オネエとヤクザ

ちんすこう

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第二章:酒とクスリと男と男

2−3

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 二人の間の険悪な空気を感じ取ってか否か、ニコニコと輝かんばかりの笑顔で訊ねてくる。
 便乗して、キャメロンも両手を擦り合わせて寄ってきた。

 「ああん気になる~! 『如月』なんて呼んじゃってねぇ! ママの本名なんてアタシたちも知らなかったのにぃ」
 「待って、師走さんの元相棒ってのがママってことはー……ママ、もしかしてヤ」

 モモが何かを察しかけた瞬間、伊吹と視線がかち合う。
 『真正直に答えていいものか?』という表情に見えたが、もちろん答えていいわけがない。
 きつく瞼を閉じてしっかり首を横に振ると、伊吹は首を掻きながらあー、と唸った。

 「同級生だ。高校時代の」

 それで気が逸れたのか、モモはパッと――妙な笑みを浮かべて、手を叩いた。

 「ほんとにぃ~? あ、じゃあその頃のママの彼ピ!?」

 「はあ!? 違ェに決まってんだろ!!」

 伊吹が吼えた瞬間キャメロンたちはピャッとすくむ。
 が、一種のジョークのようなもので、彼女たちはすぐカラカラと笑いながら他の客のもとへと戻っていった。
 
 「ったく調子の狂う……」

 ぼやいて、伊吹はぐびっとビールを呷る。
 周りに人が居なくなったのを見計らって、訊ねてきた。

 「そういや、こないだのオカマはどうなった?」

 先日、ひどい錯乱状態でここの階段から転落したキャストのことを思い出して、ミフユは苦い顔をした。

 「モリリンちゃんよ」

 「だー、そのモリリンとやらだ」

 「彼女は……」

 げっそりと痩せこけ、尋常じゃなく衰弱していた彼女は、【禁じられた果実】を所持していた。

 「……運良く、手足の骨折程度で済んでね。総合病院に入院してるわ」

 「そうか」

 「ただ」

 ふぅと息をついて、自分の分のビールを注ぐ。
 現れた金色の海を見下ろすが、口をつける気にはなれなかった。

 「それよりも、薬物依存のほうが深刻だそうで」
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