オネエとヤクザ

ちんすこう

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第二章:酒とクスリと男と男

2−34

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 抱きとめた彼の体は、服越しにも分かるほど火照っていた。

 「気づかないであんな暴れて……ホンット馬鹿ね」

 「どうしたんすか!?」

 異常に気付いた狗山が駆けてくる。こちらはピンピンしていた。

 (仔犬ちゃんにはなんの異常もない。
 ……ってことは、薬を盛られたタイミングは、たぶん仔犬ちゃんたちが合流する前)

 ホストのトモキが、ちょっと体を弄っただけでくったりしていた様子を思い出す。あれはまるで、今の自分たちのようだ。

 「あの酒か……」

 ナンバーワンホストの遥斗が直々に差し入れてきたあのボトル。
 あれに何かが仕込まれていた?

 (あのイケメン君がグル?)

 荒い息をこぼしながら、ミフユは腕の中の男を見やる。

 「伊吹ちゃん……大丈夫?」

 「……じゃ、ねっ……」

 弱々しく首を振る伊吹を抱き直す。赤らんだ顔をミフユの胸に押しつけるようにして、呻いている。

 密着した胸から伝わってくる、伊吹の心臓の音。

 どくり、どくりと、二人分の鼓動が共鳴するようで。

 間近で見つめた伊吹の黒い目が、潤んでいるように見えた。

 「伊吹ちゃ…………」

 頬にそっと手で触れて、顔を寄せる。
 ドキドキとうるさい心臓の音をどうにか飼い慣らしながら、唇を触れ合わせようとしたところで――。

 
 どこかからサイレンの音が聞こえてきて、ハッと我に還った。


 (――ここから逃げなきゃ!!)


 「おい!!」

 「ヒッ!?」


 周りに集まってきていた鳳凰組の組員たちに、怒鳴りかける。
 腹から声が出てしまったので大変太い声になったが、今はそんなことに構っていられない。

 「車出して! 逃げるわよ!」

 「はっ、はい!」

 指示を出せない伊吹に変わって、ミフユが指揮を執った。
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