四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第39話 剣士、話を纏めたい

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「それで、何から聞きたいんだい?」

 何かが認められたのか、そこからのカミルは協力的だった。聞きたいことは何でも教えてくれた。おまけにウロも話に加わり、彼女の情報に補足を入れてくる。
 それらの情報を統合すると、彼らの言うガルムとは非常に穏やかな人物であることが見えて来た。
 ガルムとはこの辺りの身寄りのない獣人を集めて衣食住を提供している、所謂孤児院を営んでいる。人相書きの強面とは裏腹に虫すら殺すことを躊躇する優しい性格と聞けば、確かに人攫い呼ばわりは激怒されて当然だなとアルムは納得する。
 むしろ、良く殺しに来なかったものだと彼は心の底からそう思えた。

「……何で人攫いの疑いなんか掛けられているんだ?」
「そりゃアタシたちが聞きたい話だよ! ふざけんな!」

 当然の反論をぶつけられ、流石に黙らざるを得なかったアルムは、改めて情報を纏める。

「何だか俺の抱いていた第一印象とはだいぶかけ離れた人物像だという事は分かった」
「当然さ、ガルムがそんな事やらかすような奴じゃないんだよ……」
「最近、何か変わったことは無かったのか? 思い出せる限りで良いから思い出して欲しい」

 獣人達は皆、考えた。するとその内の一人が何かを思い出したように手を叩く。

「うーん……大したことじゃないと思うんだが」

 狐の尻尾を自信なさげに揺らしながら話を切り出す獣人。
 話は二週間も前に遡るという。
 ガルムにはいつも町を歩いては身寄りのない子供が捨てられていないかどうかを探すという習慣がある。几帳面な性格から、必ず同じルートを巡回する。長年の経験を生かし、導き出した効率的なルートなのだ。
 狐の獣人はガルムの御付的な存在で、よく巡回について回っていた。彼が違和感を抱いたのはその時。

「ガルムが巡回ルートを変えた……」

 獣人の言葉を反芻するアルム。事前情報が無ければ単に気分転換だろうと思えるが、そこまで几帳面な性格ならばその小さな違和感は大きな疑問へと昇華される。

「何でそんな事を黙ってたんだい!」
「ゆ、許してくれよカミル! 俺もついさっき思い出したんだよ!」
「落ち着けカミル。それで、その時のガルムは何をしていたんだ?」
「いや特段大したことは……いや、待て。そういえば何か様子が変だったような…確か、ぶつぶつ呟いていた?」

 この際何でも情報が欲しかったアルムは思い出してもらうまで、少しこれからの動きについて頭を回すことにした。
 別にシアンと定時報告の約束はしていないが、どうにもこのガルムには何か事情がありそうだという結論に達していた彼は、別の視点に立ってみる必要があるのではないかという結論に至った。

「“ザグ、リグ、ガグ”……そうだ、何かこんな感じの事を呟いていたような」
「ざぐ、りぐ……何だそれは?」
「さあ? 何なんだろうな。とりあえず情報はこんなものか」
「おい四本剣の」
「何だ?」

 ずいとカミルが顔を近づけて来た。何かの香水でも付けているのか、甘くてだけど刺激的な香りがアルムの鼻腔をくすぐる。
 ここまで来て、何を言うのかと少々構えたがそれは彼の杞憂に終わった。

「ガルムはアタシらにとっちゃ父親であり親友であり、兄貴のような存在だ。だから、何か分かったら教えてくれ。頼む」
「お、おいカミル! 人間にそんな事を言うだなんて!」
「黙ってなウロ。アタシらが思っている以上にもしかしたらガルムはヤバい事に巻き込まれているのかもしれないんだ。無事に戻ってくる可能性があるならアタシは土下座でも何でもしてやるよ」

 言葉の綾とはいえ、獣人が人間に土下座。今までのやり取りから考えればきっとそれはとてもプライドが必要なことのはず。そこまでの事をされて、何も思わないアルムではなかった。

「……なるべく努力はしよう」

 確かな約束と共に、彼は一先ずもう一杯水を頼むことにした。


 ◆ ◆ ◆


「さて、あいつはどこに行けば会えるんだろうな」

 西区間を後にし、シアン・リーズファを探すアルム。とはいっても、この広い王都サイファルでそんなにホイホイ見つかる訳もなく、ただただウロウロしているだけになってしまっていた。
 冷静に考えれば、治安維持部隊隊長ともあろう者がそんなにホイホイ会えるなんてあり得ないのだが。
 歩きながら、アルムは西区間を出る直前のウロの言葉を思い出す。

 ――そう言えば俺も思い出したんだが、いなくなる直前のガルムは常に顔色が悪かったような気がする。

 何かと関係するのか分からないが、とりあえず頭の片隅に留めておいてきっと損は無いのだろう。しばらく考えてみたが、特に何も浮かばない。
 一旦冒険者ギルドに戻ってみようか、そんな事を考えていると、ふと穏やかではないやり取りが耳に入ってくる。

「なあ姉ちゃん、そこのリンゴ買ったよな!? だったら10万エルドをしっかり払ってもらおうじゃねえか!」
「リンゴがそれくらいの値段って~ありえますか~?」
「ゴンディラさんの店で買うんだそれくらいはあるんだよ!」

 ガラの悪そうな大男たちに囲まれている少女を見て、驚くアルム。桃色のボブヘアーやゆったりとしたワンピース型の服の上にローブという出で立ちに目を奪われがちだが、一番彼が目を引いたのはその
 話だけは聞いていてまだ一回もお目に掛かったことがない種族――耳長族エルフの少女だと気づいたのは、すぐのことであった。
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