66 / 191
第三章:ボロアパートとワンピースと“アタシ”
3−7
しおりを挟む
伊吹と出逢った経緯や鳳凰組に入ることになった理由などは簡潔にまとめて、かいつまんで今回の事情を語った。
途中で他の客が入店することもあったため、彩極組、水無月、李といった特定の名を挙げるのは避けたが、現在ミフユがモリリンのために【禁じられた果実】を探っていることなどを説明した。
「……と、まあ、ざっくり言うとこんな感じね」
話を打ち切って、キャメロンたちを見渡す。
どんな目で見られるか正直怖かった。
けれど、思ったよりみんな冷静にミフユの話を受け止めている様子だ。
「えっと。
とりあえず、ママ、今はすっかり組との縁は切れてるのよね?」
パピ江が訊ねてきたので、「もちろん」と返す。
「八年前にとっくにね」
その証拠に、と静観していた伊吹のほうを見やる。
「アタシが『ミフユ』になったのはこの店に来てからだから、伊吹ちゃんはオネエのアタシのことを全く知らなかった。
だからここに『如月美冬』を探しに来たのよ」
「こいつは、俺にも言わずに勝手に組を抜けたんだ。それっきり何年も連絡がつかなかったんで、組長からは破門扱いにされてる」
伊吹が重ねて証言したことで、パピ江は納得した様子だった。
だが、重ねて質問される。
「どうして組を抜けたの?」
「別に、とんでもないことやらかして逃げたとかじゃないのよ? ……これは、アタシ個人の問題」
以前なら伊吹がここで食ってかかってきていただろうが、今は視線を逸らして煙草を咥えている。しらじらしい。
その横顔を見ていると、そういう話にはやたら察しのいいオネエたちが、『ああ~』という顔をした。
「おい、こっち見てんじゃねぇ。さっさと話をまとめろ」
不機嫌そうな伊吹に言われて、ミフユは改めてパピ江たちに視線を戻した。
「こういう事情なの。だから、夜のお店やお客さんからもし怪しい薬を渡されても、絶対に手を出さないでね。
それから……アタシがどんな奴か、分かってもらえたかしら」
目を伏せて、消え入るような声で呟いた。
「ずっと黙っててごめんね。なんで隠してたか、はね」
冗談でごまかしたくなるのを抑えて、素直な気持ちを伝えた。
「『元』なんて言ったってヤクザはヤクザだもん。
現に、いまだにクスリやら何やらが付き纏ってきて……きっと怖がられるって思って。
アタシは、アンタたちに怖がられるのが、怖かった」
途中で他の客が入店することもあったため、彩極組、水無月、李といった特定の名を挙げるのは避けたが、現在ミフユがモリリンのために【禁じられた果実】を探っていることなどを説明した。
「……と、まあ、ざっくり言うとこんな感じね」
話を打ち切って、キャメロンたちを見渡す。
どんな目で見られるか正直怖かった。
けれど、思ったよりみんな冷静にミフユの話を受け止めている様子だ。
「えっと。
とりあえず、ママ、今はすっかり組との縁は切れてるのよね?」
パピ江が訊ねてきたので、「もちろん」と返す。
「八年前にとっくにね」
その証拠に、と静観していた伊吹のほうを見やる。
「アタシが『ミフユ』になったのはこの店に来てからだから、伊吹ちゃんはオネエのアタシのことを全く知らなかった。
だからここに『如月美冬』を探しに来たのよ」
「こいつは、俺にも言わずに勝手に組を抜けたんだ。それっきり何年も連絡がつかなかったんで、組長からは破門扱いにされてる」
伊吹が重ねて証言したことで、パピ江は納得した様子だった。
だが、重ねて質問される。
「どうして組を抜けたの?」
「別に、とんでもないことやらかして逃げたとかじゃないのよ? ……これは、アタシ個人の問題」
以前なら伊吹がここで食ってかかってきていただろうが、今は視線を逸らして煙草を咥えている。しらじらしい。
その横顔を見ていると、そういう話にはやたら察しのいいオネエたちが、『ああ~』という顔をした。
「おい、こっち見てんじゃねぇ。さっさと話をまとめろ」
不機嫌そうな伊吹に言われて、ミフユは改めてパピ江たちに視線を戻した。
「こういう事情なの。だから、夜のお店やお客さんからもし怪しい薬を渡されても、絶対に手を出さないでね。
それから……アタシがどんな奴か、分かってもらえたかしら」
目を伏せて、消え入るような声で呟いた。
「ずっと黙っててごめんね。なんで隠してたか、はね」
冗談でごまかしたくなるのを抑えて、素直な気持ちを伝えた。
「『元』なんて言ったってヤクザはヤクザだもん。
現に、いまだにクスリやら何やらが付き纏ってきて……きっと怖がられるって思って。
アタシは、アンタたちに怖がられるのが、怖かった」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる