やっぱりやらねば(続)

Anastasia

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アイラと廉

その4-03

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「――レン――」
「少し、足開いて」

 アイラはキッチンベンチの端に掴まりながら、廉に言われるままに、足を少し横に開いていた。

 熱い息が吹きかけられ、体が震え上がってしまう。

「……あぁ……ん――」

 廉の両腕がアイラの脚を包み込みながら、その口が激しくアイラの蜜を貪っている。

 そして、アイラの脚を包んでいる手が、ゆっくりと、アイラの熱くなっているその場に届き、アイラは溜まらずそこで嬌声を張り上げていた。

「――ああ……んっ――!」

 ビクッと、体が反応して、一気に沸きあがった快感が体中を走り抜けていた。

 少し前屈みに押され、キッチンの台に手をついているアイラの後ろから、立ち上がった廉が責めてくる。

「んっ……――あぁ……―――!」




「――ちょっと、朝もやったでしょうが。さっきシャワー浴びたばっかりなのよ」

 キッチンの台にまだ手をついて、火照った熱さを吐き出すように、荒い呼吸と一緒に艶かしい吐息が吐き出されていたが、アイラは強気にそう文句を口にした。

 アイラの後ろから、同じように前に手をついている廉の唇が動き、露な肩をゆっくりとこすっていった。

「そうだね。いい匂いだ」
「そういう問題じゃないのよ。この下着、もう洗濯行きじゃない。お揃いなのに」
「それ、いいね」
「当たり前じゃない」
「上も洗濯?」

 うーんと、アイラは考えてみる。

 アイラが返事をする前に、廉が腕を動かし、スッと、簡単にそのホックを外してしまった。
 それを抜き取って、前に放り投げ、廉の両腕が、真っ直ぐにアイラのさらけ出された柔らかな胸に届く。

「んっ……!――ちょっと、この体勢で、また次をやるんじゃないわよね」
「俺も多少の休憩は必要なんで」
「だったらその手はなによ」

「ただ触ってるだけ」
「触ってるだけ? ――なにが、触ってるだけよ」
「感じてるの?」

 アイラは嫌そうに眉間を寄せるだけだ。

「それは、いいかもね」
「ちょっと、離しなさいよ。ベーグル、まだ半分も食べてないのよ」
「食べれば?」

 この状態でも、まだ抜け抜けとそれを言う。

 アイラの瞳が細められ、後ろから抱き締められた状態のまま、顔をだけを後ろに回した。

「休憩必要なんじゃないのぉ? そんなに私が欲しいのは判るけど、始めて欲しいなら、いつでも始めてあげるわよ。昨日から、レンのペースにはめられてるモンねぇ。やっぱり、そのお返しくらいはしなくちゃダメでしょう?」

「アイラ――」

 上半身だけをひねったアイラが、手を伸ばして廉の顔を引き寄せ、そのままキスをし始めた。
 舌が執拗に廉の唇を襲ってくる。

 そして、その腰がなまめかしく動き出し、廉が咄嗟に体を引くように、アイラから離れていた。

「どうしたのよ。次のラウンドしないのぉ? 朝から抱きっぱなしなんだから、このまま抱き通しよねぇ」
「――その誘いは魅力的だけど、それはまた後で」

 廉がアイラの体から離れたので、アイラはそのまま、くるりと、向きを変え廉に向き直ると、両腕を上げて廉の頭の後ろに回し、そのまま、また唇を押し付けてきた。

「どうするのぉ、レン? やっぱり、立て続け――って死ぬ気かしらねぇ」
「そう。死ぬ気じゃなくて、死んでしまうのは間違いない。アイラだから」

 廉はアイラの両腕を離すように、ゆっくりと自分の首から外し出す。

「その下着」
「なによ」
「高い?」
「さあねぇ」
「洗濯行きだから、次のを買ってあげる――って言ったら?」

 アイラの片眉だけが上がり、アイラはそれを少し考慮しているようだった。

「じゃあ、なんにもつけないで、出歩くのかしらぁ。レンちゃんったら、ワイルドね。中をなんにもつけてないからって、想像しないでよねぇ」
「それも魅力的な話だけど――アイラのことだから、他の下着くらいたくさん持ってるんだろう? それをつけて、仕方がないから、買い物だろうな」

「一つだけなの?」
「俺は一つのペアしか汚してないけど」
「ええ? ケチねぇ。気前よくしなさいよ。どうせまた、レンが汚すんだから」

 ふーむと、廉も少々唸りながら考えて、
「――だったら、好きに派手なのを買えばいい」
「一緒にくる? スポンサーの好みも、仕方ないから、入れてあげてもいいのよん」
「いや。アイラの好みは、全く心配する必要はないので」

「私の下着、好きなの?」
「いいね。もしかして、ずっと昔からもそうだった?」
「さあねぇ」
「あの――制服の時もそうだった、とか?」
「どう思う?」

 不敵に薄い艶笑を浮かべ、廉をからかっているその瞳を見ていれば、一目瞭然である。

 まさか、あのお堅い制服の下で、これほど派手で、刺激的な下着をつけて歩き回るとは――さすがアイラと言うべきなのだろうが、廉にも言葉がでない。

「それで――あんなのに首突っ込んで、本当によくやるよな」
「いいじゃない。脱がされたらぶっ殺してただろうけど、でも、その状態で、ババ臭い下着なんてつけてたら、もう、一生の恥だわ」

 なんとも危ない発言だったが、断言するようなアイラの理論もあまりにアイラらしく、廉はなんとなく溜め息をこぼしていた。

「アイラって、絶対、他にはいないな」
「当たり前じゃない」
「ああ、その通りです」


* * *


 それから身支度を終えた二人が街に出かけていき、軽いランチを取った後、アイラは廉のクレジットカードを持って、颯爽とアイラのお気に入りのランジェリーショップへと直行した。

 アイラが買い物を済ませている間は、廉も本屋などで時間を潰し、アイラと待ち合わせて戻りがてら、
「あっ、これ見てないわ。そう言えば、昨日の映画だって、かなり久しぶりだったのよ」

 アメリカに来て依頼、多忙な毎日を送っていた為、映画に行くという気楽な時間がなかっただけに、かなりの映画を見逃してしまっていたアイラだった。

 それで、週末であるから――と、2本の映画を張り切ってレンタルして帰ったアイラだった。

「レンも見た?」
「もう片方のほう。そのチャッキー・ジァンの新作は見てない。でも、そういうの見るの?」
「見るわよ。アクションだから気楽だし、考えなくていいじゃない」

 へえ、とそんな相槌を返していた廉と共に、またアイラは自分のアパートに戻っていた。

「やっぱり、チャッキー・ジァンからよね。レンも見てないし」

 早速、アイラのラップトップを出してきて、居間のテーブルの上に置き、レンタルしてきたDVDをセットする。
 豪快な音楽から始まり、初っ端からすでにアクション突入である。

 アクションは左程ストーリにこだわらず、勢いや迫力を満喫して、後は流しておけばいい場面もあるし、気楽でいい。

 だが、廉の方は特別映画に興味もなく、退屈になってきたので、隣の座っているアイラにちょっと視線を向ける。

 少し赤毛かかった長い髪の毛は、座っていても、簡単に肘まで届きそうな長さだ。
 昔はストレートパーマをかけていたらしく、出会った当初や、その後大学時代は、アイラはずっとストレートの髪をしていた。

 暇になってきている廉は手を上げて、自分の指をアイラの髪の毛に絡めていく。
 スーッと、長い髪を指で摘まんだように梳いていった。

「レン、邪魔しないでよ」

 アイラは廉の方を見ずに、それだけを簡単に言いつける。

「邪魔してないよ。映画見てれば?」

 アイラの髪の毛の毛先に指が届いたので、今度はクルクルと自分の指に巻き付けてみる。


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