World of Fantasia

神代 コウ

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演奏に組み込まれたもの

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 学校でクリスとカルロスに遭遇した二人は、その後クリスと別れ食堂で新たにアルバの音楽監督に就任する手筈となっているアルミンと出会う。そこでレオンらとは違う何らかの症状を引き起こしている様子のアルミン。

 身体や他の記憶には影響はないようだが、前日の一部の記憶だけポッカリと抜け落ちていた。レオンらは現地を訪れることで記憶を取り戻したが、アルミンにはこれが適応されず思い出すことはなかったようだ。

 そして新たに分かったこと、確認したこととして夕暮れ時にアルバに流れる音楽の正体とその音源についてだ。それこそが、レオンらが今向かおうとしているグーゲル教会に何らかの秘密があるのではないか。

 夕暮れ時にはまだ早い。日も傾き始めている中、三人はグーゲル教会へと到着する。外観や内部は普段と変わらぬといった様子。昨夜、レオンとカルロスが眠気に意識を奪われる寸前、辛うじて侵入した扉も何か痕跡があるといった様子はない。

 「どう?二人とも。実際に教会に来てみて」

 レオンとカルロスは顔を見合わせるが、二人とも何かピンと来ているといった様子はない。教会の中に入った三人は、取り敢えず目立たぬように入り口付近の角の席に腰を下ろす。

 「どうよ?レオン。俺よりお前の方が意識を保っていたんだろ?何かその時と比べて違うものとか同じものとかあるか?」

 「そう言われてもな・・・。様子と言っても普段と何も変わらないし、意識が朦朧としてたんだ。ハッキリと当時の様子を覚えているかと言われると・・・」

 「んだよ、頼りねぇなぁ~」

 「・・・・・」

 カルロスの悪態を突く言葉を全く意に介せず、レオンは仕切りに周囲の様子を入念に見渡している。彼に相手にされなかったカルロスは大きなため息と一緒に背もたれへともたれ掛かると、続けてジルが彼にも同じ質問をする。

 「カルロス、貴方はどうなの?何か思い当たる節とかないわけ?」

 「そんなこと言われたって、そんな直ぐに何かが見つかるって訳でも・・・」

 「そういえば演奏は教会のどこから?」

 「そりゃぁ奥のパイプオルガンよ!ジルはあの演奏を間近で聞いてねぇんだろ?凄かったぜぇ~・・・それこそ魂が天に召されるみたいなよぉ。なぁ?レオン」

 カルロスが話を振ると、レオンは何か考え込むかのよう顎に手を当てながら俯いていた。返事のないレオンに再びカルロスが声を掛けると、彼は考え事をしていたと言ってとある考察を二人に披露する。

 「なぁ、俺達やアルミンさんとの違いは何だったと思う?」

 「あ?そりゃぁ音楽を聞いた場所だろ?」

 「音源からの距離・・・かしら?」

 「勿論それもある。だがそれでは、同じ演奏を聞いたというジルとアルミンさんで何が違うんだ?」

 アルバに流れる心地のいい演奏が、グーゲル教会で演奏されていたとしてレオンとカルロスはそれを同じ空間で聞いたことになる。だが、教会の外でそれを聞いたアルミンとジルで症状の違いが生じているのは何故なのか。

 「でもよ、全く同じ距離って訳でもねぇんだし、個人差があるんじゃねぇのか?大人や子供でも違うかもしれないし、男と女でも違うかもしれないだろ」

 「勿論、要素を挙げればキリがないが、俺が注目したいのはアルミンさんは恐らくあの演奏を“二回以上“聞いているんじゃないか?」

 「どういうこと?」

 三人が教会から聞こえてくる音楽について意識し始めたのは昨日のこと。式典とパーティーが行われた日の夜は、皆それぞれ忙しくその演奏のことなど覚えてもいないまま就寝してしまっている。

 そしてレオンとジルは、次の日の早朝にジークベルト大司教が遺体で発見されたという事件を知ることになった。

 アルミンはパーティーで大司教と共に挨拶回りをした後、宮殿を立ち去りグーゲル教会にも訪れていたようだ。彼の記憶はその日から曖昧になっている。

 つまり、アルミンはレオン達よりも一日多くその演奏を耳にしていたのではないかというのがレオンの考察だった。そしてその一日目に、レオンとカルロスと同じく教会でその演奏を聞いてしまい、記憶を失ってしまったのではないか。

 翌日、アルミンは記憶をハッキリと思い出さないまま過ごしてしまい二度目の演奏を聞くことで症状が悪化してしまったのではないか。

 「おっ・・・おい、それじゃぁ俺とお前は一度教会で演奏を聞いているからマズいんじゃ・・・」

 「あくまで仮説だ。本当にそうなるかは分からない」

 「でも、アルミンさんはレオンの仮説通りになってるわよね?つまり、一度教会で直に演奏を聞いてしまうと、記憶を失ってしまうようになるってこと・・・?」

 だが、失われる記憶は大したものではない。人体に影響を及ぼす事もなければ、重大な記憶という訳でもないようだ。あくまでその人物の生活に支障をきたさないレベル。そして、何かこの一件の真相を探ろうとすればするほど、そこまでに得た手掛かりを全て忘れてしまうという仕組みになっているようだ。
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