【R18】王太子と月の末娘の結婚事情

巴月のん

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2)診察完了・・・・・・?

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「大丈夫か、ディア?」
「全く大丈夫じゃないです・・・・・・はあ~」

カードを無くしてしまったことを未だに引きずっているディアは伯父の心配を他所にため息をついていた。しかし、伯父は場所を考えろと慌てて耳打ちしてきた。

「ここはお城の中だ。粗相のないようにしなさい」
「でも~~!!」
「カードについては再発行を申請しておくから心配いらないよ。それよりも王太子殿下にきちんと挨拶を」
「それ、何十回も聞いたからもういいわ」

ディアが戻った時、伯父様は難しいかもしれんとため息をついていた。それなのに、なぜか翌日になってお城から使者がやってきたのだ。これには伯父様共々びっくりして慌てて用意したものだ。・・・・・・お城に行くとは思わなかったからごく普通のワンピースで来てしまっている。伯父も後から気付いたらしくおろおろしていたが、ディアとしてはもう来てしまった以上やむなしと判断した。もうムリなことをくだくだと引きずる趣味はない。

(そもそも、王女とはいえ、王族が庶民と変わらぬ暮らしをする小国だもの。問題ないでしょうし、それにリュックだって今更よね)

ディアはモーント国の第五王女として生まれ育った。本当に面積も小さい国なので、経済的にも余裕なく、王族ながらも庶民的な暮らしをして育ってきた。何の因果か、前世と同様にモーント国の王族は医学に長けた血筋だったので医学の最先端を学ぶことができた。そのおかげで、ディアは現世でも変わらぬ医学の道を歩むことができるし、前世ではかなわなかった医者にもなれるかもしれないとほっとしていた。
色々と想いを馳せていると、メイドがやってきて、王太子の部屋まで案内しますと誘導してくれた。伯父は王様と話したいというので、ディア一人で行くことになった。一応診療器具を詰めておいたリュックを背負ってメイドの後を歩く。

「あれ?」

しばらくしてたどり着いた部屋の前で待っていたのはディアが昨日会った女性だった。服こそはメイド服ではあるものの、忘れようにも忘れられない銀色の髪と目。女性の方もディアに気づいたようで、メイドを下がらせてお辞儀をしてきた。

「昨日は誠にありがとうございました。どうぞ、お入りくださいませ」
「まさか」
「詳細はご主人様から直接お聞きになられた方がよろしいかと思います」

嫌な予感は得てして当たるもので。女性が開けた扉の先へ恐る恐る足を踏み入れると、奥のベッドで読書をしている男性が目に入った。肩より少し長めのオレンジの髪に薄緑の目。年齢的にはディアより少し上ぐらいだろうかと思われた。
逃げ出したかったが、女性にどうぞ近くへと誘導されては仕方がない。男性をそっと見ながらも、ベッドの近くにおかれた椅子に座った。すると、男性は本を閉じ、ディアの方を見てきた。

「・・・・・・やっぱりか」
「は?」
「色々話すことはあるが・・・まずはこれだな。アメジス、カードを」

男性が傍にいた女性の名前を呼んだのと同時にアメジスがカードをディアの前に差し出してきた。

「これっ・・・・・・!!  無くしたと思っていたのに!」
「昨日落としていたのを拾った。申し訳ないのだが、これで身分を調べさせてもらったよ、モーント国の末姫」
「昨日?調べた・・・・・・?」
「今日会えるとは思わなかったがな。改めて、助けてくれたことに感謝を」

カードを受け取りながらも助けた覚えは・・・・・・と言いかけた時、ディアの頭に浮かんだのは昨日脈診をした男。あの時はストールで顔がはっきりとわからなかったが、彼だというのか。それなら落としたカードを拾ったのもうなずける。

「はぁ。なるほど。納得しました。あれは貴方だったんですね」
「改めて名乗ろう。俺はこの国の第一王子のスピカ。これは召使兼護衛のアメジス」
「・・・・・・モーント国の第五王女のディアと申します。以後お見知りおきを」

紹介されては自分もしないわけにはいかない。たちあがって改めてスカートの裾をつまんでお辞儀をすることで正式な貴族のお嬢様としての礼をとる。それに頷いたスピカを確認して再び座った。

「あの~殿下が私を呼ばれたのはこのカードの為でしょうか?」
「それだけならよかったんだがな。父上から君からの診察を受けるようにと言われている。不本意だが、恩人である君ならば受け入れねばならない」
「それは感謝します。私もあなたを診察しないことには帰れませんから」
「なるほど、頼まれた立場ってわけか」

なるほど、お互いに大変なことだと肩をすくめるスピカにさもありなんと頷いたディアはリュックから眼鏡と聴診器を取り出した。

「では、ここからは問診をさせていただきますね。いくつかの質問に答えていただきますようお願いいたします」
「解ったよ」

本当に嫌なのだろう、ため息をつきながらゆっくりとボタンを外し始めたスピカ。ディアの耳に入る情報が正しければ、スピカ王子は健康なはず。
・・・・・・実際脱いでもらって、きちんと診たけど筋肉は落ちてなさそうだし。でも、聴診器を当ててわずかに微妙な音がするのに気づいた。そして、ベッドの横の棚に置いてあった薬袋を手に取って薬をじっと眺めてみた。

「ところで、侍医じいには何年持つと言われたのでしょうか」
「直球できたか・・・・・・長くても2年ほどと言われている」
「なるほど、王様が内密にと言ってきたのはそのためですか」
「違うね」
「はい?」
「父がそんな心配するわけないな。あの人が心配しているのはただ1点。王族の血筋のみ」
「えーと・・・・・・?」

つまり、跡取りである貴方を心配してるのでは?と促すがスピカは首を振った。

「違う。俺の次・・・・・・つまり、次代の王が生まれるかどうか、だ」
「は?」
「スピカ様、それは・・・」
「本当にうるさいんだよな。俺の余命が解ったとたんいきなり結婚しろってお見合い写真を次々と持ってきやがって。ほら、机の上見えるだろう?  あれ全てだぞ」
「げっ!」

ディアがスピカの指の先に見えた机を眺めたとたん、声をあげたのは山積みがあまりにもひどかったからだ。しかも机の下にもぱらぱらと落ちている。

「な、スゴイだろう?」
「それはまた・・・・・・ある意味でスゴイデスネ」
「だろう?  前にもあまりにも必死になりすぎたのか俺に媚薬を飲ませて、夜這いまでさせようともくろんで」
「えっ?」
「撃退したけれど、また同じようなことがあったらたまらないからと、アメジスに護衛を頼んでるわけ」

スピカの話になるほど・・・・・・と納得したが、それと診察がどう関係するのだろうかと聞いてみる。すると、スピカは嫌そうに唸りながらもディアに耳を寄せるように言い、ベッドの端に座らせた。おとなしくスピカの隣に納まったのを確認したスピカはそっとディアの耳元で囁いた。

「えっと・・・・・・?」
「余命を聞いた時に精子がほとんどないとも言われていてな」
「・・・・・・・・・・・・っ!!!」

スピカの言葉を脳裏で繰り返した時ようやく意味が分かった。つまり、あれだ、跡継ぎが生まれない可能性が高いからということか。

「元々、この国の王族は・・・・・・機械大国ということもあって、あまり空気が良くない。それもあって、遺伝的に代々子どもが生まれにくいたちだ」
「あ。そういえば、兄弟は」
「いないな」
「なるほど。それで何とかしてほしいってことですか」
「そうだ。父はかなりあせっている。ましてや後2年そこらで死ぬ身だ。さっさと跡取りを作ってくれっていうのが本音だろうな。・・・・・・もう服を着ていいか?」
「あ、はい」

スピカの言葉を聞きながらいろいろと考えてみる。まず、元々病弱かどうかは最初に聞いて否定されている。さらにアメジスが言うには、昔はこのように弱くなかったという。ここ数年で息切れ、呼吸困難がひどくなっているとも。
それを聞いたディアは一つ薬を手に取り、棚の上に紙をおいてその上に置いた。そして手ですりつぶしながら眼鏡の端についているスイッチをオンにしてじっくりと観察する。いきなり観察モードに入ったディアにびっくりしながらも眺めていたスピアはアメジスと顔を見合わせていた。

「なんだよ、あれ」
「私にもわかりかねますが・・・・・・薬が気になっているご様子ですね」

(やっぱりね。成分がおかしい。それにーー)

「王太子殿下・・・・・・貴方が死んだときに得する方はいらっしゃいますか?」
「・・・・・・たくさんいるな。特に教会や評議会のじじいどもなんかはそうだ」
「評議会や教会が?何故?」
「この国は、王族、教会、評議会の三つの勢力のバランスで均衡を保っている。評議会は貴族の代表的なもんでな。で、この国の制度として、王族が滅びた時には評議会のメンバーから王を選出することになっている」
「なるほどね~」
「で、なんでそんなことを聞いた?もちろん、理由は教えてもらえるんだろうな」

訝しく思ったスピカに対し、今度はディアが自らベッドの端に座ってスピカの耳を引っ張った。気になったのかアメジスもスピカの近くにくっついて耳を寄せていた。

「えーと。この薬ですが、調合が適当な上に毒の成分が混じっていますね」
「はっ!?」「本当ですか!?」
「残念なことに。侍医は・・・・・・貴族出身ですか?それと王様の侍医と同じ方でしょうか?」
「貴族出身は確かだ。父とはどうだったかな・・・・・・アメジス?」
「いえ、殿下と陛下の侍医は違います。元々は生まれた時に担当の侍医が就きましたが、6年ほど前に交代を・・・・・・」
「そういえば、体調が悪くなったのもその頃だったな」
「すぐに侍医を変えていただかないと!」

慌てふためくアメジスを目にしながらもディアはそれだけでは不十分と考えていた。

「侍医を変えてもらっても、すぐには難しいでしょうね。この薬の影響ももっとよく調べられたら良いのですが。まぁ、私は帰らなければいけないので無理ですね。他の協力者になれそうな人とかいませんか?」

はーとため息をついたディア。そんなディアをいきなり抱き込んでベッドに沈めたのはスピカだった。

「は?」
「アメジス、下がれ」
「は・・・・・・はい」
「あ、あの?」

アメジスはスピカの口調に本気を感じ取ったのか、下がっていった。なぜか手首をつかまれ、頬をそっと撫でられる。嫌な予感をひしひしと感じながらも、ディアは逃げようとしたが、がっちりつかまれていては逃げられるはずもなく。

「モーントは医学に優れた国と聞いていたが、なるほど、優秀だ」
「それは・・・・・・ありがとうございます」
「年齢は16を超えたか」
「・・・・・・つい先月に」
「素晴らしい。それなら父も文句を言わないだろうし、最適だな」
「は?私はまだ医者になってない身ですし、侍医なんて立場は」
「侍医じゃなくても俺の傍にいられる唯一の立場がある」

ニヤリと笑ったスピカに嫌な予感を感じたディアだが、近づいてくる顏を押しのけたくても手首をつかまれては動けない。
ふわりと唇と唇が重なる。突然のキスに驚く間もなく顎を掴まれた瞬間、思わず開いた口にぬめりとした舌が入り込んだ。

「んっ・・・・・・あぅ・・・・・・ん!」

なかなか外せない。口内を蹂躙され、熱を感じてしまう。そもそもキスも初めてで、どうしていいかわからない。必死に息をしようとするも、口を塞がれてうまく息ができない。しかも、舌を吸われたり、歯を舐められたりとやりたい放題されている。ようやく口を離せた時なんかは空気が美味しいと思ったほどだ。

「はっ?  なんで・・・」
「お前の国には充分な配慮をしよう。できる限り、贅沢な暮らしをさせてやる。だから、俺の妻になれ」

ベッドに押し倒され、いきなり妻になれと言われて固まらないほうがどうかしている。息苦しさで涙目になっているディアを他所にスピカはディアの服を脱がすべく、ファスナーに手をかけているところだった。


「ちょ、待って、王太子、でんっ・・・・・・か・・・・・・!」

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