四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第25話 剣士、『黒鳥』と対峙する その2

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 アルムがシャロウと交戦を開始した一方。
 イーリス達もまた、別の広場に連れてこられていた。

「ここは……どこなんでしょうか?」
「あの時の骸骨騎士と戦った時の場所? ……いいえ、それにしては破壊した形跡が無いわ」

 イーリスとエイルが喋っている間に、ウィスナは一人で広場の真ん中まで歩いていた。

「ちょ、ウィスナさん!? 危ないですよ!」
「……大丈夫。特に気配は感じない」

 言いながら、彼女は辺りを見回した。何かおかしな気配があれば、即刻斬り掛かるつもりで索敵をしていたのだが、そういった相手は一切見つからない。
 それどころか、

「……気配はしない、けど魔力が辺りに満ちて……いる? そういえばここ、出口あるの?」
「え、そりゃあもちろん……あれ? 無いですね」
「出口が無い……けど、魔力が満ちている」

 エイルが天井を見上げ、それから周りの石壁を注意深く観察した。そして、彼女は一度頷いたかと思えば、人差し指を壁の方へ突き出した。

「内から出でる一矢ひとや――『エナジー・アロー』」

 極小の魔法陣が現れたかと思えば、そこから鋭い風切り音と共に魔力の矢が飛翔し、石壁に突き刺さる。だが、残念ながら魔力の矢はただ霧散するだけで、状況が動くことはなかった。
 その有様を見たエイルはイーリス達の方へ振り向く。

「魔法ね、これ」
「今ので分かったのですか?」
「ええ、これは隔離魔法『インディペンドルーム』。一時的に別の空間へ部屋を作り、そこに放り込む魔法よ。ただ、術者がしょぼいと部屋の維持なんて数分持てば良い方の難しい魔法だけど」

 ウィスナも試しに壁目掛けて剣を振るってみたが、ただ弾かれるだけで、傷一つ付いていない。それを見ていたエイルが彼女の近くまで歩いていく。

「無駄よ。この魔法は時間が経つか、もしくは外部からの干渉、そして最後に――」


「――術者であるこの私を倒す、の三択ですね」


 唐突に響き渡る声。
 反射的に、ウィスナは二振りの魔剣を解放し、部屋の中央へ疾走していた。中央には誰もいない。だが、彼女の研ぎ澄まされた勘が、二刀を振るわせる。

「良く気付かれました」

 何も無い空間を斬ることはなく、剣は大きな黒翼に阻まれる。
 剣を握る手に力を込めるも、翼はびくともしない。次の瞬間には、ウィスナの身体は石壁まで吹き飛ばされていた。

「ウィスナさん!」
「……大丈夫。頑丈さには、自信がある」

 すぐに起き上がったウィスナが再び構えるのを見て、ひとまず安心したイーリスは自分も槍を構えた。

「貴方は何者なの? 明らかに魔物には見えないし、人間にも見えないんだけど」

 いつでも攻撃魔法を放てるようにさりげなく準備しつつ、エイルが毅然たる態度で問いかける。

「私の名はシャロウ。魔王ヴァイフリング様を復活させる『魔王の爪』幹部にして、侯爵マーキス級の称号を頂いております」

 その名乗りに、三人は固まった。
 魔族――ただでさえ強力な存在だというのに、三人の前に立つのは、その上位存在である『階級持ち』。
 控えめに言って、勝負にすらならない。ウィスナが軽く吹っ飛ばされたのが良い根拠である。

「貴方達を殺す気はとりあえずはありません。用があるのはあの四本剣の剣士だけですからね」
「アルムさんを!?」

 イーリスは内心、焦りが生まれ始めてきたが、それをグッと抑え込む。
 アルムは今、一人。あの魔族の言うは確かに気になる。だが、彼ならば――それだけを信じるしかなかった。

(ヴァイさん……私達、無事に帰れますかね?)

 遺跡に入ってから、一度も言葉を発しないヴァイフリング。一体何を考えているのだろうか、それが一切分からない。
 イーリスが内心、ヴァイフリングに語り掛けていると、突然シャロウと目が合った。

「……先ほどから気になっていたのですが、そこの茶髪の彼女」
「何でしょうか?」
「……いえ、私の気のせいでしょう。まさか人間如きから感じる魔力があの方と似ているだなんてあり得ない」

 思い当たる事、しかなかった。
 自分の内に存在する魔王ヴァイフリング。彼は以前こう言っていた。

 ――魔力が減らなくなるのは当たり前だ。何せ、我輩の魔力が流れているからな。

 これが本当ならば、もっと疑り深い魔族を相手にした時、可能性が出てくる。

「まあ、良いでしょう。皆さんには向こうが終わるまで、大人しくしてもらいます。安心してください、こっちの私はあなた方に危害を加えるつもりはありませんので」

 どこか信じられるものがあった。シャロウの言葉通り、何もしなければきっと無事に帰れるのだろう。
 しかし――イーリスはウィスナを見る。彼女の答えは既に決まっている。
 エイルを見る。彼女の答えもどうやら決まっていたらしい。
 では自分自身イーリスはどうだ。胸に手を当ててみた。すると、自然と浮かんだ答えに、何の迷いも感じることはなかった。

「……ふふ」
「おや? 何か可笑しいことでもありましたか?」
「はい、とても良い事がありました」

 槍を握り直したイーリスは、一歩踏み出した。それに呼応するように、魔剣を構えたウィスナが、魔法発動の体勢を取ったエイルも、前に出る。


「シャロウさん、私達は――貴方を倒します」
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