婚約破棄されたと思ったら伯爵夫人になっていました。

SUZU

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住む場所

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コハクと出会ってから4年間何度もこの森には通って来た。
最初はみんな警戒心があり、遠巻きに見ているばかりだったけど何度か通っているうちに仲良くなり今では遊びに来ると会いに来てくれるようにまでなった。

義母が万が一にでも暴力のことがバレてしまったら大変だと周りには体が弱く病気がちだと言っていたためなかなか人前に出ることもなく、友達が出来なかったエミリアにとってこの森の動物達は唯一の友達だった。

たまに会う父にも気付いてもらえず、ただただ辛い日々だったがそんな中でも彼等の存在はエミリアにとっての癒しだ。

だからこそ行き場のなくなってしまったエミリアは唯一自分を受け入れてくれる場所であるこの森に足を運んだのだ。

だがいつまでもここに居るわけには行かない。
暗くなる前に何処か寝れる場所を探さなければならないが、エミリアは金銭を持っていなかった。
金銭が無ければ宿屋にも泊まれない、その事実に躓いた。

幾らか金銭を渡してくれれば、数日はしのげたものの無一文では何も出来ない。

考えているとコハクを撫でる手が止まっていたようで鼻で手を押して催促してくる。

それに謝って手を再び動かす。

「私、もうじき行かなきゃ行けないわ。今日雨風をしのげる所を探さないと。」

動物達に言葉が通じるはずもないが、つい話しかけてしまう。
動物達はまるで言葉を理解しているかのようにエミリアの言葉に反応して、心なしか心配そうな目をしているようにも思える。

彼等はまるで言葉が通じているようにも見えるので、エミリアもつい話しかけてしまうのだ。

「結婚の約束をしていた方に婚約破棄されてしまったのよ。あまり会うことはなかったけれど、穏やかな表情をしている方だったのだけど今日は別人のようだったわ。それに家に帰ることも出来なくなってしまった、あのお屋敷に帰っても痛い思いをするだけだから未練もあまり無いけれど。」

「それでもお父様のことは心配なの。お義母さまとエマも流石にお父様には何かするとは思えないけど、幸せに暮らして下されば良いわ。」

そう言った後に「色々なものを失ったのに、清々しい気分っておかしいわね。」と言って笑みがこぼれた。

コハクはそんなエミリアを励ますように頬を舐める。

それに礼を言うと立ち上がり、服についた土や草を手で払う。

仕草で帰ってしまうと分かったのかコハクが、破れない程度の力でドレスの裾をクイッと引っ張って座らせようとする。

「ごめんなさい、日が暮れる前に行かないと。もっとコハク達と一緒にいたいのは山々なんだけど。」

申し訳なさそうに謝りながら、宥めるようにコハクの頭を撫でると渋々と言った感じでドレスから口を離す。

「分かってくれてありがとう。」

そう言って歩き出そうとするエミリアの前に引き止めるためかコハクが立つ。

そうしてエミリアが進もうとしていた方向と逆、すなわち今までいた場所は森に入ってまだ浅い場所だったがコハクは森の深部に向かって進もうとしていたのだ。

「どうしたの?あんまり奥へ進むと危ないわ。」

コハクが何をしたいのか全然伝わってこない。

困惑しているのが伝わったのか動物達のなかから一羽のオウムが出てきた。

「スムバショ、アル。ツイテコイ、イッテル。エミリアイッショ。」

こんな場所に住める場所なんてあるはずがないのに、動物達と一緒に暮らせるのなら信じてみたい気持ちもある。

「コッチ、コッチ。ウエノレ、オレノウエノレ。」

オウムはそう言いコハクの頭に乗って上に乗るように指示してくる。

コハクも乗りやすいように屈んでくれているので、ドレスを着ていても乗ることが出来た。

エミリアが乗るとコハクは立ち上がりゆっくりと歩き出す。

初めて乗るエミリアを気遣ってだろう、のんびりとした足取りで恐怖を感じることなく進むことが出来た。

集まっていた他の動物達はエミリア達について来るものや住処に戻るものなどそれぞれ別れて行った。

コハクに乗って5分、エミリアの足で歩いていたら先程の所から10分はかかるだろう場所にそれはあった。

それは貴族たちのお屋敷ほどの大きさはないが、一般的な一軒家程はあるログハウスだ。

「まあ、立派ね、誰か住んでらっしゃるのかしら?」

そう言うエミリアはコハクの上から降りる。

「イナイ、ズットイナイ。オレラツカエナイカラエミリアツカエッテイッテル。」

コハクの上からオウムが声をかけてくる。

「コレデエミリアズットイッショ。モリノナカマ。」

続けてそう言ったオウムと乗せてくれたコハクに礼を言う。

「誰もいないっていつから使われてないのかしら。」

一先ず中を見るためにログハウスに足を踏み入れる。
後ろからコハクとその上に乗ったオウムがついて来た。
他のついて来た動物達は流石に入れず外で待っているようだ。

中は誰もいなかった割に埃もあまり溜まっていなく綺麗でいつでも人が住めそうだ。

誰の所有物かわからないが、今のエミリアにはお金も無く今日寝るところもない。
そのため何とか自分で家を借りれるようになるまで、このログハウスを使わせて頂くことにした。

何より動物たちといつでも会えると言うのが魅力的だった。

「見つけてくれてありがとう、部屋も綺麗だし必要なものも揃ってて今日から住めそうよ。安定するまでこのログハウスを使わせて頂くことにするわ。」

そうコハク達に言うと、コハクは尻尾をブンブンと振って嬉しそうだ。

オウムも「ヤッタ、コレデイツデモイッショ。トモダチイッショウレシイ。」と喜んでくれた。

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