746 / 1,646
小さな前進
しおりを挟む
ランゲージは手に収まる程の小さなナイフを、まるでマジックのように取りだした。それを親指で広げると、重なっていた複数のナイフが扇状に広がる。
両手一杯に持ったナイフを身体の前でクロスさせ、彼は朱影に向かって走りながらそれを次々に投げつけていく。
だが、朱影の見事な槍捌きの前に、ナイフはさながら紙吹雪のように軽く弾かれ宙を舞う。そして、隙を見て朱影は弾いたナイフを槍でランゲージの方へ、力強く弾き飛ばしていく。
銃弾のように鋭く空を切るナイフが、ランゲージのスーツを擦り血を滲ませる。徐々にコツを掴み始めた朱影の攻撃は、少しずつ正確さを身につけていった。
「チッ・・・!大した腕前じゃないか。この手は悪手だったか?」
「次は外さねぇよ?そのニヤケ面も見納めだなッ!」
「それはどうかな?“お前の弾いた攻撃も通用しなくなる“。いくらコツを掴もうと無駄だ」
ランゲージがそう語り始めた途端に、朱影の弾いたナイフは男に当たらなくなる。避けている訳ではない。朱影がナイフを弾くと、軌道がズレ思い通りの場所へ飛んで行かなくなってしまった。
しかし、それも朱影の思惑通りだった。これでいい。手段は他にもあると、決して焦る表情をランゲージに見せず、すぐに朱影はナイフを弾き返すのを止める。
間合いを詰めては、鋭い突きや薙ぎ払いを繰り出すが、ランゲージにはまだ届かない。まだ彼の言う通り、槍での攻撃が当たらないことを再度確認すると、朱影は周囲を見渡し別の建物へと場所を移す。
当然逃すまいと後を追ってくるランゲージ。だが朱影の目的は逃げることではない。今度は今までとは違う形状の槍を手元に取り出した朱影。
矛先の両脇に、細長いタンクのような物が取り付けられた、異様な形状をした槍。それをランゲージ本体ではなく、近からず遠からずの地面に向かって勢いよく投げ放つ。
「・・・?外した訳ではないな。何のつもりッ・・・!」
「喋ってると、舌噛むぞ?」
直後、強烈な光を放ち異形の槍は爆発を引き起こした。朱影はその爆煙に乗じて姿を眩ましながら非難する。
ランゲージがどうなったかは分からない。しかしすぐに追いかけてくるといった様子は見られなかった。それでも、今の一撃で仕留めたと言う気配は感じられない。
これを機に試したいことがもう一つあった朱影。追ってくる気配はないものの、仕留めた様子もない。無闇に爆煙の中へ飛び込み、トドメを刺そうとするのは、何があるか分からない暗闇の中に足を突っ込むようなもの。
そして朱影の試したいことは、それとは真逆のところにある。
「さて・・・今度はどうかな?」
彼は逃走の足を早め、一気にその場から離れようと加速し始めた。これまでの逃走よりも、より逃走に集中し特化した逃げ方。後方を気にすることなく、ただセントラルシティから逃れんとする意思のみで走る。
だが、彼の逃走劇は長くは続かなかった。後方の爆煙が薄まり始めた頃、建物の屋上を次々に飛び回っていた朱影の前に、どこからともなくランゲージの物と同じナイフが、彼の足元に飛んできた。
「連れないじゃないか、あんな別れ方では」
「そうかい、まだ逃してくれねぇって訳かよ・・・」
全力で駆け抜けていたのは事実。それでもランゲージから逃れられなかったということは、今までと何ら状況は変わっていないことになる。しかし、それは如何なる方法であっても、この男から逃れられず倒すことも出来ないという絶望ではない。
朱影の目にはまだ希望が映っていた。足を止めて男と対峙する。そして再び槍を手にし、近距離戦を仕掛ける。男がそれを涼しい顔で避ける中、朱影は槍地面に突き刺して高く身を翻す。
同時に、規模は小さいものの何本かの槍が地面から突き出し、ランゲージを襲う。だがこれもまた、命中することはなかったの。
突き出した槍の中に、先ほど見せた異様な形をした槍が紛れていた。今度は目立たぬよう、カモフラージュをして仕掛けていた。
着地した朱影は、攻撃を避ける男を尻目に再びその屋上から飛び去る。レンゲージの目に、朱影を追うよりも先に先ほどの槍と同じ形状の物が視界に入る。
「くッ・・・またか!何度やっても同じだ!“爆発ごとき、私には効かない“!その程度では止まらんぞ!」
「へぇ、そうかい。そりゃぁいい事を聞いたな」
別の建物の屋上に着くや否や、朱影は急転回しランゲージが飲み込まれた爆煙の中へ向けて、一本の槍を投げ放つ。煙の中を裂いて進んで槍は、その中にいた男の元へと真っ直ぐに向かう。
「うっ・・・!」
煙の動きを見て、槍の接近を察したランゲージは辛うじて直撃は免れるものの、頬にかすり傷を負った。
これはただのかすり傷ではない。二人の戦いにおいて、戦況を揺るがす大きな一撃となった。これまで朱影の槍は擦りもしなかったが、ここにきて漸く直接的な攻撃を当てることに成功したのだから。
両手一杯に持ったナイフを身体の前でクロスさせ、彼は朱影に向かって走りながらそれを次々に投げつけていく。
だが、朱影の見事な槍捌きの前に、ナイフはさながら紙吹雪のように軽く弾かれ宙を舞う。そして、隙を見て朱影は弾いたナイフを槍でランゲージの方へ、力強く弾き飛ばしていく。
銃弾のように鋭く空を切るナイフが、ランゲージのスーツを擦り血を滲ませる。徐々にコツを掴み始めた朱影の攻撃は、少しずつ正確さを身につけていった。
「チッ・・・!大した腕前じゃないか。この手は悪手だったか?」
「次は外さねぇよ?そのニヤケ面も見納めだなッ!」
「それはどうかな?“お前の弾いた攻撃も通用しなくなる“。いくらコツを掴もうと無駄だ」
ランゲージがそう語り始めた途端に、朱影の弾いたナイフは男に当たらなくなる。避けている訳ではない。朱影がナイフを弾くと、軌道がズレ思い通りの場所へ飛んで行かなくなってしまった。
しかし、それも朱影の思惑通りだった。これでいい。手段は他にもあると、決して焦る表情をランゲージに見せず、すぐに朱影はナイフを弾き返すのを止める。
間合いを詰めては、鋭い突きや薙ぎ払いを繰り出すが、ランゲージにはまだ届かない。まだ彼の言う通り、槍での攻撃が当たらないことを再度確認すると、朱影は周囲を見渡し別の建物へと場所を移す。
当然逃すまいと後を追ってくるランゲージ。だが朱影の目的は逃げることではない。今度は今までとは違う形状の槍を手元に取り出した朱影。
矛先の両脇に、細長いタンクのような物が取り付けられた、異様な形状をした槍。それをランゲージ本体ではなく、近からず遠からずの地面に向かって勢いよく投げ放つ。
「・・・?外した訳ではないな。何のつもりッ・・・!」
「喋ってると、舌噛むぞ?」
直後、強烈な光を放ち異形の槍は爆発を引き起こした。朱影はその爆煙に乗じて姿を眩ましながら非難する。
ランゲージがどうなったかは分からない。しかしすぐに追いかけてくるといった様子は見られなかった。それでも、今の一撃で仕留めたと言う気配は感じられない。
これを機に試したいことがもう一つあった朱影。追ってくる気配はないものの、仕留めた様子もない。無闇に爆煙の中へ飛び込み、トドメを刺そうとするのは、何があるか分からない暗闇の中に足を突っ込むようなもの。
そして朱影の試したいことは、それとは真逆のところにある。
「さて・・・今度はどうかな?」
彼は逃走の足を早め、一気にその場から離れようと加速し始めた。これまでの逃走よりも、より逃走に集中し特化した逃げ方。後方を気にすることなく、ただセントラルシティから逃れんとする意思のみで走る。
だが、彼の逃走劇は長くは続かなかった。後方の爆煙が薄まり始めた頃、建物の屋上を次々に飛び回っていた朱影の前に、どこからともなくランゲージの物と同じナイフが、彼の足元に飛んできた。
「連れないじゃないか、あんな別れ方では」
「そうかい、まだ逃してくれねぇって訳かよ・・・」
全力で駆け抜けていたのは事実。それでもランゲージから逃れられなかったということは、今までと何ら状況は変わっていないことになる。しかし、それは如何なる方法であっても、この男から逃れられず倒すことも出来ないという絶望ではない。
朱影の目にはまだ希望が映っていた。足を止めて男と対峙する。そして再び槍を手にし、近距離戦を仕掛ける。男がそれを涼しい顔で避ける中、朱影は槍地面に突き刺して高く身を翻す。
同時に、規模は小さいものの何本かの槍が地面から突き出し、ランゲージを襲う。だがこれもまた、命中することはなかったの。
突き出した槍の中に、先ほど見せた異様な形をした槍が紛れていた。今度は目立たぬよう、カモフラージュをして仕掛けていた。
着地した朱影は、攻撃を避ける男を尻目に再びその屋上から飛び去る。レンゲージの目に、朱影を追うよりも先に先ほどの槍と同じ形状の物が視界に入る。
「くッ・・・またか!何度やっても同じだ!“爆発ごとき、私には効かない“!その程度では止まらんぞ!」
「へぇ、そうかい。そりゃぁいい事を聞いたな」
別の建物の屋上に着くや否や、朱影は急転回しランゲージが飲み込まれた爆煙の中へ向けて、一本の槍を投げ放つ。煙の中を裂いて進んで槍は、その中にいた男の元へと真っ直ぐに向かう。
「うっ・・・!」
煙の動きを見て、槍の接近を察したランゲージは辛うじて直撃は免れるものの、頬にかすり傷を負った。
これはただのかすり傷ではない。二人の戦いにおいて、戦況を揺るがす大きな一撃となった。これまで朱影の槍は擦りもしなかったが、ここにきて漸く直接的な攻撃を当てることに成功したのだから。
0
あなたにおすすめの小説
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる