1,551 / 1,646
技術力の犠牲者
しおりを挟む
ホッとした表情を浮かべながら、店からケヴィンが戻って来た。少々景色は悪いが、奥のテラス席なら空いていると言われてその場で席を取って来たようだ。
「皆さん、お待たせしました。さぁ行きましょうか」
一行が店に着くと早速一人の店員が席へと案内してくれた。店内は地元の人達で賑わい、外のテラス席はカメラやパンフレットを持った観光客でいっぱいだった。
その中でも景観の都合上、植木の影になってしまっている席が空いていた。席に着くと店員が申し訳なさそうに椅子を引いてくれた。せめてものサービスにと、何かみんなで摘めるアルバの名物料理をご馳走してくれるそうだ。
これもケヴィンの知り合いという店主の計らいなのかも知れない。
一行が席につき、朝食がてらの軽食を頼み終えると、早速ケヴィンから宮殿でアンドレイらと話したアークシティについての話の続きが語られた。
「さて、宮殿の続きですが、そこでもお話した通りアークシティは外部の者が中に入る方法にはいくつか手順が必要です。その中でも正攻法なのは、内部から招待される他ありません」
「問題はそこだな。どうやって中の者達から招待されればいい?そもそもアンタやアンドレイはどうやって入った?」
早速ミアがアークシティ入りの最初の問題である、謂わば入国の方法について以前に訪れた事があるらしいケヴィンとアンドレイの、訪問方法について尋ねる。
「アンドレイ氏はその職業柄ですよ。彼も一流の音楽家ですから、アークシティ内にも彼の音楽の噂を聞いて、是非聴いてみたいという人は少なくありません。私も同じく職業柄です」
「職業柄っていうと、探偵として何かの事件の調査に?」
シンの問いに彼は頭を縦に振る。どうやらアークシティ内で機密情報を持ち出し、外へと逃げた者がいるらしい。その人物について、情報を扱っていた研究所に招待されたケヴィンは、犯行が行われた現場で証拠と痕跡を探しながら、犯人の動機などについて研究員達に話を聞いたのだという。
その一件に関しては、今も尚継続して請け負っているようで、他の事件の解決と共に各地で情報収集を行っているのだという。
「なら、アンタと一緒なら中に入れるんじゃないか?」
「それは難しいでしょうね。再調査として私一人が入るならまだしも、皆さんは入れてもらえないと思います」
「じゃぁ入り口まで運んでもらって、そっから忍び込めばいいんじゃねぇか?」
「忍び込むって・・・そんな事をしたらケヴィンさんにも迷惑を掛けてしまいます」
「お気遣い、ありがとうございますアカリさん。えぇ、彼女の言う通り不正に皆さんを招き入れて仕舞えば、私は犯罪者になってしまいますし、皆さんも指名手配になってしまいます」
「強硬手段の線は無し・・・か」
全くアークシティと接点のない一行は、最初の一歩の余りにも大きな障害に悩まされる。するとケヴィンは、危険である事には変わりないが、別の強行手段ととある噂について話し始めた。
「危険な方法には変わりありませんが、アークシティに強い恨みを持つ者や人攫いにあった者達が集まるという、目的の為には手段を選ばない無法者達のグループがあります。彼らは以前、アークシティへの突入を試みた事があるそうなのですが・・・」
ケヴィンがアークシティに行った際に、事件の聴取を行なっているとその無法者達の起こした別の事件についての話を聞いたという。
しかしアークシティの守りは余りにも強固であるが為に、侵入を果たせた者はおろか、外壁に殆ど損壊すら与えられずに撃退されたと内部の者達から聞いたらしい。
「シンさんの能力があれば、彼らを焚き付けて騒動を起こしている内に内部に忍び込む事も出来るかも知れません。ただ忍び込んだところで、アークシティ内部の警備は厳重です。危険である事には変わりありませんが、のっぴきならない事情があってアークシティを目指すのであれば、覚えておいて損は無いと思います」
「なるほど・・・。ところで、何でアークシティを恨む者達ってのがいるんだ?」
シンの問いに、ケヴィンを含め一行は全員口を噤んでしまう。アークシティの研究がどのようなものか。それをミア達は、シンのいない間の旅で痛いほど身に沁みて知っていた。
シンが現実世界へ帰っている間にミア達が立ち寄った場所。それが忘却の街オルレラ。
そこではアークシティの元研究員であり、実験の被検体となっていた子供達に先生と親しまれていた“オスカー・フォルクマン”が、アークシティの非人道的な実験を辞めさせようと、正に必死になって抗い、子供達を守っていた。
ツバキらの活躍により、その重積から解き放たれたオスカーは、望みを彼らに託し、子供達と共に天へと昇って行った。
そこで行われていたアークシティの非人道的な研究というのが、宇宙へ至るロケットの燃料として人間の子供を利用した、“生物燃料”などと言う悍ましいものを作り出していたのだ。
WoFの世界において、全ての生命の幼少期という時期は、この世界に当たり前のように存在する魔力の影響を受けやすい時期であり、個体によっては多くの魔力をその身に宿す事もある。
特に人間の子供が有力であり、成果として安定していることから実験に用いられていたようだ。生命の尊厳を無視して、命を有限な燃料として利用する許されざる研究。
その被害者の多くが、ケヴィンの言う無法者達のグループにも属しているのだろう。無論、それらだけが恨みの対象になっている訳ではなく、他にも多くの犠牲者や被害者が存在する事は間違いない。
「皆さん、お待たせしました。さぁ行きましょうか」
一行が店に着くと早速一人の店員が席へと案内してくれた。店内は地元の人達で賑わい、外のテラス席はカメラやパンフレットを持った観光客でいっぱいだった。
その中でも景観の都合上、植木の影になってしまっている席が空いていた。席に着くと店員が申し訳なさそうに椅子を引いてくれた。せめてものサービスにと、何かみんなで摘めるアルバの名物料理をご馳走してくれるそうだ。
これもケヴィンの知り合いという店主の計らいなのかも知れない。
一行が席につき、朝食がてらの軽食を頼み終えると、早速ケヴィンから宮殿でアンドレイらと話したアークシティについての話の続きが語られた。
「さて、宮殿の続きですが、そこでもお話した通りアークシティは外部の者が中に入る方法にはいくつか手順が必要です。その中でも正攻法なのは、内部から招待される他ありません」
「問題はそこだな。どうやって中の者達から招待されればいい?そもそもアンタやアンドレイはどうやって入った?」
早速ミアがアークシティ入りの最初の問題である、謂わば入国の方法について以前に訪れた事があるらしいケヴィンとアンドレイの、訪問方法について尋ねる。
「アンドレイ氏はその職業柄ですよ。彼も一流の音楽家ですから、アークシティ内にも彼の音楽の噂を聞いて、是非聴いてみたいという人は少なくありません。私も同じく職業柄です」
「職業柄っていうと、探偵として何かの事件の調査に?」
シンの問いに彼は頭を縦に振る。どうやらアークシティ内で機密情報を持ち出し、外へと逃げた者がいるらしい。その人物について、情報を扱っていた研究所に招待されたケヴィンは、犯行が行われた現場で証拠と痕跡を探しながら、犯人の動機などについて研究員達に話を聞いたのだという。
その一件に関しては、今も尚継続して請け負っているようで、他の事件の解決と共に各地で情報収集を行っているのだという。
「なら、アンタと一緒なら中に入れるんじゃないか?」
「それは難しいでしょうね。再調査として私一人が入るならまだしも、皆さんは入れてもらえないと思います」
「じゃぁ入り口まで運んでもらって、そっから忍び込めばいいんじゃねぇか?」
「忍び込むって・・・そんな事をしたらケヴィンさんにも迷惑を掛けてしまいます」
「お気遣い、ありがとうございますアカリさん。えぇ、彼女の言う通り不正に皆さんを招き入れて仕舞えば、私は犯罪者になってしまいますし、皆さんも指名手配になってしまいます」
「強硬手段の線は無し・・・か」
全くアークシティと接点のない一行は、最初の一歩の余りにも大きな障害に悩まされる。するとケヴィンは、危険である事には変わりないが、別の強行手段ととある噂について話し始めた。
「危険な方法には変わりありませんが、アークシティに強い恨みを持つ者や人攫いにあった者達が集まるという、目的の為には手段を選ばない無法者達のグループがあります。彼らは以前、アークシティへの突入を試みた事があるそうなのですが・・・」
ケヴィンがアークシティに行った際に、事件の聴取を行なっているとその無法者達の起こした別の事件についての話を聞いたという。
しかしアークシティの守りは余りにも強固であるが為に、侵入を果たせた者はおろか、外壁に殆ど損壊すら与えられずに撃退されたと内部の者達から聞いたらしい。
「シンさんの能力があれば、彼らを焚き付けて騒動を起こしている内に内部に忍び込む事も出来るかも知れません。ただ忍び込んだところで、アークシティ内部の警備は厳重です。危険である事には変わりありませんが、のっぴきならない事情があってアークシティを目指すのであれば、覚えておいて損は無いと思います」
「なるほど・・・。ところで、何でアークシティを恨む者達ってのがいるんだ?」
シンの問いに、ケヴィンを含め一行は全員口を噤んでしまう。アークシティの研究がどのようなものか。それをミア達は、シンのいない間の旅で痛いほど身に沁みて知っていた。
シンが現実世界へ帰っている間にミア達が立ち寄った場所。それが忘却の街オルレラ。
そこではアークシティの元研究員であり、実験の被検体となっていた子供達に先生と親しまれていた“オスカー・フォルクマン”が、アークシティの非人道的な実験を辞めさせようと、正に必死になって抗い、子供達を守っていた。
ツバキらの活躍により、その重積から解き放たれたオスカーは、望みを彼らに託し、子供達と共に天へと昇って行った。
そこで行われていたアークシティの非人道的な研究というのが、宇宙へ至るロケットの燃料として人間の子供を利用した、“生物燃料”などと言う悍ましいものを作り出していたのだ。
WoFの世界において、全ての生命の幼少期という時期は、この世界に当たり前のように存在する魔力の影響を受けやすい時期であり、個体によっては多くの魔力をその身に宿す事もある。
特に人間の子供が有力であり、成果として安定していることから実験に用いられていたようだ。生命の尊厳を無視して、命を有限な燃料として利用する許されざる研究。
その被害者の多くが、ケヴィンの言う無法者達のグループにも属しているのだろう。無論、それらだけが恨みの対象になっている訳ではなく、他にも多くの犠牲者や被害者が存在する事は間違いない。
0
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる