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裏話2)ザンは基本かっこいいのです

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皇太子殿下から降りてきた大量の書類を確認してから、部下へと下げ渡す。もちろん同時に皇太子殿下の仕事のペースを確認することも忘れない。

「・・・あの様子だと、決裁にはもう少し時間がかかりそうです。もう少し丁寧に仕事をするように連絡なさい。それから、この決裁した分ですが、皇帝陛下のほうへ。未認可の方は向こうの方へ差し戻しを」
「了解しました」
「ザン様、こちらの軍の方の予算についてですが・・・」
「それは第三団長の方へ回してください。その際に次回の討伐で必要な食糧についてもすり合わせを忘れないでください」
「すぐに」
「ザン殿下、こっちのチェック終わりました。こちらの未確認についてはリストをつくっておきましたんでお願いしますっス」
「・・・・・・ご苦労様です。そこに置いておいてください」

ザリュルエルトとザンの共用で使っている方の執務室はいつも人が行き交うので基本は扉を開けっぱなしにしている。
中央ではザリュルエルトがせっせと決裁を行い、その近くの机でザンが兄に渡す書類のチェックをとっている。もちろん、差し戻しの有無もザンに決定権がある。必要とあらば、ザンが自ら書類の確認を行うこともあるが、大抵は兄を一人にせず傍に侍っていることが多い。

その理由としては二つあって、一つは、ザンの方が決済について詳しく的確な判断ができるため、ザリュルエルト一人では判断がつきにくいこと。そして、もう一つは・・・当然ながら、皇帝となる兄を護るためだ。この国の重臣たちはやっかいなことに昔から兄弟の意見を無視して、派閥を作って争っている。当のザリュルエルトとザンは仲が良く、ザンなどは兄の邪魔になるぐらいなら自分を殺してもかまいませんと言っていたほど、兄が皇帝となることに賛成なのだ。(今はアリア妃がいるのでおいそれと死ぬつもりはなかろう)ザンの意向をくみ取ってくれる臣下も多いが、中にはそれを素直に読み取ろうとしない危険分子もいるわけで、それがまた厄介なことこの上ない。
ザンにとって、敬語は『盾』だ。アリアと一緒にいると素がでてしまうが、基本は敬語で過ごすことの方が多い。一日の八割はたぶん敬語で無駄な笑顔を振りまくことが多い。すでに素に感づいているであろうザリュルエルトや皇帝だが敢えて何も言わないあたり、ザンの意図を尊重してくれているのだろう。

「次の書類の説明を頼む」
「御意。ではこちらをご覧ください。これが隣国の麦の生産状況で・・・・・」

ザンの説明を聞いた後、ザリュルエルトはいくつか質問する。それに問題がなければ、決裁はすぐに降りる。それをザンが受け取り、さらに次へと・・・・こうして一日に何千枚の書類の決裁を終えては繰り返しの日々が流れる。

・・・アリアといちゃついているイメージが強いザンだが、正直彼女と一緒にいられる時間は少ないのだ。兄と共に執務することもあれば、総団長として軍の整備、鍛錬、討伐などをこなすこともある。時には出張や訪問でいない兄の代理として執務に励んだり、国の名代として他国との交流や研究会にも参加したりすることも多い。また、皇帝や皇太子とともに政治の話をしたり、政策についての会議を行ったりすることもある。故に、ザンがアリアと一緒にいられるのは一ヶ月に7、8日ほどだ。
そもそも、アリアと二人きりになったとて、毎回エロいことばかりしているわけじゃない。

「だから、これはコストが高くなるから価格もそれなりにあげろとあれほど・・・」
「待って頂戴、今後関税が高くなるのよ。それを考えるとこれがギリギリのラインよ。民の生活基準を考えるとこれ以上上げるわけにはいかないわ」
「いや、関税が高くても、配達料などを抑えればそれなりにはできるはずだ」
「でも、セキュリテイの面でもだいぶ必要になるわ。あちらには転送装置なんてないのだから」
「だからこそ、ギルドを有効に使うべきだろう?」

ポトスはぎゃあぎゃあと言いあっている二人の会話を耳にしながら要約して記録をとっている。シャラはというと、アリアが資料!というたびにそれに合わせた書類を手渡しているし、ザンの部下も同様の役目を果たしている。あーでもないこーでもないと話し合う二人の様子は真剣で、見る人が見れば頼もしいと思うこと請け合いだ。何かをしながら仕事の話をすることも日常的なことで、2人の邪魔をしようと飛び込んできた貴族令嬢ですら飛び交う専門用語を聞いた瞬間そそくさと逃げ出すぐらいにはかなり仕事ができる2人である。

「とにかく、今回はこの形で行く。工場のスロットも増やせるのは一つだけだしな」
「・・・はぁい」

普段はなんだかなんだいってアリアに甘いザンも国民の生活が懸かるととたんに厳しい判断になる。それをわかっているからこそ、アリアも最後は引き下がる。もちろん、彼女は賢いので次の話し合いには新たな材料を持ち出すだろう、だからこそ、ザンは彼女に対して厳しく言えるのだ。・・・とはいえ、すこし落ち込んでいるアリアを見たからにはすこしは慰めてやらねばやるまい。

「アリア、そうむくれるな」
「解ってる・・・解ってるのよ、ザンが言うことに利があるって。でも、感情が追い付かないの」

ザンは経営にも仕事にも熱心なアリアの姿勢を評価している。最初こそは面倒だとも思っていたが、平凡な割には口だけで自分を飾ることに必死だったユナとかいう女と違って、生活費を稼ぎたいからと次々と行動に移すアリアの姿に惹きつけられたことは確かだ。

むくれるように布団にもぐりこんだアリアを見かねたザンは手を振ってシャラたちを退出させた。扉が閉まるのと同時に、アリアを布団越しにではあるが抱きしめた。
最初は少し拒否するようなしぐさを見せたが、抱きしめられて観念したのか、素直に胸にもたれている。ザンの指がアリアの顎をすこし上向きにしたその時、ザンの唇がアリアの唇に触れた。最初は啄むように。次第に熱を帯びて少しずつ感覚が長くなり、次第に舌を絡めあうようになった。キスをしながらも、アリアの髪を下し、彼女の服の紐を外していく。彼女もまた、とろんと欲情を帯びた目でザンを見つめながら上半身に手をそっと滑らせている。アリアもザンが忙しいからこそ、絡み合えるのは今だけだと分かっているのだ。

「んっ・・・ざぁん・・・」
「解っている。そう急かすな」

すっかり裸になったアリアはザンの胸へと口づけながら足を絡めてきた。長くなってきている髪の毛と肢体を眺めながらもザンは急いで自分の服を剝ぐように脱いだ。リップ音を立てながらザンの首へとキスしているアリアの柔らかな身体を舐めまわすように両手で愛撫する。胸はもちろん、お尻にふともも、背中、あらゆるところをすべて触りながら舌で彼女の口の中を蹂躙していく。アリアとザンの身体はお互いの熱で汗ばんでいたが、それすら拭くのも惜しい。
アリアが待てないとばかりに秘部をザンのそこに擦りつけて強請れば後はあっという間だった。ザンが上に覆いかぶさり、アリアの足を広げて秘部を繋げる。幾度もつなげてきただけにスムーズにはまっていく。悩ましい声をあげながらもアリアはザンの背中に腕を回し、ザンはアリアのお尻を持ち上げながら、気持ちよいところを探しては突く。お互いが動きながら、いいところを擦りあうその姿はもはや獣でしかなかった。
ふと、アリアの胸に髪が張り付いているのを見たザンはそこに口づけた。ついでにと乳頭の方もつまみ食いする。つながっているアリアの膣がきゅっと締まる。ザンはそこを狙ってさらに奥へとぐいぐい入り込んだ。有亜の胸の膨らみが形を変え、ザンの枕がわりになる。アリアを揺らしながら時折、胸に顔を埋めるザンの目に映っているのは、アリアの乱れた肢体とエロい顔。(きっとアリアの方でもザンがエロく見えているのだろう。)
「ザン、ざぁん、もっとぉ・・・」
「なら、いつものようにねだるんだな」
「ん・・・好き、好きだから、もっとぐちゃぐちゃにして、これでもっと気持ち、よくなりたいの」
「ああ。で?」
「・・・こんなに愛してるのに、寸止め・・・ザンは、私を愛してくれないの・・・?」
「まて、それ、どこで覚えてきた?」
「んっ・・ふ・・・・ない、しょ・・ねぇ、すき、なら・・ここに・・・入れて?それとも、いや?」
「そりゃ・・・当然、愛してるに決まってるし、嫌ならこんなことやっていない」

ただ、覚悟はしろよと言ったザンの動きはさらに早くなった。ぼんやりとした頭ながらも、内心しまったと思ったアリアだったが、翌日は休みだったなとおもいあたり、考えることを放棄した。
繋がっている音を卑猥だと思いながらも、ザンに突かれて啼いて喜んでいる自分がいることも考えないようにした。これはザンしか知らなくていいことだし。
アリアが自分の痴態を恥ずかしく思っているのと同時に、ザンはアリアの痴態を自分以外には一切見せたくないと思っていた。
だからこそ、途中で入ろうとして事態を汲み取ったラティスを後でお仕置きだと舌なめずりせずにいられなかった。

・・・世間ではザンはかなりできる王子様であり、魔王とはいえ、女性モテする優しい王子様で通っている。その本性はアリアだけが知っていれば良い。もっともアリアに言わせれば、ザンについてはたった一文で表現できるらしい。


「ザンは基本仕事ができるかっこいい人だけれど、中身は絶倫鬼畜なダメ男だからね。ところで、ラティス、その怪我はどうしたの?」
「聞かないでくれっス・・・」


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