四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第40話 剣士、耳長族と出会う

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 現在、状況は決して良いとは言えなかった。耳長族エルフの少女一人に対し、屈強な大男が数人囲み、それを遠巻きに見つめるでっぷりとした体格の男。
 聞こえてきた会話の内容から、法外な値段を吹っ掛けて因縁をつけることが主な目的の集団だと気づいたのは一瞬であった。
 ちらっと周りの様子を見るが、皆見て見ぬふりをするだけで少女を助ける気が一切ないのが見て取れる。確かに一理ある。面倒ごとに巻き込まれるのは誰でも御免である。アルム自身、不要な因縁は作らないに越したことはない。
 そのまま通り過ぎるだけで良い。たったの一瞬の動作で、アルムはこの面倒ごとに巻き込まれることはない。

「こんな大人数で女の子を囲むだなんて、随分と暇なんだお前らは」

 返事の代わりに、囲まれるアルム。全員の手にはナイフが見える。大人数で囲み、武器で脅す、効果的なやり方だが気に食わない。
 そのような理不尽が目の前で行われているのに、素通りするという考えはあり得ない彼は、少女の前に陣取る。

「こういう商売がウリならばさっさと止めた方が良い。後ろ指を指されるのも嫌だろう?」
「ほう?」

 アルムの近くにいた大男の一人がこめかみに青筋を浮かべる。既に大男に脅しの言葉は無かった。元々強盗殺人経験者の男には躊躇の二文字は無く、さっさとという考えしかなかった。
 おもむろに、大男の右腕は動いた。さっさと目の前のコバエを追い払うために。

 だが、それを上回る速度で、アルムは短剣を閃かせていた。

「なっ……!」

 電光石火の早業。アルムは自分の首に刃が届くよりも早く、凶刃を宙に舞わせていた。彼の眼からすれば遅いも遅い。欠伸が出るほどである。
 ナイフが地面に落ちた頃合いを見計らいアルムは一言。

「プロだな。だけど三流だな、俺ならもっと早く抜けるぞ」
「このガキ……!」
「そしてそこの奴」

 でっぷりとした体格の男へ指さし、アルムは言う。

「この程度の奴らを護衛につけて、女一人が脅されているのを見るだなんて、育ちが知れるぞ」
「ほっほっほ。勇気がある少年よ、このワシ――ゴンディラの名を知っているのか? 今ならまだ土下座の一つでも見せてもらえれば、見逃してやろうではないか」

 下卑た笑みを浮かべるゴンディラの顔を見ていれば、そんな慈悲などくれる訳が無いのは良く分かる。そして、そんな事をするアルムでもなかった。
 彼は、そのまま両の短剣を構える。

「見逃してやる、はこちらの台詞だが?」
「殺せ」

 背を向け、宣告するゴンディラ。その言葉はまるで飼い犬の首輪を切るようなものだった。暴力を肯定された男たちは一斉に襲い掛かる。

「え、えぇ~……」

 一方、耳長族エルフの少女はただただ事の成り行きを見守っているしかなかった。
 元はと言えば、怪しそうなお店からリンゴを買った自身の落ち度で、どう状況を切り抜ければ良いのか、悩んでいた矢先に現れた男。
 右腰に短剣、左腰には短剣と青い剣、背には大剣。計四本の剣を備えた男は一切臆せず、話に割って入ってくれた。
 その代償は大きく、今目の前で男が殺されようとしている。これも全て自らが招いたことというのは良く分かっていた少女は、己の中のを巡る魔力を活性化させる。

(私のせいであの人にご迷惑を~……せめて、私が手助けをしなくちゃ~……)

 少女には多少なりともがある。しかしそれは人間に向けて撃つには少しばかり躊躇われるレベルで。
 だが、そんな事は言っていられなかった。例え傷つける事になろうとも――しかし、ささやかな少女の決意はすぐ無駄になった。

「……それで、これが最後か?」

 ばたりと倒れる大男。既にアルムの足元には三人が寝ていたので、これで最後となる。
 彼からしてみれば準備運動にもならなかった。多少の心得はあるようだが、それまで。一言で言えば、経験値が違い過ぎた。
 軽く撃退したアルムはけしかけてきたゴンディラを詰めるべく、立っている方向へ顔を向けるも、既に姿を消してしまっていた。この類の輩の逃げ足の速さはどこの世界でも共通なのだろう、とぼんやり思うアルム。

「さて、場所を変えようか。こいつらがいつ目を覚ますか分からないからな」
「はい~ありがとうございます~」

 耳長族エルフの少女の間延びした口調に、アルムは何となく勢いが削がれてしまう感覚になった。イーリス達とはまた違う声質も影響しているのも大きいのだろう。彼女の声は綿菓子のようにふわふわとした甘い甘い声なのだ。
 話を纏めると、調子が狂うという一言に尽きた。

「何でまた、絡まれるようなことになったんだ?」
「それはですねぇ~あのリンゴが美味しそうだな~と思って。それで適当に取ったら~手に取った時点でもう購入確定~! みたいなことを言われたの~」
「そうか……今後はなるべく迂闊に手に取ったらいけないな」
「そうだね~今度はじっくり見る事にするよ~」

 耳長族エルフの少女はそう言って朗らかに笑った。やはり調子が狂ってしまっていたアルムはこれ以上一緒に居たらおかしくなりそうだったので、別れのタイミングを伺う。
 義理はしっかり果たし、後味悪い展開は避けられた。後は一刻も早くガルム探しに集中しなければならない。

「あれ~もしかしてもうどこか行っちゃうの~?」
「まあ、そうだな俺には大事な用事が……」
「私~人を探しているんだけど、知らない~?」

 アルムは何となくここで察してしまった。こういう類の輩から逃げるのは、かなり難しそうだと。
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