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第2章
秋の文化祭に向けて浮き足立っていった
しおりを挟む夏休みが終わって始業式を迎えると、学校は秋の文化祭に向けて浮き足立っていった。
このあいだ体育祭があったばっかりなのに、学校ってなんでこんなに行事が多いんだろう。勉強しろ勉強しろってうるさく言うんだから、もっと落ち着いて机に向かわせてくれればいいのに。
そう、僕は学級委員長のくせに学校行事になんて全然興味がなかったんだけど、涼乃のクラスの話を聞くうちに、文化祭がものすごく楽しみになっていった。
✳︎
「楽しみだなぁ。涼乃の演技」
文化祭の前日、僕たちは二人並んで帰宅した。
今日は準備のためにほとんどの部活が活動停止で、涼乃も下校時刻ギリギリまで教室で最後のリハーサルをしていたらしい。
「やめてよ、なんで山丘くんていつもそうやって私にプレッシャーかけるの? 剣道の大会の時もそうだったし」
そうそう「優勝するんでしょ?」って涼乃をあおったんだよな。それで本当に優勝しちゃうからすごいんだけど。
「今回は本当に楽しみにしてるだけだよ」
だって涼乃が演技をするなんて、しかもそれを見られるなんて、多分人生で最初で最後のチャンスだと思うんだ。
僕たちの学校の文化祭は、各クラスが教室内での展示か体育館でのステージ発表を選ぶことになっている。
涼乃のクラスはステージで演劇をするのだ。
「しかも私、魔女役よ? ラスボスだからね。配役に遠慮がなさすぎると思わない?」
不満をもらしながらも、涼乃の表情はやわらかい。
口ではこんなことを言ってるけど、役者になったおかげでクラスの人たちと話す機会ができたみたいで、体育祭のときのような悲壮感はどこにもなかった。
彼女の鞄でメロンパンがのんきにゆらゆら揺れている。ちゃんと涼乃を見守ってくれてありがとな。これからも頼むよ。
九月が終わろうとしてるのに、まだ風は夏の気分を残していた。陽が落ちるのが早くなった。季節のページは確実に次へ次へとめくられていく。
「山丘くんのクラスはいいよね、展示で。絶対そっちの方が気楽じゃん」
「そうだね、準備が終わっちゃえば何もすることないから。明日は涼乃の演技に集中して全力で楽しみます」
はいはい、と涼乃はこちらをチラリと見て笑う。
「私のことはそんなに気にしないでほしいけど。でもね山丘くん、うちのクラスの劇を見たらびっくりすると思うよ」
「え? なんで?」
それは本番のお楽しみ、と涼乃は楽しげにそっぽを向いてしまった。
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