四本剣の最強剣士~魔王再討伐につき異世界転生~

右助

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第43話 剣士、不意をつかれる

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「本当に誘拐してたっていうのはどういう意味だ?」

 オリファウンはアルムとサイハへ不思議そうな眼差しを向ける。すでにオリファウンの中にはある程度、答えが固まっていたのだ。

「ん~何ていうか~その捕まえるために行った人たちがやられたんだよね~? だけど、その誘拐した痕跡があまりないんだよね~?」
「ああ、まあそうだなオリファーちゃん。だったらそいつらとは全く別の奴が絡んでいるってそう言いたいのかい?」
「うん。そうだと思うよ~」

 アルムとサイハは顔を見合わせる。
 アルムは少しばかり自分の思考が凝り固まっていたことを自覚させられた。そもそも、サイハやシアンがいるような治安維持部隊が返り討ちに遭ったこと事態が不可解だったのだ。
 そう、それを可能とするような存在がいるのならば話は別だが。

「オリファーの言っていることが気になるな。やはり空振りになるかもしれんが、直接行ってみるしかないということか」
「よ~しそれじゃあ頑張っていこうか~」

 本来ならばすぐにでも向かっていたアルム。しかし、だけは駄目なのだ。
 何せ、今夜はイーリス達との食事会がある。この異世界に来て、生まれて初めてとも言えるこのイベントをスルーするという選択肢は避けるわけにはいかなかった。
 そこでアルムはふとギルドの外を見る。すると、もう空は見事な茜色に染まっているではないか。
 約束の時間を過ぎてしまう事を鑑み、オリファウンとサイハには明日、ダルクホールへ向かう旨を告げた。

「そっか~わかった~。じゃあ、明日頑張ろうね~」
「乗りかかった船だ。俺も付き合わせてもらうからよろしくなアルム」

 二人から了承をもらったアルムは急ぐべく席を立とうとした。すると、件の約束の人物の声が聞こえてくる。

「あ、やっぱりここにいたんですねアルムさん」
「イーリス?」

 袋を抱えたイーリスが相も変わらず人当たりの良い笑みを浮かべていた。彼女の言葉から察するにどうやらアルムを探しに来たようだ。

「もうすぐ約束の時間だったので、足りなかったものの買い出しついでにアルムさんがいそうなここに寄ったんですよ!」
「そういうことだったか。すまない、今行くつもりだったんだ」
「あ、それじゃあ一緒に行きませんか? ……と、ごめんなさい! すいません、挨拶がまだでしたね! 私はイーリス・シルバートンといいます!」

 イーリスの視線はサイハの隣に座っていたオリファウンへ向けられていた。彼女にとってオリファウンだけが初対面だったので当然といえば当然だが、ここまで自然かつ有効的に接しにいけるのはイーリス・シルバートンの人格の善さであろう。
 自分ならば、とアルムは考えてみるがどう前向きに考えてみても、戦いに明け暮れていた身からすればイーリスのような社交性に目覚めることはこの先何十年と生きていてもまず見ることはない姿だろうと結論付けられた。
 ではオリファウンはどうだろうか、とアルムはさり気なく彼女を見る。耳長族という種族から見れば、ヒトはどこまで気を許せる存在なのか気になったが故であるが、あっさりと彼の思案を飛び越えてみせた。

「イーリスちゃんかぁ~! 私はオリファウンっていうのぉ! オリファーって呼んでくれたら嬉しいなぁ」
「オリファーさんですね! よろしくお願いします!」

 イーリスと同じく、即座に順応したオリファウン。幾度か言葉を交わすうちにどんどん会話のボルテージが上がっていく二人。波長、というものが合うのだろうか、気づけば二人は握手をしていた。

「オリファーちゃん! ぜひとも今日、私の家で行う食事会に来てください!」
「もっちろん~! イーリスちゃんの家にお邪魔しちゃうよ~!」

 いつの間にか“ちゃん”付けで呼び合うような仲になっていたことに驚きを隠せないアルム。ここまで来ると男女の割合的に、サイハも来てほしくなったアルムが彼へ話を持ちかけようとした。

「なあサイハ――」
「悪いなアルム。俺はちょっとこの後シアン隊長に呼び出されてるんだ。残業コースだからお前には付き合えねえ……」
「分かった。分かったから泣くな」

 短い時間ながら、シアン・リーズファの人となりをよく理解していたアルムは内心手を合わせるしかなかった。
 涙を拭ったサイハは定時報告に行くため、冒険者ギルドを後にした。去り際に、皆の分の代金を置いていった辺り、本当に律儀な奴だとアルムは改めて思った。……食い逃げをしたという前科があるので、両手を挙げて称賛を送るわけにはいかないが。
 残された三人。その内の一人であるアルムは黙っていた。何せイーリスとオリファウンの会話の波長が完全にハマってしまったようで、下手に話に加わると巻き込まれかねないのだ。

「アルムくんも早く行こうよぉ」
「そうですよアルムさん! 私、今夜は気合を入れてお料理を作っているんですから!」

 と、イーリスは腕まくりをして、気合を示した。いつも食べるところしか見ていないだけに、アルムも内心期待に胸踊らせていた。

「ところでイーリスちゃん」
「ん? どうしましたか?」
「ん~と~、ね? 何て言えば良いんだろう~?」

 いまいち要領の得ないオリファウンに、思わずアルムとイーリスは顔を見合わせる。何を言い出すのか、全く予想できなかったアルムはただ彼女の言葉を待つ。
 すると、ようやく考えがまとまったのか、オリファウンはイーリスを指さした。――否、正確には少しだけ彼女の背後を指差していた。

「えっとね~? もしかして~イーリスちゃんの体の中に誰かいる?」

 魔王ヴァイフリング。該当する存在がたった一つしか無かった二人は次の言葉を出すのに、少しばかり時間がかかってしまった。不意をつかれる、とはまさにこのことなのだろう。
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