――」
礼服の背の一部が裂け、そこから現れたのは巨大な漆黒の翼。それだけで、遺跡内にいたスケルトン達が瓦解していく。下等な魔物は存在している事すら許されぬ、とばかりに。
「『魔王の爪』幹部にして、侯爵級魔族であるシャロウが必ずや障害を排除し、そして魔王ヴァイフリング様を復活させるのだ」
◆ ◆ ◆
いつも通り、冒険者ギルド一階にある酒場の一角に集まるアルムとイーリス、そしてウィスナ。今は、昨日の報告会を行っている最中だ。
「ブレードマンティスを倒したのか。やるじゃないか」
「ウィスナさんがすごく助けてくれたおかげですよ!」
「……イーリスも、ナイスアシスト」
「今後もよろしくお願いしますね!」
すっかり仲良くなっていた二人を見て、一度頷くアルム。こと仲間との連携の成否は、信頼の強さに直結している。
これならば、これからの依頼でも十分、協力していけるだろう。
「……待て。今後も、だと?」
それを聞いたウィスナが頬を膨らませる。
「…………そもそも、アルムが本気で戦ってくれないのが、悪い」
「言っただろう。お前がまだ、俺のレベルに達していないから、何回やっても同じ結果になると」
「アルムが“本気で戦う”、と言うまで私は付きまとう」
「……冗談だろ?」
「……冗談に、見える?」
ウィスナの、アルムを見る目がジトーっとしたものに変わっていく。
このままでは、泥沼になってしまうことが目に見えていた彼は半ば強引に話題を変える。
「それは追々、だ。俺は今日もまた『シャルロン遺跡』へ行ってくる」
「私も行きます!」
「……私も、行く」
「駄目だ今日も別行動だ」
そう来ると思っていた彼は、ぴしゃりとシャットダウン。あの遺跡、最後まで調査出来なかったが、やはり怪しいという結論が出ていた。
一度帰還した後、冒険者ギルドにいる冒険者達からあの骸骨騎士について話を聞いて回ってみた。すると皆、口を揃えて言うのだ。
――今まで、そんな魔物と出くわしたことが無い、と。
話を聞いた冒険者の中に、あの遺跡の調査隊の護衛をやっていた者がおり、やはりその人物も“見たことがない”ということであったのだ。
そんな存在が急にポン、と現れるなんて普通はあり得ない。
となれば、やはりいるのだ。“何か”が。
「アルムさん、お願いしますよー! 足は引っ張りませんから!」
「……私も、邪魔にはならないから」
「もしかしたら魔族が出てくるかもしれないんだ。危険すぎる」
膠着状態。その時、アルムの脳内に声が聞こえて来た。
『アルムよ。イーリス達を連れていけ。我輩もそこには興味がある』
「……ほら、ヴァイフリングもそう言っている」
「待て、ウィスナ。お前いつ知ったんだ?」
「この前の、ブレードマンティスの時」
『そこなウィスナとやら、中々肝が据わっていてな。我輩が名乗っても眉一つ変えなかったわ』
すると、ウィスナが自然と腰の剣に手を掛けながら、
「……いつか魔王とも、戦ってみたい」
そもそも戦闘が好きなのか、とアルムは妙な納得をしてしまい、溜息を洩らした。それならば、恐らく本当にいつまでも付きまとわれる可能性が大きくなってきた。
「ヴァイさん、昨日から言っているんですよ。同類の匂いを感じるって」
「……本当か?」
『謀反の中に、闇討ちも当然入っていたからな。そういう気配にはいくら遠くても敏感なのだ、我輩』
「だとすれば、尚更だ。こいつらには危険すぎる」
『アルムよ、それはおかしな話ではないか?』
魔王がきょとんと、首を傾げる。
『戦いは数だ。イーリスとウィスナは、我輩の眼から見てもそこそこの働きをする。対して貴様はこいつらを護れない程、腕に自信が無いのか? それならば尚の事、複数で対処するのが普通だと考えるが』
純粋に戦いに向き合っていただけに、ヴァイフリングの意見にぐうの音も出なかったアルム。そして、今しがた魔王が述べた“戦いは数”、とは自分も持っている意見であり。
少しばかり、焦っていたのかもしれない、とアルムは自然と天井を見上げていた。
「……ヴァイフリングの言葉を聞くのは非常に癪だが、一理ある。三人で行くぞ」
その言葉に、イーリスとウィスナは手を叩き合って喜んでいた。
危険な場所に行くかもしれないというのに、何とも緊張感に欠けた二人を眺めながら、改めて『シャルロン遺跡』の事を考える。
「いいえ! 私も行くから四人よ!」
非常に聞き覚えのある声に、アルムは心底逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
ギギギ、と重苦しい音を立て、声のした背後を振り返ると――、
「アルム・ルーベン! 私も連れて行きなさい!」
案の定、エイル・ルスボーンが仁王立ちしていた。
アルム達が去った後の広場に、一人だけ立っている存在がいた。
鳥の頭以外は礼服を纏った人間のように見える。だが、その纏う雰囲気は明らかに常人のソレではなく。
「危なかった、というのが本音ですね。よもや隠していた通路を見つけられるとは思いませんでした」
『シャルロン遺跡』とは実に都合のいい隠れ家なのだ。なるべく離れたくはない。だからこそ、何重にも視覚に訴えかける隠蔽魔法を掛けているのだ。
だというのに、
「あの人間の女性、中々に目ざとい。まさか私が仕掛けた隠蔽魔法全てを解除して突き進んでくるとは」
故に、仕掛けた。このシャルロン遺跡で過去に死に、彷徨っていた騎士の魂を強制的に特別製のスケルトンに定着させたのだ。
途中までは良かった。あの調子ならば、始末出来ていた。
「あの四本剣の剣士、彼が介入してきてから全て崩れてしまった」
隠れて戦いぶりを見ていた。凄まじいの一言に尽きる。終始圧倒していたのに加え、まだ全力でないように見えた。その辺りの人間ならば、まず勝てないように、能力に多少の補正を加えてやったというのに、だ。
「……邪魔ですね。私の経験上、ああいった輩は必ずまたここへ来ます。そうなれば、隠していたアレが見つかってしまう」
鳥の頭を持つ存在は、おもむろに手近な瓦礫へ手を翳し、握りつぶす動作をした。それだけで、瓦礫は爆ぜる。破片すら残っていない。
「次ここへ足を運んだら、殺しましょう。必ず殺す。この――」
礼服の背の一部が裂け、そこから現れたのは巨大な漆黒の翼。それだけで、遺跡内にいたスケルトン達が瓦解していく。下等な魔物は存在している事すら許されぬ、とばかりに。
「『魔王の爪』幹部にして、侯爵級魔族であるシャロウが必ずや障害を排除し、そして魔王ヴァイフリング様を復活させるのだ」
◆ ◆ ◆
いつも通り、冒険者ギルド一階にある酒場の一角に集まるアルムとイーリス、そしてウィスナ。今は、昨日の報告会を行っている最中だ。
「ブレードマンティスを倒したのか。やるじゃないか」
「ウィスナさんがすごく助けてくれたおかげですよ!」
「……イーリスも、ナイスアシスト」
「今後もよろしくお願いしますね!」
すっかり仲良くなっていた二人を見て、一度頷くアルム。こと仲間との連携の成否は、信頼の強さに直結している。
これならば、これからの依頼でも十分、協力していけるだろう。
「……待て。今後も、だと?」
それを聞いたウィスナが頬を膨らませる。
「…………そもそも、アルムが本気で戦ってくれないのが、悪い」
「言っただろう。お前がまだ、俺のレベルに達していないから、何回やっても同じ結果になると」
「アルムが“本気で戦う”、と言うまで私は付きまとう」
「……冗談だろ?」
「……冗談に、見える?」
ウィスナの、アルムを見る目がジトーっとしたものに変わっていく。
このままでは、泥沼になってしまうことが目に見えていた彼は半ば強引に話題を変える。
「それは追々、だ。俺は今日もまた『シャルロン遺跡』へ行ってくる」
「私も行きます!」
「……私も、行く」
「駄目だ今日も別行動だ」
そう来ると思っていた彼は、ぴしゃりとシャットダウン。あの遺跡、最後まで調査出来なかったが、やはり怪しいという結論が出ていた。
一度帰還した後、冒険者ギルドにいる冒険者達からあの骸骨騎士について話を聞いて回ってみた。すると皆、口を揃えて言うのだ。
――今まで、そんな魔物と出くわしたことが無い、と。
話を聞いた冒険者の中に、あの遺跡の調査隊の護衛をやっていた者がおり、やはりその人物も“見たことがない”ということであったのだ。
そんな存在が急にポン、と現れるなんて普通はあり得ない。
となれば、やはりいるのだ。“何か”が。
「アルムさん、お願いしますよー! 足は引っ張りませんから!」
「……私も、邪魔にはならないから」
「もしかしたら魔族が出てくるかもしれないんだ。危険すぎる」
膠着状態。その時、アルムの脳内に声が聞こえて来た。
『アルムよ。イーリス達を連れていけ。我輩もそこには興味がある』
「……ほら、ヴァイフリングもそう言っている」
「待て、ウィスナ。お前いつ知ったんだ?」
「この前の、ブレードマンティスの時」
『そこなウィスナとやら、中々肝が据わっていてな。我輩が名乗っても眉一つ変えなかったわ』
すると、ウィスナが自然と腰の剣に手を掛けながら、
「……いつか魔王とも、戦ってみたい」
そもそも戦闘が好きなのか、とアルムは妙な納得をしてしまい、溜息を洩らした。それならば、恐らく本当にいつまでも付きまとわれる可能性が大きくなってきた。
「ヴァイさん、昨日から言っているんですよ。同類の匂いを感じるって」
「……本当か?」
『謀反の中に、闇討ちも当然入っていたからな。そういう気配にはいくら遠くても敏感なのだ、我輩』
「だとすれば、尚更だ。こいつらには危険すぎる」
『アルムよ、それはおかしな話ではないか?』
魔王がきょとんと、首を傾げる。
『戦いは数だ。イーリスとウィスナは、我輩の眼から見てもそこそこの働きをする。対して貴様はこいつらを護れない程、腕に自信が無いのか? それならば尚の事、複数で対処するのが普通だと考えるが』
純粋に戦いに向き合っていただけに、ヴァイフリングの意見にぐうの音も出なかったアルム。そして、今しがた魔王が述べた“戦いは数”、とは自分も持っている意見であり。
少しばかり、焦っていたのかもしれない、とアルムは自然と天井を見上げていた。
「……ヴァイフリングの言葉を聞くのは非常に癪だが、一理ある。三人で行くぞ」
その言葉に、イーリスとウィスナは手を叩き合って喜んでいた。
危険な場所に行くかもしれないというのに、何とも緊張感に欠けた二人を眺めながら、改めて『シャルロン遺跡』の事を考える。
「いいえ! 私も行くから四人よ!」
非常に聞き覚えのある声に、アルムは心底逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
ギギギ、と重苦しい音を立て、声のした背後を振り返ると――、
「アルム・ルーベン! 私も連れて行きなさい!」
案の定、エイル・ルスボーンが仁王立ちしていた。
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