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第一章 高校一年生(二学期)
きずな(萌花)
しおりを挟む放課後を報せるチャイムが鳴り、生徒たちは我先にと校舎から出ていく。
真っ先に家に帰りたい萌花も、生徒たちに混ざって帰っていくことが多かった。
ただ、最近は友人と過ごすのも悪くないと思い始めていて。
人が寄り付かないような隠された通路を通り、部活のある時間帯に関わらず人気のない体育館裏へと移っている。
その理由はもちろん、友人の——
「にゃー」
「えへへ……にゃー」
——というより、この猫のためだった。
「……ほんと猫好きなんですね。二時間も猫と戯れていられるなんて」
「あっ! ご、ごめんね~……」
はっとして猫から手を離したが、まだ名残惜しそうに手をしきりに動かしている少女——紫乃は申し訳なさそうに萌花の顔を見上げた。
「猫とか……動物と遊んでいると、ついつい時間を忘れちゃうんだよね~」
「あー、それは私もわかります。というか、別に責めてるわけじゃないですし大丈夫ですよ?」
放課後になった時間から約二時間、「猫可愛いね」くらいのことをたまに話しながらずっとここにいた。
だが、不思議と居心地が悪いわけではなく、むしろよかったのだ。
紫乃は爪を立ててしがみつく猫を膝から下ろし、スカートについた毛を軽く払う。
「萌花ちゃん、もう行こっか~」
「え? まだ撫でててもいいですけど……」
「まあ、そろそろ帰るつもりだったからね~」
「ばいばい」と猫に手を振り、学校を後にする。
現在時刻は午後6時。用事というかなんというか、萌花の"計画"にはギリギリ間に合うだろうか。
出来るだけ軽く、自然に聞こえるように注意しながら後ろを歩く紫乃に声をかける。
「紫乃ちゃん。家って門限とか厳しいですか?」
「ん~? いや、特にそういうことはないかな~」
それを聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。それなら問題はなさそうだ。
少し気恥ずかしいが、これまたできるだけ何気なく聞こえるよう心がけて。
「じゃあ……少し時間遅いですが、軽く何か食べて帰りませんか……?」
友達といったら一緒にご飯を食べたり、買い物に行ったり……そういうものだと思う。
紫乃とはあくまで、ちょっとした世間話をするだけ。
未だに彼女のことはよくわかっていないのだ。
せっかく友達になれたのだから、もっとよく知りたい。この微妙な距離感をもう少し縮めてみたい。
自然な形で色んなことを聞けたら……そう思って、少し勇気を出してみた。
「うん、いいね~! どこ行く~?」
ぱあっと表情を輝かせてそう訊く紫乃。
萌花はその様子を見て、もしかしたら紫乃も仲良くなりたいと思っていたのかもしれないと気づいた。
「あ、学校近くにファミレスがあるのでそこに行きませんか?」
「お~! じゃあ早速行こ~!」
二人は本当に満足そうな笑顔で、ファミレスへ向かっていった。
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