オネエとヤクザ

ちんすこう

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第二章:酒とクスリと男と男

2−21

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 「お客様。誠に申し訳ありませんでした」

 言うやいなや、ためらうことなく頭を深く下げる。
 それで泡を食ったのはミフユたちを厄介払いしたがっていたボーイだ。驚いた声を上げるが、「君は下がりなさい」と再びあしらわれる。
 ボーイがすごすごと引き下がる間にも下げた頭は上がらず、続けて謝罪が述べられる。

 「私の教育が足りないばかりに、お客様には大変ご不快な思いをさせてしまいました。
 今後は従業員の指導を徹底して参ります。何卒ご容赦ください。
 よろしければ、今すぐにお通ししますが」

 「え。あ、いや……」

 流暢な語り口に、ミフユは思わず素で言葉を失ってしまう。

 「おい。なに見惚れてんだ」

 伊吹にじろりと睨まれてつい謝る。

 「ご、ごめん」

 (この子、写真に映ってたホストだわ)

 水無月の後ろに小さく映り込んでいた人物だ。美形具合からして間違いない。

 「私は【CLUB EDEN】のオーナー、遥斗ハルトと申します。
 店の代表として、あなた方には深くお詫びを」

 「あ、あああ~! いいのよ、アタシたちもちょっと大人げなかったわ!」

 伊吹はテンパる相棒をやや冷たい目で見、まだ首を抑え込んでいたミフユの腕から逃れて、遥斗の前に立った。

 「あんがとな兄ちゃん。酒はたんまり入れてやるからさ」

 「ありがとうございます」

 彼の立つすぐ後ろに、輝かしい『NO.1 遥斗』の額縁入り写真が掲げてあった。
 そのナンバーワン直々の案内でミフユたちはボックス席に座る。
 すると、すぐにボトルが一本運ばれてきた。

 「アタシたちまだ何も頼んでないわよ?」

 「これは、私からの個人的な贈り物です。
 今夜の思い出が、どうか汚れたままにならないように」

 ミフユがまじまじと見つめていると、遥斗はくすりと笑ってミフユの手を取った。

 「それでは、素敵な一夜を」

 そのまま迷いなく唇を手の甲に押し当てて、ハリウッド級のウインクが向けられる。
 彼は一礼して元いた卓に戻っていったが、ミフユは手を出したまま惚けていた。

 「……アタシ、ここに通っちゃおうかな」

 「本来の目的を見失うなよ」

 「分かってるわよ」

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