夜明けの月★

天仕事屋(てしごとや)

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 少し照明を落とした部屋、テレビでドラマが流れている。病院の救命病棟を背景にしたドラマ。

 ソファにもたれかかり、女はチョコレートを摘みながらビールをごくりと飲む。
 仕事に行く前に買った雑誌をパラパラとめくって、何の感情もなく過ごす日々の繰り返し。

 初めから一人の生活なら何の問題もない。
 生活にも困らないし、不自由も無い。
 ただ、「帰ってくる人を待つ」。
 それだけの苛立ちが部屋を満たしていた。

 女は雑誌を閉じてラックにしまうと、立ち上がって部屋の電気を小さくすると、寝室へと入ってドアを閉めた。



『どうでもいいと思う事は簡単だ
 顔を合わせる度に
 ザラザラとした感情に
 いつしか違和感を覚える

 初めはこんな事思わなかったのに
 苦しさなんて感じなかった
 この感情を抑え込もうとする度に
 距離が大きくなってしまう

 戻そうとすればするほど壊れていく
 粘土細工のように
 毎日 心はボロボロと欠け落ちていく

 もう壊してしまおう
 
 また一から作り直したほうがいい』

 




1999年6月20日  9:45

 「俺だったらすぐ、番号交換して連絡取り合うけどね~。」

 相変わらず言うことがチャラい、古村陽介は俺の幼馴染である。
 剣士は呆れ顔で
 「お前は相変わらず軽いなぁ、もう少し真剣に相手でも探してみたらどうなんだよ。」

 「とかなんとか言って、昨日はあんな娘一人にさせてたら心配だから面倒みてやってくれ!とか、」
「いや、やっぱりオマエじゃ心配だとか何とか散々言って酔い潰れたくせにー!」

「あ、これタバコ、忘れてたよ。
 お前、禁煙とか言ってるけど酒飲む時だけ持ち歩くってどうなのよ。」
 陽介は俺の胸ポケットにタバコとライターを押し込むと続ける。

 「まぁ、俺はさ、一人の女と平凡に暮らすよりももっとこぅ、いつまでも色んなさぁ、、何て言うの?、、、その方が何時までも若々しく、、人生を楽しめる気がしてるからさぁー、、、、」

 
 (あぁ?俺が?昨日、そんな事言ったかな、、?)
 (やばい、、久々に飲み過ぎて全然覚えてねぇ。)

 剣士は頭をかきながら
 「とにかく、、その、、変なちょっかい、出すんじゃねーぞ!」

 と、真面目な顔を作って陽介に一喝する。


 「はぃ、はぃ。」
 陽介は気のない返事をすると、背もたれにもたれて目をつぶる。

 「もぉ着くぞー。」
 そう言うと剣士の運転するトラックは小道に入り、あの家へと向かうのだった。

 
 

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