29 / 58
リクエスト小説
莉里と虎矢の出会い(4)莉里目線
しおりを挟む「ということで、大変だった」
昨夜にあった隆との攻防について、かいつまんで話すと、香帆は目を丸くしていた。
先生の都合で、授業が自習になったので、2人でノートを広げていた最中の会話だった。
「なんていうか・・・虎矢さんって、もしかしなくとも、莉里ちゃんに対しては結構甘えていらっしゃる?」
「多分・・・・?」
「そこを否定しないのが、莉里ちゃんですよね。でも、いいじゃないですか。忘れられていても、また再会して、しかも、付き合えたんですよ。ロマンチックじゃないですか?」
そういいながら、香帆は嬉しそうにほおを紅潮させていた。
(香帆はドライな割にはこういう奇跡的な話が好きだからなぁ。)
「そんなロマンチック 話 ない」
「んもう。大体、莉里ちゃんは、虎矢さん相手ならいくらでも喋るじゃないですか。私に対して、喋ってくれるとはいえ、未だに片言ですよ?相当、昔助けられたことが嬉しかったんでしょう?」
「・・・・・・・・(そ、そうかな)」
(否定できない!)
「・・・多分」
「照れながらいいますか。まぁ、そうでなかったら、すぐにプロポーズも断りますよね、莉里ちゃんは。そういえば、今、お兄さん達からは何か・・・?」
香帆がいうお兄さん達というのは、半分血が繋がっている義理の兄4人のこと。
莉里を含めて、全員腹違いの兄弟。小さい頃はともかく、兄達もいい年になった今では、腹違いを苦にしておらず、サバサバした関係である。
特に、莉里は、高校生になってから顔を合わせたことと、唯一の女の子ということもあって、兄達から、大事にされてきた方だ。
母親と離婚した父親に頼んで、母親と離れて一人暮らしさせてもらった。それ以来、隆から同棲を持ちかけられるまで、ずっと一人暮らしをしていた。
場所については、お兄ちゃん達が心配だからとセキュリティがしっかりしたところを選んでくれた。兄達は、家族の前でも、あまり声を出さない私に対しては、異様にお節介な面があった。
(色々とお世話になっていることは確かなんだけれど、勝手に決めてしまう時もあるんだよね・・・)
色々とありがたいお兄ちゃん達ではあるが、さすがに、勝手にお見合いの話を持ってきたことに対しては、迷惑でしかなかった。
あの時も、矢継ぎ早に、勝手なことを言いだした兄達に、辟易していたものの、その様子に母親と似たものを感じて、何も言えなくなってしまった。
(あの時も、自分の弱さが嫌で。もし、隆が来てくれなかったら、きっと自分に対する怒りで泣いていたかも・・・。隆のお蔭で出てきそうになった涙も引っ込んでくれた。)
『莉里が行き遅れるって?俺がいる限り、ありえない。だって、俺は、莉里と結婚したいって思っている。最終的に、莉里が俺を選んでくれたなら、これほど嬉しいことはないよねーって思ってるからこそ、告白のタイミングを窺っていたのに・・・ほら、莉里、行こうか』
(不覚にも・・・あの時、惚れ直したなんて、言わない。絶対言ってやるものか。)
「・・・何も。隆のお蔭・・・婚約・・とんとん決まった」
そう、あの後、お兄ちゃん達は文句を言おうと隆の家に連絡したらしいが、逆に返り討ちにされたらしい。それどころか、あちらは父に直談して、婚約をとりつけたとか。父やお兄ちゃん達が悲壮な顔で隆と一緒に現れた時はびっくりした。
後から知ったのだが、隆の父親は、父親の弁護士を務めたこともあるそうで。それは、知られたくない弱みを処理してもらった負い目もあるのかもしれないな・・・と思ったが、父のなけなしのプライドのために口には出さなかった。
(それにしても・・・かっこよかったなぁ、あの時の隆は・・・。)
思いだして顔を真っ赤にさせていたら、香帆がほっぺたをつついてきた。
「・・・やっぱりすごいんですね、あのお兄さん達を黙らせるだなんて。莉里ちゃん、私のことをバカにできる立場じゃないですよ?私も八尋先輩がアレで大概ですが、莉里ちゃんも結構、虎矢さんのこと惚気ていますよ?」
「・・・・・・・そう、見える?」
「はいっ」
「じ、自重する」
つつかれたほっぺたをさすっていると、また香帆から声がかかった。
「でも、いいですよね・・・同棲も、結婚を前提にしたものでしょう?よくお父さん達が許しましたね?」
「複雑・・・みたい」
「ああ、まあ・・・家族からすれば、そうですね。でも、潔さが伝わってよいじゃないですか!」
「香帆、同棲?」
「無理ですよ、あの八尋先輩ですもん。2人で暮らすより、いっそ彼の実家か、私の実家で暮らす方がよほど安全な気がするぐらいです。いっそ、挙式なんてせず、入籍しようかとかいろいろ考えてしまいますし」
「・・・族長・・・結婚、もう・・・確定?」
「そ、うではないですけど・・・・結婚となると、先輩以外の相手が思い浮かばなくて」
「思考、普通じゃない」
まぁ、一途な香帆のことだ、結婚までいくだろうなというのは解っていたけれど・・・。
(・・・そうか、お兄ちゃん達ももしかしたら、こんな複雑な気持ちだったのかな?嬉しいけれど、なんだか腑に落ちないみたいな・・・この葛藤は・・・。)
今更ながらに、香帆を心配する気持ちと重ね合わせてみると、あんなに理不尽だと思っていた兄達に少し同情さえ感じてしまう。まぁ、お見合いを持ちかけられたことは未だに根に持っているけれど。
でも、今度会ったら、ほんの少し優しくしてやろうと心に決めた。
ため息をついていると、香帆が頬をノートに貼り付ける様に机に伏したまま、呟いていた。
どうやら、あの族長との将来を考えて悩んでいるらしい。
「うう・・・そ、そうかもしれないですけど、なんていうか、これからも、女絡みでいろいろトラブルがありそうな気がして」
「そこ・・・族長・・・なんとかする・・・多分」
非常に不本意だが、あの族長ならなんとかするだろう。
あっちだって、香帆のドレス姿は見たいだろうし。
・・・だめだ、どんな手を使ってでも必死に結婚式をあげようと頑張るイメージしか出てこない。
事実、一度本気になった時に、弁護士を立てて、元彼女及び、遊び相手を処理したというのだから、やるときはやるだろう。
(・・・そもそも、アレ、評判がイイ病院の息子。個人病院とはいえ、それなりの家だから披露宴とかは必ずするんじゃないかな。それに、下手な女が付け入るようなことをアレがするとは思えない。)
というか、最後は結局、族長の話で終わるのか・・・・と、遠い目をした莉里はノートを閉じた。
決して、呆れからではない。タイミングよく、チャイムがなったからだと・・・、いうことにしておく。
放課後、香帆と一緒に下駄箱に向かうと、出入り口に隆が立っていた。
「おまたせ」
「お疲れ、莉里。それに、香帆ちゃんも」
「あ、虎矢さん。珍しいですね、莉里ちゃんを待っていたんですか?」
いつもなら、この時間は大抵、八尋と一緒にいるはずの隆がここにいる。何故かと聞くと、族長は歯医者に行ったらしい。
(道理で、今日は平和・・・。)
内心で、八尋に対してザマァと叫びたいぐらいに黒いことを考えていた莉里の横では、香帆と話している隆の声が聞こえた。
「ちょっと気になることができたんだけれど、なかなか思いだせなくて。それで、しばらく莉里と一緒に歩いていたらなんか思いだすかなぁって」
「ああ・・・・朝に聞いたあれですか。初対面じゃないんですよね?」
「えっ、香帆ちゃんは知っているの!?」
「ふふ、だって、親友ですもん。そうですよね、莉里ちゃん」
「うん・・・香帆・・・私のモノ・・・」
思わず、香帆に抱きつくと、呆れた隆によって引き離された。
「莉里、百合っぽくなるからその言動は慎もうか。あーやっぱり、俺のライバルって、絶対香帆ちゃんだよね」
頭を撫でてくる隆の表情は諦め顔ではあるが、割り切れない様子だった。
「これだから、莉里のお兄ちゃん達の気持ちも解るんだよなぁ。ほーんと、香帆ちゃんに勝てる気がしない」
「・・・・・男なら・・・・隆、一番」
「そーだね。男の中でなら、世界一だよね・・・うーん、それも微妙」
「大丈夫ですよ。だって、先に莉里ちゃんと出会ったのは虎矢さんですしね。それに、莉里は素直じゃないから、ここでは一番好きだって言いにくいだけですよ」
「なんていうか・・・解ってますよって、カンジがちょっと自慢気~。ほーんと、香帆ちゃんズルいっ、羨ましいっ!!」
歩きながらも、香帆に対して不平をいう隆を見て、少しかわいいとか思ったのは秘密だ。
隆の拗ねた表情が、子どもっぽくて、それがまた昔を思い出させるなと、莉里は嬉しさで表情が緩むのを必死に隠しながら会話に入っていた。多分、香帆にはバレバレだっただろうけれど。
しばらくしてから、香帆が家の方向へと曲がるため、分かれ道で立ち止まった。
「またね、香帆」
「またね~八尋には嫌がらせで自慢しとくからー」
「ヤメテクダサイ、あの人、一度拗ねると大変なんですから。じゃあ、また明日」
隆のちょっとしたからかいに対して、笑った香帆。
手を振って歩き出した香帆の後ろ姿を見送った虎矢と莉里は、家の方へ向かって歩き出した。
「ねぇ、香帆ちゃんに言えて俺に言えないって、おかしくないー?」
「ない」
「・・・なんか、香帆ちゃんにあしらわれている八尋の気持ちが、ちょっとわかった気が・・・。これからは、ほーんのちょっとだけ、八尋に優しくしよう」
そう言いながら、胸に手を当てている隆を見て、莉里は笑った。
「大丈夫。隆に勝てる男はいない」
「これだから、莉里に勝てる気がしないんだよね・・・」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる