香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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リクエスト小説

シンデレラと王子~IF物語~(デート&完結編)

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チャイムが鳴ったので玄関を開けると、そこには煌びやかな服を着た男の人が立っていた。
無駄に顔のいい見知らぬ男を見た香帆は数秒考えた後、扉を閉めようとノブを掴む。
慌てて扉を止めた王子が必死にアピールしているが、当の香帆は冷たい視線を向けるだけ。

「ちょ、ちょっと待ってーーー香帆さんや、忘れてませんかねっ、覚えてませんか!?」
「・・・あなたのような無駄に煌びやかな方に知り合いはいませんが」
「いやいや、一ヶ月前にお城で会いましたっ、八尋です、王子の八尋です。大事なことなんで二回言いました」
「いやー、やっぱり忘れられていたなぁ、ほら、俺の言った通りジャン、八尋様」
「うーるさーいっ、虎矢は黙っててぇええっ!!」

気づかなかったが、後ろには虎矢が立って笑っていた。面識がある虎矢と八尋を見比べてようやく、思い出したのか、香帆が手を叩いた。

「あ、思い出しました!!あの巨乳好き、女たらし、来るもの拒まずのエロ王子ですね!!」
「・・・・・・あの、もう少しいい思い出し方を・・・さすがの俺もハートが傷つくぅ・・・」
「あ、そうか。ケーキバイキングの食べ放題の約束でしたか」

虎矢を見たことでやっと思い出したのだろう、香帆の態度が軟化した。しかし、つれない態度は変わらない。

「そうそう!!だから、一緒に・・・その、デートに・・・」
「うーん、莉里ちゃんと昨日行ったんで、もういいかなぁと・・・」
「あの魔法使いっ・・・・・いやいや、昨日と違うケーキが食べられるかもだよー?」
「もう全制覇したんで」

それではとまたもや扉を閉めようとする香帆だが、慌てて扉を閉められないようにしている王子。
しくしくと涙声でずっとお願いと言ってくるのに折れて、香帆は渋々と外に出た。

「・・・まぁ、虎矢さんがいるからいいんですけど」
「香帆さんや、俺は二人きりがいいんですが」
「八尋様よー真帆さんとも約束しただろ、俺抜きでの香帆ちゃんとのデートは禁止って」
「・・・・そう、だけれどよ」
「まぁ、大丈夫。今日は多分、デートにならないから」
「は?そんなわけないだろう?」

頑張ってデートプランを練ったんだぞと威張る八尋に、虎矢は胡乱な目を向けた。

「まぁいいけれど、お前は自分の立場を忘れるなよ」

虎矢の忠告に疑問を持った八尋だが、数分後、その言葉の意味を思い知ることになった。八尋が街に出ると、一気に女性が群がるのだ。歩きたくても動けない。
香帆はと振り返る八尋だが、すでに虎矢が香帆を安全な場所に移動させていた。

「・・・わー。本当にたらしだったんですね」
「八尋様はバカなんだよねー。こうなるのわかりきっていたから、真帆さんが俺を付けたのに」
「あ、だから、兄様達が反対しなかったんですね」

道理で出ていくとき、姉兄も何も言わなかったわけだと納得した香帆は、虎矢から渡された地図を広げた。

「あ、ココよさそうです」
「バイキングはないけれど、ケーキは美味しいと評判だよー」
「いいですねー、行ってみましょう」

八尋を放置してすたすたと歩き出した二人の背中に、八尋はボロボロになりながらも大声で叫んだ。

「まっ、待って、香帆さんやあああああ、お願い、俺も連れてってー!!」
「その女性達が追ってこなければかまいませんよー」
「そ、そんな殺生なぁああああ・・・ぐえっ・・!!」

女性達に圧されて、ついには踏みつけられた八尋の雄叫びはもう香帆達には届かないぐらい遠くなっていた。
八尋を放置していた二人はカフェで、莉里と出会い、意気投合していた。

「美味かった・・・」
「あー、美味しかったです」
「うんうん、美味しかったねー、チョコケーキが特に」
「あ、さすがに王子が可哀そうだから、お土産ぐらいは」
「香帆は優しい・・・」
「じゃあ、一番美味しかったチョコケーキにしようか。あ、莉里ちゃんもお土産に一つどう?」
「隆・・・うん・・・ストロベリーケーキ・・・」
「いいね、美味しいよねー。じゃあ、チョコケーキ2つに、ストロベリーケーキ3つ」 

・・・虎矢はいつの間にか莉里と仲良くなってラブラブになっていた。
意外にあっさりと仲良くなった親友に驚きながらも、香帆は考え込んでいた。

「・・・そういえば、あの人、どこへ行ったんでしょうか」
「さぁね、場所が解らないんじゃないのかな」
「あまり心配してないんですね?」
「あの馬鹿、普段は俺を捲いてばっかりだからねー、いい気味だよ」

ああ、つまり仕事から逃げてるんだね・・・・と納得した香帆は同情する気を無くした。それでも、一応探されないためにということで、莉里が魔法で探すことに。水晶を取り出した莉里は水晶に向かって唱えた。

「エロ王子、エロ王子はどこ?」
「出ましたね・・・え、でも、これって・・・」
「あれ、なんでこの店が映ってるの?」
「・・・・近くにいる・・・ということ」

三人揃って外へ出て見まわすが、王子らしき人物は見当たらない。試しに香帆が呼んでみると、王子の声がどこからか聞こえてきた。

「・・・どこですか、王子様?」
「呼んだーっ、香帆さんや!?」

・・・声の方向にまさかと上を見上げると、お店の屋根でボロボロになった八尋が立っていた。王子を見た三人は一斉に思った。


(((駄目だ、コイツが王子だなんて・・・この世の終わりかも知れない・・・!!)))


「・・・・・解りました、そういうことですね!!」

何故か王子を見た香帆がぽんっと手を打った。
そして、八尋を指さしてとんでもないことを発言した。

「この国の未来のためには、貴方を更生させなければいけないということがよくわかりました!!」
「・・えっと・・・どういうこと、香帆ちゃん?」
「香帆・・・・違う、このバカ、いらない。暗殺一番」
「おおぃ、物騒なことを言うなよ、そこの娘!!」

いつの間にか飛び降りて、目の前にいる八尋を何も言わずに縛り付けた虎矢の技に莉里は拍手喝采。

「虎矢っ、何するのっ―?」
「ついさっきできた大事な彼女を優先するのは当然だろう。それより、香帆ちゃん、もうデートは終わりでいいよねー?」
「え、俺一度も香帆さんと手繋ぎしてないよー?デート終わってなくないっ?」
「はい、終わりで良いですよ」
「お願いだよおぉおお、香帆さんや、最後ぐらい二人きりでっ!!!!!デートっ!!」

涙で落としてくる八尋に困惑しながらも、香帆は虎矢が持っていたケーキの箱からチョコケーキを取り出した。

「・・・あ、そうだ、これ、王子様が好きだって聞いたので食べますか」
「え。」
「これを食べて終わりってことにしましょう?」

にこにこと微笑む香帆を見た八尋はギギギと虎矢に顔を向けた。
そこには顔を背けて口笛を吹いている虎矢が一匹。莉里もニヤニヤと笑っているのが見えた。
どうやら、この二人、八尋がチョコ苦手と解っていて買ったようだ。そして、香帆は何も知らないと見た。
汗だらけになりながらも、八尋は己のプライドと天秤にかけ、香帆から差し出されるケーキを食べる方を選んだ。

「美味しいですよね、ここのケーキはすっごく有名なんですよ」
「・・・・・そ、そう・・・うっぷ・・・」
「あ、涙が・・・それぐらい美味しいんですね。じゃあ、こっちもどうぞ」
「ふ・・・あ・・う、うん・・・」

笑顔になった香帆に断りを入れられるはずもなく。八尋は涙目になりながらもチョコケーキを二個完食した。苦手なチョコに汗びっしょり涙びっしょりだったが、にこにことしている香帆が気づくはずもない。
例え、気づいても、ここぞとばかりにスルーするに違いなかった。

「良かったです。これで王子様も満足でしょう」
「良かったなー、八尋様。これで仕事もはかどるだろーし」
「・・・・か、香帆さん、またお会いできませんか」
「えー面倒なんで嫌です。あっそうだ。ちゃんとお嫁さんはしっかりした人を選んでくださいね。私も真帆兄様のように政務官を目指すことにします!あなたみたいな人が王様になった時が一番大変そうですし」

あーそう来るかと、虎矢は納得した。莉里も同意するように頷く。

「確かに・・・・」
「うん、バカ王子・・・政治、向いてない」

貶されながらもめげない八尋は、香帆にそろそろと近寄ってゴマをするように手を揉みながら囁いた。

「・・・・香帆さんや、そんな政務官よりもっといいお仕事がありますぜ」
「本当ですか、それはどんな仕事ですかっ?」
「お妃様です。俺のお嫁さんになれば名実と共に一番この国を動かせますよー?」
「ええ・・・王子の世話係は嫌です。今日だって女性達を上手くあしらうこともできていませんし・・・浮気もしそうですし・・・・それに、結婚するなら、真帆兄様のような誠実な人がいいです」

ビシリッと固まった八尋だが、めげるわけにはいかないと、必至にアピールを続けていた。

「か、香帆さんが奥さんになってくれるなら、浮気なんて絶対しませんよーっ。仕事だって、ここ一ヶ月は頑張ってるしっ!なー、虎矢からもなんかいってやって!」
「うーん、ここ一ヶ月間は確かに禁欲に仕事にと頑張っていたのは事実だけれど・・・・女関係について完全に解決できるかというと微妙だよな」
「ちょっとあげてから一気にマイナスの方向に落とすのやめてぇええええ!!!」
「でも・・・香帆にとっては・・・悪くない話、かも」
「え」
「え」
「どういうことですか、莉里ちゃん」
「・・・水晶・・・・未来・・・相性・・・・良い・・・香帆、妃・・・・この国良くなる」
「・・・本当ですか?」
「莉里、不本意。でも・・・平和かつ安全な未来は確実」

この国が良くなると聞いた香帆は天啓を聞いたように考え込んだ。
数秒の間だったが、誰も香帆に話しかけられなかった。しばらくしてようやく香帆が口を開いた。

「解りました。王子、貴方との婚約を受け容れます」
「本当にっ!?」
「但し、その・・・身体の触れ合いについては1年間禁止で、も、もちろん、浮気もダメです!」
「え」
「け、結婚した時に体の触れ合いを許します。それが婚約の条件です・・・ダメ、ですか?」

顔を真っ赤にさせた香帆に対し、虎矢がそれは無理だと答えようとしたその時、八尋が宣言した。

「あー。八尋には無理・・・」
「大丈夫、その条件を受ける!!!香帆が相手なら、一人ピーでもなんでも受け入れるからっ!!」
「はぁっ?正気か、お前の禁欲が後1年も続くんだぞっ?」
「俺は生まれ変わる。そして、目指すんだ、聖人君子であるイエス・キリストを・・・」
「無理、絶対壊れてしまうぞ、ただでさえアホなのに・・・。いいか、エロ好きなお前には絶対無理だから止めなさい、こら、聞いてるか、八尋――――っ!」
「神は我に試練を与えた。故に、我、ここにあり」
「こりゃダメだ、自分に酔ってやがる」
「・・・・・じゃあ、私はそういう条件を出したということで、真帆兄様達にも伝えてきます」

そんなこんなで、条件つきながらも婚約した2人はその後もドタバタしていろいろとあったものの、ようやく1年後に結婚できたのです。
そして、ヘタレ王子が王に即位したときには、しっかり者の嫁となった香帆が妃としてサポートし、末永く良い国づくりを行い、2人の子どもにも恵まれ、幸せに暮らしましたとさ。

「八尋、ダメですよ、ちゃんと仕事をしなければ」
「はいっ、香帆たんが言うなら頑張りますっ!!」
「・・・・よくもまぁ、結婚できたな、この二人」
「俺は未だに不本意だがな・・・はい、チョコケーキだ」
「真帆さん、俺今すげー幸せなのっ!お願いだから水を差さないでっ!」
「あら、チョコケーキですね、じゃあ、私が食べさせてあげますわ、はい、あーん」
「・・・ううっ・・・お、美味しいです・・・・・・うぐぅ・・・・」
「うふふ、そうやって可愛い顔を見せて下さる八尋様が大好きですわ」
「ううー、嬉しいけれど何かが違うっ!都合の良い時だけ名前呼びってのもなんだか違うと思うのっ――――!」


未だにチョコが苦手だと言えない八尋は、今日もケーキを堪能した・・・心の中で涙を流しながら。
・・・香帆にとっくに知られていることに気づかないあたり、ヘタレな王子からかっこいい王様にはなれなかったようだ。


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