宰相家長男が地味系女子と恋に落ちていく5日間(➕アルファ)

相鵜 絵緒

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第2章 レカ

第3日目〜後半〜

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 レカは、午後の授業が終わると、一目散にヴィーの家へ向かった。

 今までみたいに不意打ちではなく、先に心の準備をしてからイナギに対面したい。それなら、きっと、レカが思っているように対応できるはずだから…。

 昨日、ヴィーから渡された合鍵を使って、そっと家に入る。
 今日のヴィーが何時に帰ってくるかはわからないが、いつもと同じなら、夕方になるはずだ。まだ2時間以上の時間がある。
 せっかく合鍵があるのだから、早くお風呂に入って、ヴィーに会わずに帰ろうとも思っている。

 だって、ここでイナギと会ったことをヴィーに話すのは嫌だ。
 イナギとの話がどんなものになるかわからないし、ヴィーを心配させたくないのだ。

(あー。でも、これからイナギが来るのかと思うと…)

 その先の感情を言葉にするのはやめておいた。
 誰かを待っている時の、ソワソワする気持ちの中に、なんとも言えない柔らかな感情が見え隠れする。

(…あの時のあの子と、1対1で話しをするのか…)

 それは、遠い昔に夢見ていた出来事で、ある意味これから叶うことになるのだ。

(いやいやいや…そんな優しい対面じゃ無さそうでしょ。)

 彼は『気になることを明らかにする』と言っていた。それがレカに対することなのか、ヴィーとのやりとりの中のことなのか、よくわからない。
 でも、変に期待することだけはやめておく。何かを期待して、裏切られるのは辛い。

 たとえどんなやりとりになってしまっても、仕方がない。と覚悟だけはしておくつもりだ。罵られたり、言い合いになるなどの、厳しい言葉のやりとりになってしまったとしても、心を痛めないように、あらかじめ防御しておくのだ。

(それなら、最初から怒りを露わにしておいた方が良いかな。)

 レカは心を完全防備してから、イナギが来るのを待つことにした。


※※※

 少ししてから、ヴィーの家のインターホンが鳴った。
 レカは跳び上がらんばかりにビクッとしたが、胸に手を当てて、深呼吸をする。

(落ち着いて…。そして、怒りを前面に…。)

 レカは無表情と怒りの間くらいの表情で、ドアを開ける。

 そこには、やっぱり普段学校で見ている通りの、キラキラしているイナギが立っていた。
 イナギは、出てきたのがヴィーではなく、レカであることに明らかにホッとしているようだった。

(やっぱり、私に用事があったんだ!私に関して、『明らかにしたいこと』って一体…。)

 レカは一気に戦闘モードに入る。

 イナギは、部屋に入った後、ドアを後ろ手に閉めると、レカに向き直った。

 それを見たレカは、威圧感を出す為に腕組みをし、精一杯怖い顔をしてイナギを見上げた。

「…ちょっと。どういうこと?」

 レカの言葉に、イナギが少し嬉しそうな顔をした。

(今の私のどこに笑顔になる要因が?)

 レカは少し戸惑うも、反撃の手を緩めるつもりはない。

「…すみません…。なんだかいろんなことが気になっちゃって…。」

 イナギは困ったように答えた。

「何が気になるの?」

 レカは、自分より大きいイナギに、負けてなるものかと、腕組みしたまま詰め寄る。

「…えっと…」

 イナギが答えようとするよりも先に、レカはどんどん話し出す。

「学校で、宰相家の長男に話しかけられるなんて、私が目立つようなこと辞めてよね!!」

(ヴィーに迷惑がかかったら、どうしてくれるのよ!)

 レカには、常に『ミツカ出身』という、出生の秘密がまとわりつく。目立ってしまったら、いつかそのことがバレてしまうのではないかと、必要以上に怯えて生きているのだ。

 レカは勢いのまま、イナギに一歩詰め寄ってから続ける。

「私はね、平穏で静かな学校生活を送る予定なのよ!」

 また一歩、前に出る。

「だいたいねぇ…」

 まだまだ続けようと思っていたところで、いつの間にかとても近い距離にいるイナギが言葉を発した。

「ぼ…僕からの質問に答えなければ、また…また今日みたいに学校で話しかけるからねっっっ!」

 ドアに背をくっつけて、できるだけレカから離れるような体勢をとっていたイナギは、精一杯、といった感じで、レカの言葉を封じてきた。

(…うっ……)

 そんな様子や口調が、意外にも『可愛いじゃない…』なんて思ってしまった。
 
(いやいやいや、気持ちを引き締めないと!)

 レカは、わざと自分の唇を噛んで、自分を鼓舞する。

(可愛いなんて、ほだされちゃいけない!)

 と、自らの失態を悔しく思う。

 そして、恥ずかしさから赤くなった顔で、キッとイナギを下から睨みつける。それから、あまりに近付きすぎていたことに恐れをなして、詰め寄った分の2歩、後ろに下がった。

「…わかったわよ…。」

 両手をぐっと太ももの横で握り締めながら、聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう言った。

 その声に対して、

「…質問して…良いの…?」

 恐る恐るイナギが尋ねる。
 すると、

「学校で聞かれるより、ここで聞かれた方がずっとずぅっとマシよ!」

 『イーっ!』と歯を剥き出しにして、レカは答える。
 それは、ユウサと喧嘩をするときに、もう言えることがなくなったレカが、悔し紛れにする動作だった。

 そんなレカに、呆れたのだろうか、特に何も言わずに、イナギはさっそく質問し始めた。

「えっと…君の名前は…?」

「レカ。」

「学年は?」

「3年。」

「えっ!?」

 レカが同学年だということに、イナギはとても驚いていた。

 イナギのその反応は、あらかじめ予想できていた。だって、今まで一度だって目が合ったことがないのだ。レカの存在を知らなかったのだろう。

 レカはふふんと笑うと、

「私が、どれだけ大人しく、地味に、目立たないように生きてきたか、わかったでしょ!」

 と得意げに言った。

「…うん。ごめん、周りに興味が無いにもほどがあるね…。」

 今度は予想に反して、シュンとして素直に謝罪するイナギに、レカの方が戸惑ってしまう。

(なんだか、私がいじめてるみたいじゃない…)

 たしかに、こちらだけが一方的に知っているのは悔しいけれど、それはレカ自身が周りに目立たないように生きてきた結果だ。イナギのせいでは全くない。

(ちょっとトゲトゲしい言い方だったかな…)

 レカは少しだけ反省すると、今度は優しい言い方を心がける。
 
「…こっちは、イナギ・サイファルって知ってるよ。」

 レカの言葉に、イナギはパッと顔を上げる。

「宰相家の長男だし、見た目もすごく目立つ、有名人だから。」

「じゃあ、今から僕はレカのことをたくさん知るよ!」

 その言葉に、今度はレカが驚かされる。

「…私のことを知ってどうするの?」

 イナギは、その質問に少しだけ答えに詰まったが、すぐに続ける。

「どうするとかじゃないけど、同学年の人のことを知らないのは寂しいし…。とにかく、知りたいことを知るのは僕の自由じゃないか!」

 そうして、レカが呆然としている間に、質問を続け出した。

「じゃあ、質問を続けるよ!」

 ムキになっているイナギの勢いに押されたレカは小さく頷く。

「家族構成は?」

「…お姉ちゃんと、両親と、おばあちゃん。」

「好きな色は?」

「…白…。」

「誕生…」

 どんどん聞かれる質問に、レカも勢いに押されて正直に答えていたが、突然ハッとする。

(誕生日の後、生まれた場所のことを聞かれたらどうしよう!)

 このままでは、出生地の秘密まで聞かれてしまうかもしれない。

 レカは今まで、誰からも興味を持たれたことがなかったため、こんなふうに、自分のことを聞かれたことなんて無かった。だから、どうして良いかわからない。

 もちろん、もし、今、何か不都合なことを聞かれたら、うまく誤魔化したり、嘘をついたりすれば良いはずなのだが…

 なんとなく、イナギに対してそういう対応をうまくできる気がしなかった。

(このままじゃあ、ミツカのことをうまく隠せない気がする…)

 レカはそこまで考えると、急いでイナギの勢いを削ぐ。

「ねぇ!」

 突然のレカの声にビックリしながらも、イナギは答える。

「な…なに?」

「答えたく無い質問はどうしたら良いの?」

 とイナギを下から窺うように問うた。

「私、できる限り嘘はつきたくないの。もともと嘘をつかないことを信条としてるところもあるんだけど、私のことを知ろうとしてくれてる宰相家長男は、悪い人じゃ無いと思うし…。」

 一旦言葉を切ってから、また腕組みをする。

「だからといって、レディには、言いたくないことだってあるのよ!それを答えないからって、学校でまた声をかけられるのは嫌だわ。」

 言い切ったレカは、フンっと鼻息を付け足した。

(なかなかうまく、自分の気持ちを伝えられたわ!)

 レカは満足して、イナギの返答を待つ。
 対するイナギは、レカの言葉に怒ることもなく、真剣に考えてくれたようだ。

「…そっかぁ。それもそうだよね。嘘を付かずに、真摯に答えてくれてるのに、答えなかったからって、レカの嫌がることをするのは、フェアじゃない。」

 そうして、自分でも頷きながら、真剣な顔で続ける。

「わかった。じゃあ、レカが嘘をつかないって約束してくれるなら、言いたくない質問は『言いたくない』って言ってくれたら良いよ。僕は、答えがなかったからって、学校で声をかけたりしない。」

 イナギのその答えに、レカはホッとして少し肩の力を抜いた。

(イナギに話しかけられることが嫌なわけじゃ無いんだけど…でも、やっぱり学校では話したく無いな。)

 レカは心の中でそう思う。
 今は対等に話しているけれど、学校では『宰相家の長男』と庶民の『口なしちゃん』である。明らかな身分差を感じながら話すのは嫌だ。
 それに…こうして2人だけで話す時間は、学校では作り出せない。

「うん。嘘を付かないって約束する。」
 
 レカは、イナギの目を見て答えた。

「体重を聞かれたら、どうしようかと思ったわ!」

 出身地だけでなく、体重だって言いたく無い。

 するとイナギは、少し寂しそうな顔をしながら、

「…レカは…ここに住んでいるの?」

 と聞いてきた。

「まさか!
 私はちゃんと宿舎に住んでいるのよ。今は、宿舎のシャワーが壊れてしまっていて、直るまでヴィーに貸してもらっているの。」

 レカは面倒臭そうに続ける。

「直すのに、1週間かかるって言ってたから、あともう2日かな。」

 指折り数えながら、レカは顔を上げる。

「そう言えば、宰相家長男は、どうしてここに来ているの?」

 自分が質問されるとは思っていなかったのだろう、イナギは少し考えた後に答えた。

「…商品祭のクラス発表について、今週末が生徒会への提出期限なんだ。その調べ物や打ち合わせが、ヴィンス先生の家であって…。」

「ふーん。そっかぁ。宰相家長男も大変だね。」

(思っていたより優しくて素直な人だから、きっとみんなに頼られているのね。)

 レカは、彼の周りにいる人達の気持ちがわかる気がした。

 そんなレカに対して、イナギは明らかに不満そうな顔をして聞いてくる。

「…ねぇ。その『宰相家長男』って呼び方、なに?」

 イナギは自分を呼ぶ呼び名が気に入らないらしい。

「えぇっ?だってあなた、宰相家の長男でしょ?」

 レカは、楽しくなって、ニンマリしながら言った。

(今まで、落ち着いた優等生って感じだったけど、こんな顔もするんだ。)

 そんなささいなことが嬉しい。

「それはそうだけど…レカは僕の名前は知ってるって言ってたじゃないか。」

 イナギが抗議すると

「知ってるけど…今ここで呼んで、つい学校でもそう呼んじゃったら、嫌だもの。」

 と、レカはわざと唇を尖らせながら答える。

「どうしてそんなに、学校での僕を嫌がるの。」

 はぁ、とため息を吐きながら、イナギが聞いた。

(…学校でのイナギが嫌いなわけじゃ無いけど…)

「…目立ちたくないの…。」

 目立って、ヴィーやミツカに迷惑がかかることは極力避けたい。何より、そんな後ろめたい自分には、他人からの優しさがもったいない。

(だからこのまま、誰にも知られないようにひっそりとしていたい…)

 レカの暗い声に、イナギも気をくじかれたのだろう。黙ってしまった。
 お喋りが苦手なレカにも、嫌な雰囲気になってしまったことは、わかった。

「さてと!」
 
 レカは大きな声を出して、雰囲気を変える。

「私はこれからお風呂に入ります。宰相家長男は、調べ物とやらをして下さい。でも、私が上がるまでには帰ってよね。」

 レカは軽くイナギを睨むフリをすると、お風呂場の方へ歩き出した。

(このくらいのお喋りで充分だよね。)

 思っていたよりも優しくて話しやすいイナギに、正直、嫌われたくは無いと思った。
 そのためには、もう離れた方が良い。

(気を取り直して、お風呂に入ろう。大好きなお風呂に入れば、気分も上がるはず。)

 気持ちを無理に切り替えて、イナギのことを忘れようとしたその時だった。
 
「レカ!」

 イナギに力強く呼ばれて、驚きながらも振り返る。
 すると、一度逡巡しゅんじゅんするも、イナギは覚悟を決めてから言葉を紡ぐ。

「明日も…僕の質問に答えてくれる?」

 それは、とても真剣な声に聞こえた。

(私と…もっと話したいってこと…?)

 ふざけた様子もなく、一心にレカを見つめる瞳に、レカは心が温かくなるのを感じた。

(それなら、私もイナギともっと話したい!)

 レカは素直な笑顔になると、

「学校で質問しないなら、ここで答えてあげる!」

 と答えた。

 これ以上ここにいると、顔がニヤけてしまう気がするので、急いでお風呂場に逃げ込む。
 
 お風呂場のドアを背にして、レカは胸の辺りを抑える。

(明日も…会える…)

 そのことが、とてもとても嬉しくって、レカは今日1番の可愛い笑顔で笑っていた。
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