四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第22話 剣士、再び遺跡へ その2

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 冒険者ギルドの酒場エリアの一角。
 アルムやイーリス、ウィスナが座っているテーブルに一人の女性が立っていた。
 何を隠そう、あの遺跡で共に戦ったエイルであった。だが、その表情はとても穏やかなものでは無くて。

「アルム・ルーベン! 私に対して、何か言うことあるわよね!?」
「久しぶりだな。あの後、ちゃんと無事に帰れたのか?」

 ぶちり、とエイルの中で何かが千切れた音がした。

「何が無事に帰れたのか? よ!! 貴方、私に何したか覚えててそれ言ってるんでしょうね!?」
「え、アルムさん……?」
「待て、イーリス」

 イーリスが青ざめ、

「……アルム、もしかして女の敵?」
「誰の敵でもないぞ」

 ウィスナがジト目になり、

『ほう。興味ないと思っていたが、貴様も中々色を好むではないか』
「くたばれ」

 魔王がカラカラと笑う。
 これでは明らかに誤解されるので、アルムは仕方ないので、まともに相手をすることにした。

「イーリス、ウィスナ。こいつは昨日遺跡で会った奴で――」
「エイルよ。得意なのは攻撃魔法。趣味は、魔力を効率よく運用するための研究」

 名前を言う前に、彼女が喋ってくれたので、少しばかり手間が省けた。

「まあ、それで色々あってこのエイルと、例の骸骨騎士を倒したんだ」
「そうだったんですね! エイルさんすごいです!」
「……中々、やる」

 二人からの素直な称賛に、エイルの頬がみるみるうちに紅く染まる。あまり褒められ慣れていないのか、どこか落ち着かない様子で視線を宙や地面に行ったり来たりさせていた。

「照れてるのか?」
「ちっがうわよ! というか話を逸らさないでよっ!」

 照れたり怒ったり、良く感情が動く奴だなとアルムは他人事のように見ていると、彼女から指で示された。

「貴方! 王都サイファルの門まで私を連れて来たと思ったら、そこであろうことか動けない私を地面に置いて、どっかに歩いていったわよね!?」
「人聞きが悪いぞ。門番に預けていっただろう」
「だからと言って、一言もなしに去っていく阿呆がいるかー!」

 イーリスと、そしてウィスナからの視線が痛くなってきた。それとは真逆にヴァイフリングの笑い声が脳内に響いてくるのも頭が痛くなってくる。

「……アルム、鬼畜。だから私とも戦ってくれないんだ」
「いや、ウィスナさん、それとこれとは……。でもアルムさんも、ちょっと配慮が足りないというか、人に対する優しさというものが……そのぅ、あはは」
「……分かった。分かりました。俺が悪かった。すまなかった」

 三対一。この構図は戦闘でも、話し合いでも圧倒的不利を意味する数字である。
 ここまで言われては、段々判断が間違っていたのだと思ってきて。だからこそ、これ以上悪化する前に、頭を下げることにした。
 すると、また脳内に、ヴァイフリングの声が響いてきた。

『……貴様ってあれだな。戦闘面は全盛期の我輩にも喰い掛かれそうな程だというのに、こういう場面では哀れなくらい弱いな』
(くたばれ)
『あー! 貴様ー! 二度もくたばれって言いおったなー! しかも皆に聞こえぬよう喋らず、思念でだけだなんて陰湿極まりないぞ!』

 そこからは一切、魔王の抗議は取り合わず、彼はエイルを再び見る。

「話を戻すか。お前も連れて行け、だと?」
「ええ。貴方、またあの遺跡の奥に行くつもりでしょう?」
「もちろんだ。あそこはどうも妙な感じがする。あんな骸骨騎士まで出て来た以上、確かめない訳にはいかない」
「そういうことなら私も同じ目的よ」

 アルムはこのタイミングで、そもそも何であそこにいたのかを彼女に尋ねてみることにした。

「同じ目的? お前も何か感じていたのか?」
「ええ。具体的にはあの広場の奥。暗くて見えなかったけど、それでもじわじわと感じたあの嫌な魔力の質は今でも忘れられないわ」
「嫌な魔力……」

 魔力の大きさを感じることくらいは出来るが、そう言った細かな所までは全く気づけなかったアルムは、これで余計にあの遺跡へ感じていた疑惑が固まっていくのを感じた。

「なるほど……やはり、今日にでもケリをつけておいた方が良い類の案件だったか」
「正体が何であれ、あんな嫌な魔力を垂れ流しているのよ? 放っておけるわけないわ」

 それに――そこで、エイルは一瞬言葉を詰まらせる。

「貴方の腕は、まあ……そこそこだったし? 行くからには万全を期して行きたいのよ。性格は最悪中の最悪だけど」
「……普通、最後の方は小声で喋るもんじゃないのか?」
「アルムさん!」

 そう言い、イーリスは立ち上がった。それにつられ、ウィスナも。

「やはりお手伝いさせてください! そんな危険そうな場所に、アルムさんとエイルさんだけでは行かせられません!」
「……私も、絶対行く。もしかしたら格上と戦える、かもしれない。この機会は……逃せない」

 彼女達の眼は、もう何をどう言っても絶対に聞かないという強い意志に満ち溢れていた。
 そんなモノを見せられては、これ以上は野暮となるだろう。

「隠れてでも付いてきそうだな。……仕方ない」

 それをと受け取った二人は、どこかホッとしたような表情をしていた。
 ただし、とアルムは人差し指を立てる。

「俺の言う事には絶対に従ってもらう。今回ばかりは大怪我レベルでも済まないかもしれないからな。そして――」

 彼はエイルへ視線を移す。

「連れて行くのは良いが、しっかり働いてもらうぞ」
「ふん」

 彼女の表情は今までとは打って変わり、真剣なモノとなっていた。

「こと魔法において、私が手を抜くだなんてあり得ないから」
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