たそがれ色の恋心

空居アオ

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東京公演編

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「トージぃ……」

 怒っているふりして泣きそうになっていた顔が、クシャッと歪んだ。
 トージの手が温かい。
 トージの想いが手のひらから伝わる。

 ……温かい。

 ケイは、自分がどれほど理不尽なことを言っているか、よくわかっている。トージに八つ当たりしているだけなのだということも、わかっていた。
 しかし感情の決壊は止められない。
 役者なのに、演じるどころか、取り繕うことすらできないで、思いのまま相手にぶつけるなんて。

 トージ。

 仲間で、大親友で、何よりも大好きな恋人。だから、ついつい甘えてしまう。
 こんなことではだめだとわかってはいるけれど、一方で、トージなら受け止めてくれるという確信もある。

 ――はたしてトージは本当に受け止めてくれた。
 それが嬉しくて、だけど嬉しければ嬉しいほど自分の不甲斐なさが情けなくて、ケイはたまらなくなって、トージのジャージの裾を掴んだ。

「トージ」

 ケイはもう一度恋人の名を呼ぶ。
 言ってほしい言葉と、言ってほしくない言葉が同じだなんて、そんなこと、矛盾している。
 それでもトージに何かを求めずにはいられない。
 自分の弱さが恨めしい。

 涙を見られたくなくて、ケイはトージを引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
 そして知っている言葉はただひとつとでも言わんばかりに、ささやくように、呟くように、トージ、と繰り返す。

 年下の恋人にがっちり抱き込まれたトージはというと、微かに苦笑をもらした。
 自分を呼ぶケイが愛しくて、自然とトージの表情は柔らかくなり、浮かぶ笑みに深い愛情が刻みこまれた。


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