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第42話 剣士、方針を決める
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喫茶店から場所を移し、アルムとオリファウンの二人は冒険者ギルドへと向かっていた。やはり自由気ままがウリの冒険者たちの知恵は最大限に利用しなければならないとアルムが判断したためである。
道中オリファウンは自分も冒険者の資格を持っていると話をした。内心、こんなぽわぽわとした少女が冒険者でよく今まで生き残っていられたな、というのがアルムの素直な感想であった。
「もしかして~アルムくん、私のこと今ちょっと小馬鹿にした~?」
「……何にも考えていないから安心しろ」
ズバリ正解である、そして先程の感想に訂正を加えなければならない。こういう妙な鋭さが今日の健やかな彼女をいさせてくれるのだろう。
これ以上話をしていたら何だか余計なことしか喋らないような気がしてきたので、アルムは口を閉じ、目的地へと急ぐことにした。
「到着だね~」
「ああ、早速中に入って探す場所を絞り込もう」
相変わらず手触りの良い扉を開くと、見慣れた赤髪の男と出くわした。今、誘拐事件で駆け回っているサイハ・ウィードナーだ。
「ようアルム! ……お前ってまた新しい女の子と歩いているのな」
「サイハか、一つ言っておく。これは成り行きだ人聞きの悪い事を言うな」
「わーってるわーってるって! とりあえず中に入ろうぜ? 君もそれでいい?」
「おっけ~」
サイハに連れられ、もはや定位置とも言える隅っこのテーブルに三人は座った。今日は座ってばかりだな、と小さくアルムは呟く。
なまじいつも鉄火場の最前線にしかいなかったため、この世界に来てからは少々体の鈍りを感じていた。この間のシャロウとは言わないまでも、命を張る感覚を忘れないようにしたいというのが彼が心がけていることである。
「――なるほどな。オリファーちゃんの友達も、か。こりゃさっさとどうにかしないとな……」
サイハとオリファウンが簡単に自己紹介を済ませ、そしてアルムから今の状況を話した。
アルムの話を聞いていたサイハは次第に顔を曇らせ、そして感情を落ち着かせようと髪をワシャワシャと掻きむしる。
少しでも情報が欲しかったアルムは、調査の進展具合を訪ねてみたが、彼は首を横に振った。
「ぜんっぜん分かんねえなぁ。何でこんなに手がかりがないんだってレベルでよ」
「難航しているみたいだな」
「そうなんだよ、シアン隊長からはプレッシャーかけられるわ、誘拐事件の目撃者は一人も見つからねえわ、犯人らのアジトは見つからねえわで胃が痛くなってくるぜ……」
サイハの言葉を聞き、ここに来た目的を話すアルム。すると、彼は懐から地図を取り出し、広げてみせた。
「この赤い丸が書かれている所が、この王都周辺で比較的広い迷宮やら廃墟となっている」
「バツ印は調査済みってことか」
「そういうこと。んで、あと調べていない所が三箇所あるんだが……」
そこで一度サイハが言葉を切る。言い淀んでいる、といったほうが正しいのかもしれない。
促さず、アルムは言葉を待つことにした。あのサイハがすぐに言わないということはそれだけ厄介な事になっていると推察出来る。
「その内の一つがだいぶ厄介なんだよ。そいつがここ」
王都サイファルからおよそ馬車で二日という距離だろうか、そこには『ダルクホール』という小さな山が記載されていた。
「このダルクホールってのは小さな山なんだが、中腹あたりに人が何人も入れる巨大な自然洞窟があるんだ」
「それでダルクホール、か。犯人グループが好みそうな所だな、何で探しに行かないんだ?」
「この山の麓がヤバイんだ。魔力の毒霧が充満しているもんだから、迂闊に登れねえ」
ダルクホールとはサイファル王国が危険地帯に指定する予定の山である。山に満ちる魔力が変質し、毒性を帯びてしまったせいで、対毒の防御魔法をかけなければすぐに体に不調をきたしてしまう。
しかし、逆に言えば――、
「その毒霧が充満している麓さえどうにか突破すればアジトには丁度いい、か」
「どこに行くんだ?」
立ち上がったアルムの頭の中はもう方針が固まっていた。
「ダルクホールへ行く。個人的にはそこが一番気になった」
自分ならば、という目線で物を考えた結果である。厄介な場所は上手く使えばそれだけ強固な要塞となるのだ。
早速行動に移す前、アルムにはどうしても聞いておきたいことが一つだけあった。
「ところでサイハ、その犯人グループっていうのはどういう奴らなんだ?」
「……あ~その話か」
でもまあお前なら良いか、とサイハが話を続ける。対するアルムはそれでいいのかと思いながらも、水を差すことなく話を聞く態勢を取った。
「それがさ……ああ、お前は多分シアン隊長から聞いてるんだろうけど、犯人グループを捕まえるために送り込んだメンバーが壊滅してよ。その中で辛うじて命を取り戻した奴から報告を聞くと、どう見ても一般人だったらしい」
「そりゃ一般人じゃないのか?」
「一般人って言っても、明らかに戦う術を知らないって意味だぞ? こんな大規模なことやらかしておいて、それでもか?」
その一言で、ますますアルムは分からなくなってきた。そもそもの想定では手練集団をイメージしていただけに、今更そんな事実が明らかになってしまっては根底から覆る。
ならば、どのようにして追い払ったのか。
「ねえ~アルムくん」
「どうしたオリファー」
「私思ったんだけど~その人達って~本当に誘拐してた人~?」
オリファウンは小首を傾げる。
道中オリファウンは自分も冒険者の資格を持っていると話をした。内心、こんなぽわぽわとした少女が冒険者でよく今まで生き残っていられたな、というのがアルムの素直な感想であった。
「もしかして~アルムくん、私のこと今ちょっと小馬鹿にした~?」
「……何にも考えていないから安心しろ」
ズバリ正解である、そして先程の感想に訂正を加えなければならない。こういう妙な鋭さが今日の健やかな彼女をいさせてくれるのだろう。
これ以上話をしていたら何だか余計なことしか喋らないような気がしてきたので、アルムは口を閉じ、目的地へと急ぐことにした。
「到着だね~」
「ああ、早速中に入って探す場所を絞り込もう」
相変わらず手触りの良い扉を開くと、見慣れた赤髪の男と出くわした。今、誘拐事件で駆け回っているサイハ・ウィードナーだ。
「ようアルム! ……お前ってまた新しい女の子と歩いているのな」
「サイハか、一つ言っておく。これは成り行きだ人聞きの悪い事を言うな」
「わーってるわーってるって! とりあえず中に入ろうぜ? 君もそれでいい?」
「おっけ~」
サイハに連れられ、もはや定位置とも言える隅っこのテーブルに三人は座った。今日は座ってばかりだな、と小さくアルムは呟く。
なまじいつも鉄火場の最前線にしかいなかったため、この世界に来てからは少々体の鈍りを感じていた。この間のシャロウとは言わないまでも、命を張る感覚を忘れないようにしたいというのが彼が心がけていることである。
「――なるほどな。オリファーちゃんの友達も、か。こりゃさっさとどうにかしないとな……」
サイハとオリファウンが簡単に自己紹介を済ませ、そしてアルムから今の状況を話した。
アルムの話を聞いていたサイハは次第に顔を曇らせ、そして感情を落ち着かせようと髪をワシャワシャと掻きむしる。
少しでも情報が欲しかったアルムは、調査の進展具合を訪ねてみたが、彼は首を横に振った。
「ぜんっぜん分かんねえなぁ。何でこんなに手がかりがないんだってレベルでよ」
「難航しているみたいだな」
「そうなんだよ、シアン隊長からはプレッシャーかけられるわ、誘拐事件の目撃者は一人も見つからねえわ、犯人らのアジトは見つからねえわで胃が痛くなってくるぜ……」
サイハの言葉を聞き、ここに来た目的を話すアルム。すると、彼は懐から地図を取り出し、広げてみせた。
「この赤い丸が書かれている所が、この王都周辺で比較的広い迷宮やら廃墟となっている」
「バツ印は調査済みってことか」
「そういうこと。んで、あと調べていない所が三箇所あるんだが……」
そこで一度サイハが言葉を切る。言い淀んでいる、といったほうが正しいのかもしれない。
促さず、アルムは言葉を待つことにした。あのサイハがすぐに言わないということはそれだけ厄介な事になっていると推察出来る。
「その内の一つがだいぶ厄介なんだよ。そいつがここ」
王都サイファルからおよそ馬車で二日という距離だろうか、そこには『ダルクホール』という小さな山が記載されていた。
「このダルクホールってのは小さな山なんだが、中腹あたりに人が何人も入れる巨大な自然洞窟があるんだ」
「それでダルクホール、か。犯人グループが好みそうな所だな、何で探しに行かないんだ?」
「この山の麓がヤバイんだ。魔力の毒霧が充満しているもんだから、迂闊に登れねえ」
ダルクホールとはサイファル王国が危険地帯に指定する予定の山である。山に満ちる魔力が変質し、毒性を帯びてしまったせいで、対毒の防御魔法をかけなければすぐに体に不調をきたしてしまう。
しかし、逆に言えば――、
「その毒霧が充満している麓さえどうにか突破すればアジトには丁度いい、か」
「どこに行くんだ?」
立ち上がったアルムの頭の中はもう方針が固まっていた。
「ダルクホールへ行く。個人的にはそこが一番気になった」
自分ならば、という目線で物を考えた結果である。厄介な場所は上手く使えばそれだけ強固な要塞となるのだ。
早速行動に移す前、アルムにはどうしても聞いておきたいことが一つだけあった。
「ところでサイハ、その犯人グループっていうのはどういう奴らなんだ?」
「……あ~その話か」
でもまあお前なら良いか、とサイハが話を続ける。対するアルムはそれでいいのかと思いながらも、水を差すことなく話を聞く態勢を取った。
「それがさ……ああ、お前は多分シアン隊長から聞いてるんだろうけど、犯人グループを捕まえるために送り込んだメンバーが壊滅してよ。その中で辛うじて命を取り戻した奴から報告を聞くと、どう見ても一般人だったらしい」
「そりゃ一般人じゃないのか?」
「一般人って言っても、明らかに戦う術を知らないって意味だぞ? こんな大規模なことやらかしておいて、それでもか?」
その一言で、ますますアルムは分からなくなってきた。そもそもの想定では手練集団をイメージしていただけに、今更そんな事実が明らかになってしまっては根底から覆る。
ならば、どのようにして追い払ったのか。
「ねえ~アルムくん」
「どうしたオリファー」
「私思ったんだけど~その人達って~本当に誘拐してた人~?」
オリファウンは小首を傾げる。
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