ノーストレスライフ!~魔王を倒した勇者、スライムに屈する!?~

write

文字の大きさ
10 / 21

教室

しおりを挟む
剣をレンタルし始めて10日ほどがたった。
多少は一日あたりのスライムを倒す数は増えた。
その成果もあってか、スライムが泣かない夜がこの10日間のうちに何度かあった。
だがそれでも農場にはスライムは依然、たくさん残っていた。

そして今朝もまたスライムの鳴き声で全然寝られなかったラーナは朝食を食べた後、いつもならそのまま蜃気楼箱に直行しているが、今日はモニター室に入り、映像を見た。

「全然剣の使い方がなってないじゃないの!」
映像をみてラーナは驚いた。
「元冒険者でも、もう魔物が出なくなって4年経ってますからね。」
ジイが椅子に座ってモニターを見るラーナの横に控えていた。
「蜃気楼箱で遊んでいる人はなかなか形にはなっているから来てほしいのに全然いないんじゃないの」

モニターに映る人はみなもたついているので、皆素人だとラーナは思った。

「蜃気楼箱でスライムは倒せますからね……」
「そ、そんなこと知ってるわよ!」
ジイのいうことは正論だった。それが余計に腹が立った。

「百歩、いいえ千歩譲ってそんなことがあったとして、こっちは蜃気楼箱とは違って、現実の金貨や銀貨がもらえるのよ? なぜよ、なぜ来ないのよ!」
「分かりません……ではお嬢さま、報奨金をあげるのはいかがでしょうか?」
「今の報奨金の額じゃだめって言いたいわけ?」
「いえ、決してそんなつもりでは……」
ジイは素早く首を横に振った。
「剣代もばかにならないんだからこれ以上は無理よ。絶対に!」
ラーナはテーブルを叩いた。
「ではラーナ様、いかが致しますか?」
「うーん」
ラーナは目を閉じ、腕を組みしばらく考え込んだ。
「そういえば、ジイ、あなたも昔冒険者だったって前言ってたよね」
ラーナは横で立っているジイの顔を見上げた。
「え?はい、そうですが」
ジイの顔が少し曇ったように見えた。だがラーナはそれを気にしなかった。
「じゃぁジイ、あなたが教えなさい!」
「教えるとは剣術をですか?」
「それしかないでしょ?」
「ですが……昔剣術を教えることがあったのですが不評でして……」
「大丈夫よ、スライムを倒すぐらいのスキルならジイでも教えられるわよ」
「いえ、そういうことでは……」
「何? まだ言いたいことがあるわけ?」
「……わ、分かりました」
ジイは頭を下げた。
「それで広告の件だけど、また作ってちょうだい。教室の宣伝をしなくちゃ」
「私の剣術教室をですか?」
「ええ、そうよ。ちなみに冒険時代、倒した魔物の中で一番高かったランクのものは何?」
魔物にはそれぞれランクがつけられている。
このランクは、魔物退治をギルドに頼む際、依頼主が出す報酬額の下限設定に利用される。
ランクは上から大きくS、A、B、C、D、と分かれており、
それぞれ何もマークなしと+があり、総合して10段階に分かれている。

「えっとですね、B+ですね。」

「えっそうなの? 結構すごいわね」
「ありがとうございます、ですが大昔のことです」
「でも大昔でも虚偽にはならないよね」
「えっと、どういうことでしょうか?」

ジイの質問にラーナは答えず、近くにあった、紙とペンをとり、何か書いた。

【B+級魔物を倒したことのある元冒険者による、剣術教室、開催!】

「うーん、ちょっとインパクトさが足りないけど、これでいっか」

「お嬢様、そんな、これは……」
「よろしくね、ジイ」

何も言わせまいとラーナはジイに向かってニコリと笑ってみせた。

「あまり期待はしないでくださいね、ラーナ様」

そうためらいがちにジイは言ったが、

次の日になると、とても気合いが入っているのか、冒険時代の鎧を着て、朝食を食べているラーナの前に現れた。

「ど、どうしたの、その格好?」
「いや、最初はとまどいもありましたが、この服を見るとちょっと懐かしく感じましてね」
「……そ、そう、じゃあよろしくね」
「はい!お嬢様!」

いつもの6割増しの声の大きさでジイは返事して執務室にすたすたと戻っていった。

「気合い入ってるのは良いけど大丈夫かしら……」

ラーナは執務室のあるほうを見て、コンスープを一口飲んだ。


教室初日は10人程の申し込みがあった。
昼食前と昼食後の二部に分かれており、第一部は子供だけだった。

ラーナはいつも通り蜃気楼箱で遊ぼうと思ったが、教室のことが少し気になり、モニター室に入った。

画面を見るとジイが子供達に剣をもたせ、そのまわりを回っていた。

「こうやって、こう! なっとらんぞ! それだと魔物にやられるぞ!」

相手は子供よ、何もそんな厳しく……

ラーナは首をかしげ、苦笑いを浮かべた。



ジイが一人の男の子に近づいた。

「お前は全然、だめだめじゃ! さぁ剣をこう持て!」

あかん、これはもうだめだ。もう泣きそうになってるよ。

「ちょっとジイ、良いかしら?」

ラーナはモニターの付近にあったマイクイヤホンに話しかけた。

「はい、なんでしょうか、お嬢様?」

そのマイクはジイの耳のイヤホンに繋がっていた。

「もっと優しくよ。」

「そのつもりでやっておりましたが……?」

「……不評の理由がよく分かったわ。ジイ、戻ってきてちょうだい」

「分かりました……」

「うん」

「では、最後に皆さんに手本見せてから終わります!」

「そう? じゃあ……ってちょっと待て!」

ラーナは声を大にして、言ったが、ジイは聞かなかった。


「さぁ皆、わしが見本を見せる! 小僧、その剣をよこせ!」

ジイはさっきの生徒から剣を奪い取り

太い竹に向かって思いっきり剣を振り降ろした。

そして、案の定……

ギコッ

「あああああああぎゅああああああ」

はぁこんな展開になると思ったのよ。
ラーナはモニターの置かれたテーブルに両肘をつき手を目にあてた。

ジイは病院に送られた。

で、結局私がやるのね……

ラーナは午後の部から剣の指導役を務めた。

もちろん、身バレ防止でマスクをかぶって務めた。

「どう、先生!」
「うん、ちょっと違うかなぁ~」

自己流で満足している生徒


「先生、持ち手はこうですよね?」
「えっと、それはね~」

話を聞かない生徒。



はぁ、ノーストレスのためにスライムパークを開いたのに、今、私とても

ストレスじゃないの?

ラーナは生徒達のいるほうに背中を向け、ため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。 古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。 これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。 その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。 隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。 彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。 一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。 痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...