社会復帰日記

社会復帰中

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19.04.14

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 部屋の中を見回してみると、本とCDが山になっている。本棚やCDラックに入らない分は、街にあるどうやって生計が成り立っているのか理解できない古本屋みたいに積んである。どちらも本腰を入れて集めている人からすれば足元にも及ばない程の中途半端な量ではあるのだけれど、周囲の人に部屋の状況を話すと、大抵は驚かれる程度には所有している。その癖、全く読んでいないのに、また本を買ってきたり、手元にあるCDを聴き込んでいないのに新譜を購入している。一方で、テレビは持っていないし、服だって数えられる着数しか無い。これらはそこまで興味が無いからだが、自分でも少し極端だな、と思ったこともある。このことについては考えてみたことがあり、その時には所有物が私が生きてきたことと等価だからだろう、と結論付けた。私の感覚で話す。私、と言うか、コレクター気質の話なのかもしれない。多くの人は、自分が何か、と言うことに関して、記憶や経験にそれを見出しているのではないか。成功・失敗体験、誰かに言われた一言、等。それに対して、思い出やら体験が希薄な私は、物を所有し、その所有物を利用して、自分を説明しようとする。私はこれだけのものを持っていて、これは持っていない、そんな性質の人間です、と説明しようとする。読んでいるとか、聴いているは関係が無くて、ただ、持っていることが重要なのだ。だから、私は今日も本やCDを買い、それを所有する自分を誇りに思いながら、物が少なくても済んでいる人たちをとても羨ましく恨めしつつ、物に私を依存させて生きている。

 昨日からの続き。後輩の女性からの連絡が途絶え、悲しさが加速している。ここで今までの恋愛や性を振り返ってみよう、と思い付く。他の人と同じく、これは私の人生に強く結びついていることに違いないからだ。過去編である。大抵、連載物では過去編に入ると人気が落ちたりするイメージがあるので、ここは正念場である、と勝手に意気込んでいる。

 私は男子高校出身であり、貴重な思春期を異性から離れて過ごしていたが、それとは関係なく、男子高校に入る前から、異性と話すのが苦手だった。そもそも積極性を非常に欠いていた。男子校の文化祭ともなれば、女子高の人がそれなりに集まって来る。私も自分の催しにそういう女学生を連れていくために、無い勧誘スキルを使って、必死に声をかけて、何組かを連れていくことは出来たのだけれど、連絡先の交換までは至らなかった。それを口にすることすら出来なかった。クラスまで連れて行ったら、担当者に渡して、新しい相手を探しに行く。明らかにパシリだった。同じように彼女が出来ない仲間と傷を舐め合いながら、3年を過ごした。

 そんな時期を超えて、初めて彼女が出来たのは、大学2年生の時だった。20歳。相手は同じサークルの人だった。地味だが、可愛く、まあまあ人気があった。他の男性が告白して、振られた、みたいな話を付き合った後に聞いた。私のアプローチは非常に遠回しで、飲み会の度に近くにいるよう心掛ける、飲み会後に近くにいるようにする、キャンパス内で見つけたら声をかける、みたいなものだった。元々、趣味が近いこともあって、話しやすかった。私のアプローチどうこうは関係なく、結局それだけの話かもしれない。

 大学1年の春に出会い、大学2年の冬に告白。出会ってから約2年も経っていた。告白には、酒の力を借りた。飲み会の帰りだった。私はとても酔っていたから、彼女がどんな顔をして了承してくれたのか、まるで覚えていない。

 彼女は女子高出身だったこともあり、相手にとっても、私は初めての恋人だった。今思えば、いくら女子高出身とは言え、丸々2年間の大学生活もあるのに、私が初めての恋人だったということは、彼女はそこまで可愛くなかったのかもしれない。控え目な性格だったから、目立たなかっただけかもしれない。だが、その当時はとても可愛かった。とても好きだった。

 そんな彼女と付き合うことが出来たのは、私の人生のピークの1つだと思う。この時期はモテ期だった。人伝てに、私に思いを寄せている人が数人いることを聞いた。同級生、後輩含め、全員が女子高出身で、今まで恋人がいたことがない子達だった。私の人畜無害感は、世慣れしていない女子高出身者には適当だったのだろう。皆、私を踏み台にしていく。

 それはともかく、初めて出来た彼女だ。同じサークルだったこともあり、関係は出来る限り秘密にしようと決めていた。周囲に騒ぎ立てられた時に、対応できる自信がお互い無かったせいだ。お互い初めての恋人だったこともあり、関係は遅々として進まなかったが、全てが新鮮でとても楽しかった。初めて手を繋いだのは、5回目のデートだ。それまで微妙に触れるか触れないかの距離感を保ち続けた。抱き締めたのは、何回目だっただろう。これも酒の力を借りたのだった。路傍で抱き合うのは、流石に恥ずかしかったから、少し路地に入った。柔らかかった。手の位置が悪く、彼女が「痛いよ……」と微かな声で言ったことを覚えている。だが、粘膜の接触には、いつまでもいけなかった。

 性欲はあった。強くあった。元来、私は非常に性欲が強く、自慰行為依存症的に、日に何度もすることがあった。今も1日に数回することがある。モノが痛くなることをわかっていながら、してしまう。そんなわけで、彼女の服を剥いでしまいたい、とは度々思っていた。だが、これも臆病か、やはり、手を出すことが出来なかった。そのせいで彼女に呆れられたのだろうか。私達の関係は夏を迎えて、破綻する。

 細かい話は明日以降に続ける。
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