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再び東京編
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しおりを挟む脈略もなくいきなりそんなことを尋ねたトージだったが、けれどケイは素直に頷く。
『焼くよ。あたりまえだろう』
本当にヤキモチを焼くのかと疑ってしまうほど、ケイの口調はあっさりとしていて、屈託がない。
『あー、でも最近ちょっとわかったんだよね。俺とトージって仲間で恋人なんだから、二人でいるとそのどっちかの空気しか出せないわけじゃん』
「ん? う、うん…」
いったいこの子は何を言い出すのか今度も見当がつかなくて、トージの頭にいくつものクエスチョン・マークがピュピュッと整列する。
『それ以外の空気を出せる相手になら、俺は誰にでもなんにでもヤキモチ焼くんだなってわかった』
エヘヘと、ケイは電話の向こう側でテレ笑い。
一方、電話のこちら側で笑うどころじゃないのがトージであった。
今ものすごくダイレクトで、豪速球的告白を聞いたような気がするのは気のせいか!? 気のせいか!!
――いや!
全然、まったく、気のせいじゃないよなッ?
ああーもう!
ホントにああーもうだよ!
何なんだよ、この子は?
ひょっとしてコイツと付き合い続けると俺は“愛の海”で溺死するんじゃないのか?
てか“愛の海”ってなんだよ、俺!?
気持ち悪いぞ、バカヤロー!!
『そういうトージはどうなの?』
すべてのわだかまりが解けた今でも佐野孝矢にヤキモチを焼くのかと、ベッドで身悶えするトージへケイが尋ねる。
自分自身が何を言ってしまったのか、まったくもって自覚のない口ぶりだった。
「……」
『トージ?』
「……」
『おーい』
「……」
『もしもーし?』
「……ごめん。ちょっと意識がどっかに飛んでた」
『やめろよな。死んでんのかと思ったじゃん』
違う意味で完全に撃沈させられてました――とは、男の沽券にかかわるため黙っているのが賢明だろう。
『だから、どうなのさ』
「…そうだな」
トージは深呼吸して、心を落ち着かせた。
「まったくないかって言ったら、そうでもないだろうな」
『へえー!』
「…なんか嬉しそう?」
『わかる?』
「こら。そこは普通嫌がるもんだろう。てかフリでいいから嫌がれ」
『わがままだなぁ、トージ。自分から話ふっといてさ。普通って言うなら、そもそもヤキモチ焼くかって聞かないよ、フ・ツ・ウ』
わざとらしく最後の「普通」に力を込めてられても、逆にトージの心音を高めるだけだった。
今のトージはたとえケイから罵倒されたとしても、きっと気持ちが高ぶるに違いない。
それほどさっきの豪速球にすさまじい破壊力があったというわけだ。
『――で?』
「こだわるねえ、平山さん」
『当然っしょ。ほら、とっとと白状しろ』
「って言われてもな…。正直、よくわからない」
『ええー』
ケイは明らかに不満そうだった。
もしかすと口を尖らせたり、頬を膨らませたりしているかもしれない。
「何べんも言うけど、おまえ反応間違ってる」
ともすれば深刻になりがちな話題なのに、ちっともそういうふうにならない今の自分たちの関係が心地よすぎて悪酔いしそう。
電話に隔たれていても、二人ともそれは感じていた。
こうした言葉遊びともいえる他愛無いやり取りを繰り返す幸せを、世界中に知らしめたい。この幸せの中に浸かって、沈んで、溶けたい。
声にならない感情が空間を越え絡み合い、融合する。
「真面目な話…気にしないってわけじゃないんだよな。ぶっちゃけそれは無理。ただ結局、その都度おまえを好きなんだって確かめるだけだろう」
そこでトージは自分の気持ちを確認するようにひとつ頷いて、
「だから、もういいんだ」
と言った。
以前はそれじゃ納得できなかった。
今はそれでいいと思えるようになった。
気持ちの変化はすなわち二人の関係が確実に前進していることを示している。
これはもはや自分たちには先があるという確かな根拠を手に入れたのと同じだ。
そう、はっきりと、わかるようになった。
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