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番外編
番外編)にゃんとアリア(ザン視点、ツイッター御礼企画)
しおりを挟む「にゃーん?!」
目の前にいるのは真っ黒な猫。それは彼女の色を思わせる色だが、当のアリアは俺の部屋にいなかった。
それにも関わらず・・・
(何故、目の前にいる猫はアリアと同じ声をしているんだ?いや、それより、どうやってここへ入り込んだ・・・??)
「・・・いかん、おかしいぞ。それにしてもこの部屋にも違和感が・・・」
自分の目がおかしくなったのかと擦ってみる。しかし、現実は変わらない。猫と目を合わせた瞬間、猫は見事な躍動で肩へと昇ってきた。ほっぺにすりすりしてくるあたりがかわいらしい・・・
「って、違う、違う。ひとまず確認を・・・」
猫を抱き上げてみると、魔法にかけられている様子もない。
おかしいと思っていると、シャラが入ってきた。
「おはようございます。ザン様」
「シャラか。アリアはどこだ?」
「なにをおっしゃっておられるのです?アリア様はそちらにいらっしゃるではありませんか」
「は?いつからアリアは猫に・・・」
と、思ったとたん、シャラがますます眉間にしわを寄せた。一体何を言っているんだといわんばかりに。
「その猫はあなたが拾ってきてアリアと名付けたのですよ?だからこそ、みんなが貴方の飼い猫だと認識しておられるのですが」
シャラの言葉にこっちが固まってしまった。
(いやいや、人間のアリアがいたはず・・・・)
と、思った時にこの部屋に感じていた違和感に気付いた。そうだ、この部屋には自分以外の気配を感じないのだ。誰かが一緒にいたはずなのにまったくその気配すら感じられないその代わりに、猫の遊び道具のボールやらトイレ用品やらたくさんあるし。
「・・・・マジかよ」
(つまり、ここはアリアがいない世界であり、猫のアリアがいる世界ということか・・・)
最初こそは固まっていたが、人懐こいアリアが自分に構ってとばかりにしっぽを振ってくるので、否が応でも反応してしまう。
仕事の合間に猫じゃらしに反応して、にゃーにゃーとじゃれてくる彼女を見ると和む。
ふりふり、ぶんぶんと尻尾を揺らして遊ぶ様子が可愛らしい。
それでも頭に浮かぶのは彼女の姿。
黒いさらさらな髪
触り具合の良い肌
屈託のない笑顔
時々見せる呆れ顔
いろいろと彼女の表情が浮かぶ。本当にどれだけ表情豊かなんだろうと思うが、シャラ曰く、それはザン様相手だからですという。あまり想像できないだけに何とも言えない。
だが、今日それをちょっと・・・垣間見れたかもしれない。
今のアリアは猫だ。猫なんだが、あらためて彼女と同一だと感じたのは、目の前の出来事のせいだ。
「いた、いたたたたった!!!」
「ふにゃー!!!!」
とある貴族が俺に向かって暴言を吐いた瞬間、アリアがそいつの顏目掛けてひっかいたのだ・・・両手で。
痛いと喚きながら出ていく貴族をよそにアリアは全身を怒らせて今なお鳴いている。
「・・・・アリア、よくやった。だが、あまりおてんばはいけない。」
気付いたらそんな言葉をかけていた。しかし、彼女はつんとそっぽをむいて自分の手を舐めている。
「・・・ああ、うん。」
不思議に納得するのと同時に嬉しさと寂しさが混在していた。
「という夢を見た。」と、アリアに告げると苦笑いが返ってきた。
「・・・随分具体的な夢だねぇ。」
「あまりにもリアルだったんで、目が覚めた時はこれまた寂しいと思ったぐらいだ。猫のお前もいたらいいのに。」
「じゃあ、魔法で猫になろうか?」
彼女がそう言っては笑う。俺の反応なんてわかりきってるくせに。
「バカ、お前はお前だからいいんだろ。それに・・・猫とはこんなことはできない。」
そう言って口づけると、彼女は真っ赤な顔で俯いた。
うん、やっぱり人間のアリアのほうがいい。
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