【R18】距離を縮めて

巴月のん

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4)いい加減天罰を!

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「・・・・・・っていうことがあってね」

美理は色々と話してくれるが、聞き役に回っている鞠子としてはその内容をすでに見聞きしているだけにじれったいっ!という思いで聞いていた。もちろん、鞠子達が内緒でついてきていたことを知る由もない美理に対しては催促することもツッコむこともできない。

「でも、ボスの様子からして、あんたが何かやらかしたように思えるんだけれど?」

まぁ、予想はしているけれどね!と思いながらもわざとらしく聞いてみる。すると美理は目を泳がせながら、バツが悪そうにボソッと呟いた。

「多分、去り際にキスしちゃったせいだと思う」
「あんたがボスに対してキスしたの?えーえーどうして?」

面白くなってきた━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!とは、鞠子の内心の叫びである。
目を輝かせて詰め寄ってきた鞠子に少し引き気味だった美理だが、ぼそぼそと理由を教えてくれた。

「なんていうか、買い物をデートかも!って思ってたんだけれどあまり意識されていないみたいだからちょっとムカッとしてしまったというか、イラっとしたというか」
「つまり、意識してほしくてついキスしちゃったと?」
「そうなるのかなぁ、でも今日、目をそらされたし、気まずくなっちゃった」
「そ、そうなの(それ、違う。あんたの顔をまともに見たら赤面してしまうからや)」

思わず心の中でツッコむが、敢えて口には出さなかった。さすがに本人同士で解決するべきことだろうと思ったからだが、さすがにボスが晩熟おくてすぎて頭を抱えたくなるレベルだ。

「もうちょっと様子を見たらどうかしら?もしかしたらあっちでも意識しているってこともありえるわよ?(まぁ、前から意識しているだろうけれどね)」
「そうかなぁ~」
「美理はもうちょっと自信を持ちなさい。それに、ボスのことだから、本当にキスが嫌だったら、眉間に皺を寄せているとおもうし」
「そうか、そう考えるとまだ希望はあるんだ」

鞠子の発言に立ち直った美理は、顔を輝かせながら、居住まいを正した。現金ながらも、注文していたカクテルを飲みながら焼き鳥を頬張らせたあたり、先ほどまでなかった食欲も戻ったのだろう。ほくほくと嬉しそうに焼き鳥を食べている美理を見た鞠子はボソッと小さい声で呟いた。

「まぁ、遅かれ早かれ、ボスの方が動くだろうから大丈夫でしょ」

しかし、次の日の朝、鞠子の予想に反して素早く動いたのはボスではなく・・・別の男だった。

「おはよう、長狭野美理ちゃああん!」
「近藤さん?」
「うげぇ、よりによってこんな時にくるとかありえない」

美理が顔を引きつらせているのは無理ない。何しろ、今ここにいるのは、美理と鞠子のみ。男性陣は運が悪いことに如く如く外にいたり、出張だったり、休みを取っていたりと軒並み不在だった。

「あ、今男たちは誰もいないんだな。ってことは、うるさい四百もいないのか」

ぐふふと嬉しそうに武男が笑うが、その笑いはどうみても可愛くなく、それどころか、変態じみた笑顔・・・ニタリとした笑みといったほうが解りやすいか。そうでなくとも、身体が一般より少し・・・どころか大幅に大福並みにふとましいだけに変態さも倍増していた。
美理と鞠子が盛大に顔を引きつらせていることにも気づいていないあたりメンタル面はレンコン並みなのだろう・・・まさしく暖簾のれん腕押うでおしだ。

「じゃあ、今なら、美理ちゃんをホテルに連れ込めるよね~。丁度いいや、ぼくのホテルに来ない?思いっきり愛してあげるよ~ぐふふ、身も心もとろけるぐらいにねぇ」
「キショッ!美理があんたを相手にするわけないでしょ、早く消えなさいよ!」

ぐふふと下品な笑い声が響くのに耐えられなかったのか、鞠子が思いっきり罵るが、武男にとってはご褒美でしかないのだろう、真っ青になっている美理へと少しずつ近寄っていく。

「(ヤバいヤバい!!!)」
「さあ、向かい側にある俺のホテルに行こうねぇ~!!」

そんな猫なで声を出されてもと思いつつ、美理はじりじりと後退あとずさっていく。しかし、運が悪く、壁の方へと下がってしまい、退路たいろを断たれてしまった。

「しまっ・・・きゃっ!!」

武男の両腕が美理の顔を挟む形で壁へと突き出される。言っちゃ悪いが、プヨプヨした顔が近づくにつれ、にきびとともにあぶらぎった肌が際立って見えてしまう。
ぞわぞわと身の毛がよだつのを感じたのか、美理は立ちすくんで動けなくなってしまっていた。
鞠子も下手に手出しすると美理に危害を加えられるかもと感じたのか、動けない。

「くっ、こんな時にボスがいたらボコボコにしてるのに!」
「その四百は来ないんだよねぇーああ、間近で見ると益々可愛いね。それに、その胸と谷間・・・そんなに揺らしていいねかな、そんなに僕がほしいのかい」

勘違いも甚だしい!!お前の下卑た妄想が見せた幻覚だ!と、叫びたい美理だったが、恐怖に竦んで身体が動かない。こんな時に限って誤解されるなんてあまりにもムカつく上に悔しくて涙が出る。
しかし、その涙は武男にとっては逆効果の武器になってしまうわけで。

「ああ、泣かなくてもいいよ、ちゃんと、たっぷり可愛がってあげるからホテルに行こうね・・・さぁ」

ぐいっと腕を引っ張られ、真っ青になる美理だが、さすがに男の腕力にはかなわない。引きずられていく美理。慌てて美理の片方の腕を引っ張ろうと掴んだ鞠子だが、それに激昂した武男が近くにあった机からファイルを掴み、鞠子へと投げつけた。ファイルが当たったせいで、鞠子は座り込んでしまい、掴んでいた手を離してしまった。

「美理!!」
「鞠子さん、大丈夫っ!?」

涙目になりながらも必死に叫ぶが、その両腕は武男の手によって拘束されている。

「相変わらず生意気な女だ。美理ちゃんとの恋路を邪魔するなんて。さぁ、行くぞ!」

高笑いしながら玄関のノブに手をかけようとした武男だが、其れより早く扉が開く音がした。

バァンッ!!!!!

慌ててノブから手を話した武男と、拘束されていた美理の前に現れたのは・・・

「だ、誰だ!!!!」
「あ。あの時のロリータさん!?」

昨日美理を助けてくれた美女(※美理は見知らぬ女性と誤解中)が現れた。昨日と異なるのは、ロリータ服ではなく真っ黒のスカートに深紅のフリルを纏ったゴスロリの服を着て、黒い傘を持っていることだろうか。
そして、(美理たちからみた)ゴスロリ美女は、なぜかかっこつけて、セー●ームーンのポーズをとっていた。そして、唖然としていた美理たちをよそにえっへんと威張るように、武男に対して傘をつきつけながら決め台詞を放った。

「愛と正義の味方、セーラー戦士参上っ!!ふふーん、これ、ちょっとやってみたかったんだよねぇ。ということで、月にかわってお仕置きよっ!」

鞠子が「それ、著作権に関わるから!」と思いっきり叫びながらツッコんでいるが、当のゴスロリ美女はそんなことを気にしないと言わんばかりのドヤ顔だ。
突きつけた傘がいつのまにか武男の額にグリグリと突きつけられている。その痛みに我慢できなかったのか、武男は美理から手を放し、呻いている。
武男の手が離れたことをいいことに、逃げた美理は慌てつつも、座り込んでいた鞠子の横へ近寄った。

「しまっ・・・ぎゃあっ!!」
「ひとーつ、人の世の生き血をすすり、ふたーつ、ふらちな悪行三昧、みーつ、醜い浮き世の鬼を、退治してくれよう桃●郎!!」
「な、なな、そ、それ、桃●郎侍の決め台詞じゃねぇか!!!!お前、一体何歳なんだ!?!?」
「うふん☆乙女に歳を聞くなんて野暮ちゃんねぇ、そんな困ったちゃんにはお仕置きっ☆」

えぃっと可愛らしい動作で、武男に対してスタンガンをガンガン押し付けるあたりが鬼だ。呆然としている美理を前に、鞠子は頭痛がするといわんばかりに眉間に皺をよせて頭を抱えていた。

「ま、鞠子さん、あの美女さんとは知りあいなの?」
「許可が必要だからちょっと今は話せないわ。またボスのほうから紹介があると思う。とりあえず、ボスや景に電話するから待ってて」

頭痛がようやく収まったのか、よろめきながら鞠子はスマホを取り出して、話し出した。まだ状況がつかめていない美理が別方向を見ると・・・ゴスロリ美女が武男をビニールひもで縛っていた。…何故か亀甲縛きっこうしばりで。しかも、いつのまにか、鞭であちこち打たれている。武男が何やら叫んでいたが、聞きたくもなかったので、華麗にスルーすることにした。(見ない振りしたともいう。)

「・・・・あっあふぅっ・・・あぁあああああっう、もっと、もっとおぉお!!」
「ほらほらぁ、とっても恥ずかしい姿よぉ、うふふーんっ!!」

・・・武男が新しい性癖に目覚めているように見えないこともない。見えていないので何ともコメントをしようがない・・・のよ。うん、見ていないったらみていない!!

美理が悪夢を振り切るように横に首を振った後、鞠子の方を見ると、口を開けたまま顔を引きつらせているのが見えた。それだけで彼女が自分と同じ感想を持ったのだと解る。恐らくいま、私達の気持ちは一つになっていた。

「鞠子さん、あの、四百さんは?」
「え・・あ、ああ。すぐに来るって言っていたわ。多分10分もしたら来るんじゃないかしら。景も丁度出張が終わったから戻って来るって」
「良かったです。はぁ、やっぱり私男運がないですね。四百さんにも迷惑かけちゃったし」

がっくりと肩を落とす美理だが、鞠子は大丈夫よと慌てて慰めた。

「この馬鹿が馬鹿すぎただけよ。大丈夫、ボスが貴方を責めるわけないでしょう」

寧ろ責められるとしたら後ろで悲鳴をあげてヨガっている武男だろう。
悲鳴に交じってハートマークがついてそうな桃色な声が聞こえるあたり、心配は無用のようだ。
後ろは決して振り返るまいと鞠子は心に決めて頷いていた。

「はあ・・・」

変なところで打たれ弱い美理がしゅんと肩を落としていた時、玄関の方から慌ただしい足音が聞こえた。恐らく芽都留がやってきたのだろうと、顔をあげて玄関の方を見た。
すると予想通り、芽都留が息を切らせながらドアを開けてきた。そして、美理の方を見るなり、腕をまわして抱きしめてきた。

「大丈夫か、美理っ、どこも怪我はないか?!」
「えっあっ、は、はい!」
「怖かっただろうに、悪かった」

美理の言葉を聞いて安心したのか、ぎゅっと強く抱きしめている。余裕がない芽都留としては離す気がないのだろう、美理の頭を撫でながら抱擁している。
そんな芽都留の思わぬ行動に真っ赤になりながらも、その腕を外すことができず固まってしまっている美理。
そんなバカップルじみた2人を呆れながら見ている鞠子。そして丁度良いタイミングで景もやってきた。

「田村戻りましたー。ついでに休暇をとってた納多も、面白いものが見れるからと誘って連れてきました☆」
「納多参上―!って、なに、そいつ、近藤じゃん!!え、亀甲縛りで?ぎゃははっはは!!」

呑気にかます景の後ろにいた納多がビデオカメラを持ってひょいっと現れた。
奥の方に転がっていた武男と、その武男を足蹴にしていたゴスロリ美女の姿に目を丸くし、ゴスロリ美女から経緯を聞いた後はあられのない姿に笑い、スマホやビデオカメラで撮りまくっているあたり、納多もさすがな性格である。

シャッターを切っている納多を後目しりめに、景の方はパソコンを立ち上げながら、芽都留に話しかけてきた。芽都留は美理を離さないまま、一考した末に返事を返した。

「さて、近藤に対してだが、計画通り潰すか?それとも何か別のことも追加する?」
「追加するのも面倒だ。計画通り潰せ。但し、請求は倍額でな」
「ラジャー。鞠子、頼む」
「はーい。まっかせなさい。ファイルを投げられた分も上乗せするわ」
「ああ、存分にやれ。間崎、悪いが後で後始末を頼めるか」
「はぁ~い、まっかせてちょうだいー☆」

何故かゴスロリ美女の方に顔を向けながら間崎の名前を呼んでいる。それに答えた美女の声を聞いた美理は目を丸くさせながら首を傾げた。

「間崎さんって、あの間崎さんですよね?」
「そうだ、その間崎って、そうか、美理はまだ知らなかったのか」

何故か、いきなり憐れみの目で見られた。何故??とおもいっきり疑問で頭がいっぱいになっていた美理だったが、意を決して話し出した芽都留の言葉に頭が真っ白になった。

「はあ。その間崎で間違っていない。こいつはもともと女装が趣味でな。本人曰く、いつのもスーツ姿の方は仮の姿だそうだ・・・そうだな?」
「そうですぅ、社長の認識は全然間違っていないです☆改めて、間崎りょうちゃんですっ!」
「え、あの、ビシッとスーツを着こなしていたあの間崎さんが?嘘でしょ!?」

うろたえる美理をよそに周りはそっと目をそらしあっている。それだけで、全員知っていたということを悟った。呆然としている美理だが、綾はそんなの関係ないっとばかりに、武男への鞭打ちを続けていた。まだ信じられないのか、美理は叫んだあと、意識を手放してしまった。

「いったいどういうことなの?頭がパニックになりそうなんだけれど」

一気にいろんなことが起こったせいで、美理の頭がオーバーヒートを起こしたようだ。美理が倒れたのを慌てて受け止めた芽都留の声があたりに響いたが、すでに失神していた美理には聞こえていなかった。


「美理?美理、しっかりしろ!!」


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